2019.04.09column
依田義賢生誕110年記念イベント「依田義賢 人とシナリオ」について
依田義賢先生と初めてお会いしたのは1970年。数年前から学園紛争や安保闘争で混沌とした時期に、大学は美術大学から京都市立芸術大学に名称変更されました。それを機に、週1度の研究ゼミの公募が認められ、すぐに「映画」ゼミを提案しました。名称は「映像ゼミ」となりましたが、写真家のアーネスト・サトウ先生、CMの森居亀先生、ビジュアル・デザインの平田自一先生。そして映画界から依田先生が迎えられ、直接指導を受けることになりました。
それは大阪万博が開催された年のことでもありました。「映像の時代」と呼ばれ、映画・映像の変革期を迎えていました。翌71年の大映倒産が象徴するように、映画は低迷期を迎え、やくざ映画やロマンポルノなどカルト的な題材の映画が増えていました。時代劇はテレビの世界へ。映画の仕事は極端に少なくなりましたが、依田先生は、テレビ映画や文化記録映画、演劇の仕事まで幅広く、人材の育成にも尽力されることになりました。同年大阪芸術大学映像計画学科(現・映像学科)が創設され、初代学科長に迎えられました。それにとどまらず、日本映像学会創設に奔走され、日中友好協会副会長として国交のなかった時期から中国との交流に尽力されました。また京都南ロータリークラブのメンバーとしての活動もありました。
執筆活動も『京のおんな』(71)『祇園まちヽ一噺』(74)『むみょうのすみか』(74)などが続き、74年には映画『悪名・縄張荒らし』(勝新太郎プロ)と河原崎長十郎劇団での『天平の甍』が、77年には『阿倍仲麻呂 望郷詩』の脚本を執筆されました。記録映画では『京舞・四世井上八千代』(78)などがあげられます。『京舞』は、監督が柳川武夫さん(美術映画製作協会・プロデューサー)、撮影が森田富士郎先生で、私はその助手につきました。祇園甲部の座敷左右に雪洞を置き、高齢だった四世井上八千代さんの京舞を正面から撮影し、厳しい練習風景を間近で見ることが出来ました。
シナリオ作家協会刊行の『依田義賢人とシナリオ』には、映画脚本リストとその他の著作が網羅されていますが、残念ながら記載されていない仕事もあります。NHKの大河ドラマ『紀ノ川』(演出:前田達郎先生、64~65)は24回シリーズなのですが、テレビ作品なので、映画脚本リストには入っていません。また、京都府教育委員会の『近世文化』『平安文化』『東山文化』『京都の庭園』『京都の障壁画』(69)の5作品、そして、それに続く70年からは京都市文化観光局に提案して、京都市文化功労者の記録映像『菊寿の会』の脚本・演出も手掛けられました。『菊寿の会』は26作品もの仕事がありますが、これらは依田先生が顧問をされていた各務プロダクション(現・カガミプロ)の制作で、大学での初期の映像制作も、各務プロによって現像や録音などを協力していただいた経緯もあります。
今回の記念イベントで、京都府教育委員会制作で唯一残存している『京都の障壁画』を上映するに際し、カガミプロ社長布施利洋様にそれらの原版調査をお願いしたところ、『菊寿の会』の映像(1巻欠落)が現存していることが分かりました。布施様のご尽力により、14日はその中から依田先生が自らを映された『菊寿の会』の映像を上映することが可能になりました。京都市との交渉など、布施社長様にはこの場をお借りして、厚く御礼申し上げます。
『菊寿の会』の映像は、京都市文化功労者の皆様方の生き方や創作姿勢について記録された貴重なものであり、今後も保存に値するものとして、以下にその内容を列記しておきます。
文化功労者記録保存事業 『菊寿の会』 企画:京都市文化観光局
脚本・演出:依田義賢/構成:各務真弌
撮影:各務尚和/製作:各務プロダクション
VKB 1-1 京都の芸術家たち 48分
金島桂華 日本画 昭和44年
山口華楊 日本画 昭和46年
池田遥邨 日本画 昭和48年
三輪晁勢(信郎)日本画 昭和50年
猪原大華(寿) 日本画 昭和50年
