おもちゃ映画ミュージアム
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Toy Film Museum

2019.04.21column

「ストップモーション アニミズム展 in KYOTO」の後半振り返り~トークイベント

4月7日に無事終了した「ストップモーション アニミズム展 in KYOTO」から2週間が経ちました。早いものです。連日近在はもとより、仙台や新潟など遠方からもたくさんのお客さまにご覧いただくことができ、大変嬉しい日々を過ごすことができました。改めて関係者の皆さま、ご来館いただいた皆さまに心から御礼を申し上げます。DSC09283 (3)

展覧会後半で印象に残ったお客さまから、少しだけご紹介を。4月6日にお越しいただいたこの3人は、この展覧会幹事の一人、坂上 直さんの京都造形大時代のお友達。プログラムBで上映した彼の作品『Rollinng』でダンスを踊る倉田 翠さん(右)、同作品を撮影した平澤直幸さん(中央)、同作品の音楽を担当した一見正隆さん(左)。

DSC09304 (2)一見さんはプログラムAで上映した坂上さんの『その家の名前』で、新潟にあった坂上さんのおばあさんの家での撮影もしたそうです。古い日本家屋が少しずつ自ら朽ち果てていくすさまじいアニメ―ションです。写真は坂上さんの展示から。映画は信頼できる仲間の協力があってこそできる芸術ですよね。倉田さんと平澤さんは演劇の仕事、珍しい名字の一見さんは坂上さんと一緒の仕事をされているそうですが、元は東京藝大大学院で映画の監督コースで学ばれたと知り、興味津々。

5年前まで東京藝大で35㍉をしていたそうですが、今はしていないそうです。大学院時代、一見さんは短い5分位の35㍉作品を作ったそうです。京都造形大も映画になって、フィルムはやっていないと教えて貰いました。連れ合いが大阪芸大を定年退官したら16㍉での制作はなくなるかもしれないと内心思っていましたが、この時の会話で、来年も継続することになったと知り、心底ホッとしています。映画を志す人がフィルムを知っていることは、将来きっと役に立ちます。

もう一人、4月4日に来てくれた金沢美術工芸大学油画3年の山本匠さんも印象深い出会いでした。アニメーションももちろん楽しんでご覧いただきましたが、フィルムへの関心がとても強くて、おもちゃ映画の体験を「先生にも報告する!」と目を輝かせて言ってくださって。聞けば、金沢21世紀美術館で、古い映画を上映するプロジェクト「まるびぃシネマ・パラダイス!」というプロジェクトの活動をしているのだとか。ネットで検索するととても素敵な文章が綴られていました。

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まるびぃ シネマ・パラダイス! とは

この上映会は、映画に魅せられたデジタル世代の学生たちとフィルム全盛期に映画に親しんだ世代が交流しながら、企画・運営しています。映画史に残る名作をフィルムで上映することを通してフィルムの良さを考え、併せて上映技術の継承にも取り組むことで、金沢におけるフィルム上映の環境を次代につなぐことや、映画で金沢を盛り上げることを目的としています。

……

山本さんによれば、学生さんたちが見たい映画を選ぶこともできるそうで、映画祭は毎年冬に開催。今年は、ぜひ実家に帰る途中に立ち寄ってみたいなぁと思います。絵が素晴らしく上手で、好青年の山本さんと知り会えたことも本当に良かったです。

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伊藤有壱先生の「ニャッキ!」は子どもは勿論、大人にも人気でしたが、今回その作品が見られなかったのが残念。ゼミ修了生の方々も含め、皆さんプロの作家としてNHKや民間企業の仕事をされているため権利的に簡単に上映できないので致し方ないですね。在学時の作品の権利は大学にあるので、こうして観ることができました。在学時とその後の作品を観比べられたのも醍醐味でした。いろんなテーマにそれぞれが試行錯誤しながら取り組まれたコマ撮りアニメの表現の豊かさに感心しつつ、魅せられた日々でした。

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5日には、アニメーションに関心を持ったお父さんと小さな兄弟も来館。30日のフィルムを使ったワークショップのことを話したら、「やってみたい!」と元気な声が返って来ました。真剣な表情で50コマのカリグラフに挑戦する弟君。

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お兄ちゃんが完成したフィルムを見せてくれました。上森一輝さん、颯太さん、祥平さん。この後、フィルムを輪状に繋いで手回し映写機で上映し、スマホで撮影。世界で一つだけのアニメーションが出来上がりました!!!

