おもちゃ映画ミュージアム
おもちゃ映画ミュージアム
Toy Film Museum

2019.03.13column

相次いで、スライド・フィルムと玩具フィルムを寄贈して頂きました!

昨年末、ツイッターで「実家の物置から、このようなものが出て来ました」とおもちゃ映画フィルムの写真を掲載された人がおられました。その呟きを、知り合いのスチームパンカー、manoさんが気付いてくださり、「京都におもちゃ映画ミュージアムがありますから、そちらに相談されたら良いと思います」と助言して下さいました。それに気付いた私も、「劣化して見られなくなる前にご相談いただけたら」と返しました。それからもう2か月半ほど経ち、いつも頭の隅っこに「あのフィルムどうなったかなぁ?」というのがありました。

3月6日に1通の問い合わせメールが届きました。なんと差出人は、件の呟き主。

…先だって、実家の物置にて、ぼろぼろの玩具フィルムを発見しました。どういったものなのかと昨年末にTwitterでそのことを呟いたところ、おもちゃ映画ミュージアムをご紹介いただきました。何しろボロボロですし、価値のあるものなのかはわかりませんが、捨てるのも忍びなく、もし受け入れていただけるのであれば貴施設に寄贈させていただきたく思っておりますが、如何でしょうか?…

そして3月9日、そのフィルムを持って来て下さいました。

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兵庫県内にお住いの佐原正規(まさき)さんと奥様の友香(ゆうか)さん、長女の涼香(すずか)ちゃん、長男の知喜(ともき)君です。

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全部で9本ありましたが、紙箱に入っているものは状態が良かったのですが、金属缶に入っているものはご覧の通り。大切に鉄缶に入れておられたものに限って劣化し、密封されているため酸が分解して鉄缶を錆びさせます。もう1本も劣化が進行していましたが、幸いにも当館が所蔵している『太郎さんの汽車』と同じものでした。9本の内訳は次の通り。

①『ミッキーの奇術師』(50尺)②『ポパイの大奮戦』(100尺)③『ハリキリポパイ』(50尺)④『脱線自動車』(50尺)⑤『バディの自動車競走』(50尺)⑥『ダン吉島のオリンピック大会』(50尺)⑦『忍術火の玉小僧江戸』(100尺)⑧『太郎さんの汽車』(30尺、剥離)⑨劣化のため不詳。

お父様の正規さまとお話をしている間中、涼香ちゃんは、2枚の紙でアニメーションを作る遊び「マジックロール」に夢中。丁度7日夜朝日放送テレビ『ビーバップ!ハイヒール』の特集「関西マニアック博物館ベスト7」で紹介されたばかりということもあって、番組をご覧になった女性4人組さんがご来館。「せっかくの機会だから一緒に観ましょう」とお誘いして、寄贈いただいたばかりのフィルムをおもちゃ映写機でご覧いただきました。

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涼香ちゃんの楽しそうな表情をご覧ください。お母様の友香さまがスマホで動画撮影。状態が良い7本の映像をカメラにおさめることができました。偶然お越しいただいた4人様も番組で連れ合いが話していた「貴重な映像を残す活動」の一端をご覧いただくことができて何よりでした。手回しの映写機での体験もして貰って、絵を描くのが得意な正規さまは、早速「アニメ・フィルム(100コマ)」のフィルムを購入して涼香ちゃんとアニメーション作りに挑戦するするとおっしゃっていました。次回ご持参くださって、作品を見せていただくのが楽しみです。メールに「ぼろぼろ」と書かれていたので、どんなに凄い状態かと想像していたのですが、7作品を保存することが出来て本当に良かったです‼

さて、2月22日にも、京都市内在住の守川伸一さまから、スライドフィルム10作品とライオンの幻燈機1台を寄贈頂きました。

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 ①泣いた赤鬼②ガリバー旅行記③キングコング④シンドバッドの冒険⑤こうのとりになった王さま⑥弁慶と牛若丸⑦夢太郎物語⑧おかしの工場⑨雪山⑩三びきのこぶた。

私が大好きな『泣いた赤鬼』はテキスト付きです。

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DSC08757⑧⑨は実写。

DSC08751その他はアニメ。中でも凄いのは⑩の『三ひきのこぶた』です。

コニカラーシステムの原作:グリム、絵:長尾  実の『三びきのこぶた』。シアン、マゼンタ、イエローの三色フィルムです。

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2月10日「北山清太郎」トークイベントで、字体についても取り上げたばかりでもあり、つい目がそちらに向かいます。

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「画:長尾実」とあり、新美ぬゑさんに問い合わせたところ、著名な長尾みのるさんではないかと教えて貰いました。長尾実(1929年6月4日―2016年10月6日)は本名で、大変興味深い方です。「日本初」がいくつも付く経験をされていますが、日本初のイラストレーターを名乗った方でもあります。面白いと思ったことは何でも挑戦されるようで、「教育玩具の仕事もした」とおっしゃっていますので、この三色フィルムも仕事された作品の一つなのではないかと思います。とても可愛らしい絵ですね。

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 J.C.マクスウェルは「全て自然界にある色彩は、赤、緑、青紫の三原色が種々の割合で混合すると、全て表現できる」という三原色説を唱えました。このコニカラーフィルムは、シアン(青紫)、マゼンタ(赤紫)、イエロー(黄)に分解して、それを重ねることによってカラーの画像を形成して楽しむスライド・フィルムです。1950年代のものなのかもしれません。

丁度、5月に「覗いて、写して観るモノたち展」をしますので、この幻燈での上映は難しいかもしれませんが、デジタル化して披露できたらと思っています。上掲2家族からだけでなく、このように寄贈いただいたフィルムは、当館内は勿論のこと、様々な催しでなるべく広く公開したいと思っています。 先ずは、この珍しいRGB三色フィルムの拡大写真をミュージアムに掲示してご覧いただこうと思っています。

まだまだ日本のお宅のどこかにこうした貴重なフィルムが眠っていることを、これらの事例は証明しています。10日の「天宮遥ピアノシアターin京都」には、香川県高松市からお越しのお客さまもおられました。この男性にも、どこかで蔵を壊すような話を耳にされたり、「古いフィルムがあるけどどうしたら良いか」という相談を受けることがあったらぜひ「捨てないで‼なんとか映像を見られる方法があるから」と伝えて欲しいとお願いしました。

それというのも、2015年秋にある学芸員さんが来館の折り、「大阪から四国に赴任して以来、おもちゃ映写機を見たことがない」と言われ、二人で「おもちゃ映画を見る文化が海を渡って四国には伝わらなかったのかしら?」と話していたことがありました。それ以来、「果たして四国におもちゃ映写機とフィルムはないのか?」と頭にあったのですが、2月8日に1通の問い合わせメールが届きました。差出人は学校に寄贈された民具を調べているという愛媛県今治市在住の方でした。メールには、下掲写真が添付されていました。

2019年2月8日愛媛県今治市の堀内正晶氏から質問メール添付写真1051

これが何か、手掛かりが欲しいという内容でした。

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その返事に添付したのが上掲写真です。お送りいただいた玩具映写機は前のレンズやリールなどの部品が欠けていますが、紛れもなく国産玩具映写機「朝日活動写真機COSUTA」です。「やはり、四国でも玩具映写機で映像を楽しむ文化があったのだ」とわかった瞬間でした。でも今のところ四国での玩具映写機について私共が把握したのは、この1台だけ。他にもこのような映写機やフィルムがないか気に掛けて欲しいと夕べの男性に託したのです。

皆さまのご自宅やお知り合いのお宅にも眠っていませんか?

 

 

 

 

 

 

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