浜田 観(仙太郎) 日本画 昭和50年
梶原緋佐子(久)日本画 昭和51年
小松 均(匀) 日本画 昭和51年
VKB 1-2 第1部1 53分
茂山千作三世 能楽 昭和46年
楳茂都陸平 邦楽 昭和45年
VKB 1-3 第1部2 37分
萩原正吟 邦楽 昭和44年
杉浦友雪 能楽 昭和44年
井上八千代四世 邦舞 昭和44年
VKB 1-4 第2部 37分
杉市太郎 能楽 昭和47年
千嘉代子 茶道 昭和43年
伊藤大輔 映画 昭和47年
片岡仁左衛門 歌舞伎 昭和47年
VKB 1-5 第3部 28分
金島桂華 日本画 昭和44年
楠部彌弌 陶芸 昭和49年
深見重助 唐組 昭和46年
皆川月華 染色 昭和47年
池田遥邨 日本画 昭和48年
川端弥之助 洋画 昭和48年
VKB 1-6 第4部 32分
鈴華野風呂 俳句 昭和43年
清水六兵衛六代目 陶芸 昭和45年
喜多川平朗 有職織物 昭和45年
松田尚之 彫刻 昭和46年
山口華楊 日本画 昭和46年
日比野五鳳 書 昭和48年
VKB 1-7 第5部 32分
眞下五一 文学 昭和43年
番浦省吾 漆芸 昭和50年
中村鴈治郎二世 歌舞伎 昭和48年
三輪晁勢(信郎) 日本画 昭和50年
VKB 1-8 第6部 30分
山田新一 洋画 昭和51年
猪原大華 日本画 昭和50年
浜田 観 日本画 昭和50年
梶原緋佐子 日本画 昭和51年
小牧源太郎 洋画 昭和52年
VKB 1-9 第7部 30分
松久朋琳 仏像彫刻 昭和53年
浅見隆三 陶芸 昭和52年
上村けい 音楽 昭和50年
佐野猛夫 染色 昭和53年
小松 均 日本画 昭和51年
VKB 1-10 第8部 30分
岸本景春 刺繍 昭和49年
森野嘉光 陶芸 昭和47年
広田多津 日本画 昭和53年
秋野不矩 日本画 昭和53年
山本倉丘 日本画 昭和53年
VKB 1-11 第9部 29分
桑原専渓十三世 華道 昭和54年
森田子龍 書 昭和55年
岡本庄三 人形彫刻 昭和54年
徳力冨吉郎 版画 昭和55年
宇野三吾 陶芸 昭和55年
VKB 1-12 第10部 31分
吉川観方 風俗研究 昭和43年
西山英雄 日本画 昭和49年
依田義賢 脚本 昭和46年
勝田 哲 日本画 昭和55年
上村松篁 日本画 昭和47年
VKB 1-13 第11部 24分
中野越南 書 昭和54年
竹中三郎 洋画 昭和56年
宮下善寿 陶芸 昭和56年
加藤宗厳 金工 昭和56年
VKB 1-14 第12部 28分
岸田竹史 染織 昭和57年
安田 謙 洋画 昭和57年
片岡千恵蔵 映画俳優 昭和52年
宮川一夫 映画撮影 昭和57年
浅野竹二 版画 昭和56年
VKB 1-15 第13部 24分
井口海仙 茶道 昭和52年
山鹿清華 染織 昭和43年
宇田荻邨 日本画 昭和45年
近藤悠三 陶芸 昭和48年
大野俶嵩 日本画 昭和58年
VKB 1-16 第14部 17分
平石晃祥 漆芸 昭和57年
新開寛山 陶芸 昭和58年
源 豊宗 日本美術史 昭和59年
VKB 1-17 第15部 35分
茂山千五郎 能楽 昭和58年
VKB 1-18 第16部 27分
金剛 巌二世 能楽 昭和59年
VKB 1-19 第17部 23分
岡次郎右衛門十七世 能楽 昭和61年
VKB 1-20 第18部 17分
吉村雄輝 邦舞 昭和60年
VKB 1-21 第19部 24分
岩淵龍太郎 洋楽 平成3年
VKB 1-22 第20部 12分
三浦景生 染色 昭和60年
VKB 1-23 第21部 30分
廣田陛一 能楽 平成5年
VKB 1-24 第22部 29分
片山九郎右衛門九世 能楽 平成8年
VKB 1-25 第23部 17分
楳茂都梅衣 邦舞 平成9年
VKB 1-26 第24部 53分
常盤津一巴太夫 邦楽 平成11年
VKB 1-27 第25部
欠番
VKB 1-28 第26部 26分
土と語らい遊ぶ 陶芸家西川實の世界
なお、DVDが京都市芸術センター図書館に所蔵されています。