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京都市内でギャラリーをされている原田明和さんとお子さんのゆうご君(5歳)、いとこの橋本和佳ちゃん(10歳)も見に来て下さいました。

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 ゆうご君が感想を綴っています。「こわく、おもしろく、たのしく、あそばせてくれてありがとう。そしておもしろいまんがでぃずにーのめがねみたいなやつ(VIEW・MASTER)をみせてくれてありがとう」と。和佳ちゃんも「いろいろえいぞうのちがう物がたりがありました。わたしがみた中でいちばんソーセージのお話がおもしろかったです。たいけんでは、30ぐらいのえいがをつくるきかいがいろいろの国からのものがあったので、すごいと思いました」と書いてくれました。

「ソーセージのお話」というのはオープニング・トークイベントに参加して下さった小川 育さんの『I think you're a little confused』のことですね。上映作品の中には「怖い」と感じる子どもたちの反応も見受けられましたが、怖いと思いながらも興味深く見てくれた様子が伝わります。前掲の一見さんは「小さい子供のお客さんと一緒に見られたのが良かったです。子供の反応を映画を見ながら感じられて新鮮でした」と書いてくださいました。こうした経験が今後の作品に活かされると良いなぁと思います。

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展覧会最後の4月7日、プログラムA上映後のトークイベントの様子。スクリーンを背に参加作家さんが並んでおられます。左からこの展覧会の幹事をされた河野亜季さん(2期生)、秦 俊子さん(2期生)、宮澤真理さん(5期生)、そして企画・代表者の伊藤有壱・東京藝大大学院教授。

伊藤先生は、今年3月にチェコ、ハンガリー、ポーランド、スロバニアの4か国を巡り、交流しながら『HARBOR TALE』を見てもらう旅をされました。港町「Y」に、古い洋館の一片として街の移ろいを眺めていた赤レンガが、ある日壁を抜け出して…。

DSC09291 (3)「ハンガリーでは一般の人がたくさん見に来られました。日本なら質問タイムに『アニメで食っていけるのか?』と聞かれるとこですが、訪問したそれぞれの国では、文化的な深みのある質問が出て、こういう文化度の高い中で上映・発表するのは、やはり刺激になるなぁと思って帰国しました。日本との文化度の違いに打ちのめされていたのですが、すぐ京都で始まった上映会後の懇親会で、お客さまから一歩も二歩も突っ込んだ質問が出たことは、作家たちにとってもとても良い経験になりました」と仰って下さいました。

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河野亜季さんは在学時の作品『約束』と修了後のミュージックビデオ『どっぴんしゃーらー』を今回上映。「『約束』は合成を使わず、ガラスを五層ぐらい重ねて、カメラを上から固定して撮影するマルチプレーンという技法で制作しました。一画面一画面を完成するのに一日かかったり、二日かかったりしたのが大変でしたが、でも楽しかった」、「『影は自分の魂を可視化したもの』という言葉があり、魂を探る話を作りました。自分のイメージで素材を選び、最後まで作り切らないと作品は完成しません」等と『約束』を作った当時を振り返りながらお話くださいました。今は源氏物語をテーマに作ろうと、造形力UPの修行中だそうで、上掲写真左に写っているのはその頭部分。なお、マルチプレーンを使った撮影の動画をネットで見付けましたので、参考にここに貼ります。

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秦さんは在学時の『さまよう心臓』と修了後の『パカリアン』、可愛らしい『映画の妖精 フィルとムー』を今回上映。2017年6月11日「アニメーション・パレットin京都」で『パカリアン』を上映した時は、声の出演が斎藤工さんだということもあって、問い合わせが相次いだことを懐かしく思い出します。『映画の妖精 フィルとムー』も斎藤さんとのコラボ作品。

秦さんはホラーがキーワードですが、その中にどこか笑いがある作品を目指しておられます。『さまよう心臓』の最後の燃えるシーンは、臨場感を出すために、実際にセットを作って燃やしたそう。この作品は、ゆうばりファンタスティック映画祭で短編部門グランプリを受賞し、アメリカでもいくつかコンペインした力作。「もともと映画を撮りたいと思っていたので学部生の時に映画美学校にも通っていました。キャラクターから自分で作り、実写の要素もある表現を考えていた時に人形アニメーションを見つけ、自分に合っているかもしれないと思った時に、大学院で立体アニメが始まったので通い始めた」そうです。

「『さまよう心臓』は本当に怖い作品を作りたかった。心理的に追い詰められ、余りえぐい、怖い表現はないけれど怖いギャグとホラーのバランスを考えていました。笑いを入れたつもりだったのに上映したら笑いが起きていなくて、逆に小さい子どもが泣いたりして…。それで、もう少し大衆性を意識したものに変化して、『パカリアン』を作りました。希望としては、シリーズアニメを作りたい」と話して下さいました。この日は、『パカリアン』後にパイロット的に作りアメリカで上映した別バージョンの『PACALIEN』を見せて下さいました。今、U-NEXTで「新鋭ストップモーションアニメ作家・秦俊子の世界」として、この4作品がオープン配信になっています。ぜひクリックしご覧ください‼

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宮澤さんは、卒業後ずっとEテレの『こにぎりくん』(今6作目)を作っておられます。4月は毎週木曜日Eテレのプチプチアニメで『こにぎりくん』が放送されています。プチプチアニメの放送時間は8時45分~50分、再放送は15時40分~45分です。4月25日の『こにぎりくん』は「オルゴール」。ついでで恐縮ですが伊藤先生の『ニャッキ!』は4月23日「ガラクタDANCE」、5月7日「赤い〇」です。どうぞ、ご覧くださいね。

プログラムAでは、宮澤さん在学中の『Decorations』を上映。2002年からキャラ弁を作り始め、ホームページを作って掲載しておられたところ、それが出版社の目に留まり、10冊くらい本を出版。全国のキャラ弁のお母様方と繋がりができた宮澤さんですが、ふと「おにぎりに顔をつけて動かした時に振り向き様の魅力はいったい何事か」と思ったそうです。これをどうやってみんなに見せたら良いのかとストロボ写真で撮り、それをパラパラ漫画みたいに動かしている頃、立ち寄った本屋さんで撮影のための専用ソフトが販売されていることを知り、アニメ教室の存在や大学でも教えていることがわかって、いざ、東京藝大大学院立体ゼミへ。

「キャラ弁を動かしたくて、ここまで来ました。食べるものが好きなのは間違いないが、自分の世界を表現するためにアニメと出会って、より表現できるとわかりました」と話される宮澤さん。膝にのっている唐草模様の包が気になりますね。

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米粒が本物じゃないとおいしそうには思えないので、他の食材も全部実物大で作っておられます。「『こにぎりくん』は本物のお米なので、今日は持って来れなかったけれど」とみんなに撮影に使うお弁当を披露して下さいました。この弁当箱の中身はフェイク。それにしても美味しそうですね‼

伊藤先生は「本物の食材にこだわった『Decorations』は世界中でコンペインを重ね、世界の児童映画祭で宮澤さんは常連さんです(例えば昨年のオタワ・アニメーション国際映画祭で『こにぎりくん』の「オルゴール」がプレスクール短編部門グランプリ受賞)。本物の食材や粘土は全て自由ではないけれども、人間の五感を刺激する部分があり、そこから映画として楽しめる作品を作る彼女はとても良い才能の持ち主です」と解説されました。

その『Decorations』の思い出として、「クリームなど液体のものはコマ撮りには向かない素材で、企画書段階で伊藤先生から『これは無理だと思う』と言われましたが、できるところまでやって、だめなら相談しようと思いながら、最後まで行ってしまいました。それは東日本大震災後のことで、日本中が節電を言われていた時期でしたが、家中をもの凄く冷やしてケーキの撮影をしていました。クリームは勝手に形が変わってしまいストップモーションには向かない素材なので、映像で見ているものは柔らかそうですが、実はもの凄く粘度の高いものを工夫しました。次の写真を撮るまで形を保つため、いろんなことを試しました。何をやっても初めてなので、困難だけど楽しくて、自分で思っていたのと違う結果になることがあっても、それも凄く新鮮でした」と話されました。

そうした作家さんたちの話を引き受けて、伊藤先生は「常識を壊しながら、『自分の作品を作る』その一点に向けて、エネルギーを向けたとても良い作家たちが、今日ゲストで来てくれています。三人ともフリーランスで活躍しています」と付け加えられました。

その伊藤先生は、影響を受けた作家について尋ねられると、イギリスのニック・パーク監督の名前を即座にあげられました。出会いは1990年広島国際アニメーションフェスティバルの時で、先生の作品がコンペインし、同じプログラムにニック・パーク監督の『A Grand Day Out with Wallace and Gromit』(後にチーズ・ホリデーに改題)がありました。「指紋だらけだけど、粘土でペーソスやユーモアが実に良い味を出していました。それを見て『素材って何のためにあるんだろう』と教わった気がして、粘土が気になった」のだそうです。皆さんが良くご存知の『ニャッキ!』は、その4年後に誕生します。

最後に、3月30日のアニメーションワークショップで作った16作品を、当日の講師役と音楽演奏で東京から駆けつけて下さった廣安正敬さんが編集して音楽も付けて下さった映像『アニミズム・パーティー 16』をみんなで拝見しました。このトークイベントに間に合うようにご多忙の中を、一生懸命頑張ってくださいました‼ ぜひこちらをクリックしてご覧ください。

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トークイベント終了後の記念写真です。たくさんの人に来ていただき感謝でいっぱいです。手間暇がたくさんかかるけれども、工夫を凝らしながら、喜びをもってストップモーションアニメーションに取り組んでおられる作家さんたちの生のお話を伺うことが出来て、とても良い時間でした。

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続く懇親会。それぞれの作家さんを囲んで、会話が弾んでいます。この後プログラムB上映を控えていましたので、テーブル設置はありませんが、丁度見頃を迎えていた京都の桜同様、話の花がそこここで満開に‼

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伊藤先生の表情から、ここでも「一歩も二歩も突っ込んだ質問」が交わされた雰囲気が伝わります。

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プログラムB上映の間、先生たちは来館者の皆さまが感想を綴ってくださったノートをご覧になっています。「これからアニメーションを作っていく身として、すごく参考になりました!」「どれも手の込んでいるのが見て伝わりました。きっと驚くほどの時間をかけられたのでしょう。今は誰でも簡単にスマホ1台で映像作品が作れる時代で、そんな時だからこそ、一コマずつ時間をかけて作られた作品は他と違う感動がありました。とてもおもしろかったです」というご意見や「いろんなモノに命を吹き込まれていく様が面白かったです。ストップモーション独特の表現をたくさん見ることができて良かったです」という感想には、タイトルに「アニミズム」と付されたことが作品をご覧になった方々にも届いているだなぁ、と思いました。

こうして12日間に及ぶ「ストップモーション アニミズム展 in KYOTO」は盛会裏に終了しました。おかげ様で連日お客さまが絶えることはございませんでした。伊藤先生とゼミ修了生有志の方々のおかげで、こんな小さなミュージアムで素晴らしい展覧会と上映会ができたことを誇りに思います。本当にありがとうございました!!!!!

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