おもちゃ映画ミュージアム
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Toy Film Museum

2019.06.26column

中国アニメ・漫画の日本ツアー「水墨の中から来る」と北京電影学院祭2018「持永只仁人形アニメーション文献展」の報告

一昨日は、大阪市中央区城見のツイン21で7月3日迄開催されている中国アニメ・漫画の日本ツアー「水墨の中から来る」を見に行って来ました。6月22日知り合いらの書き込みを見て、イベントのことを知りました。以前持永只仁さんのご息女・伯子さんから「6月に大阪で日中のアニメに関する催しがある」とまではお聞きしていたのですが、具体的なことがわからず仕舞いでした。22日にあった記念座談会を聴講された佐野明子さんから「持永伯子さんのスピーチは感動ものでした」とお聞きして、なおさらタイムリーに聞けなかったことを残念に思っています。

そのことを伯子さんにメールでお伝えしたところ「中国アニメ界の歴史について、とても強烈な記憶があるのでそのことを話しただけなのですが、『若い子が涙を流して聞いていた』といろんな人から聞いて驚きました。ちょっと認識を新たにして、これからは日中の人々が協力しながらアニメの土台作りに取り組んだ歴史を伝えていかないといけないと思っています」と電話がありました。

その伯子さんから2017年中国土産にいただいたお茶があるのですが、その包紙が余りに素敵なので、未だに開けずにとってあります。

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 ところが、会場でその原画が飾ってあったのにびっくりしました。金城さんの『私の人間 四月天』という題の作品でした。

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照明が映り込んで上手く撮れなかったのですが、どの作品もとても素敵です。催しタイトル「水墨の中から来る」そのままの素晴らしさで魅了されました。

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写真は、会場でプレゼントして貰ったもの一式。右下の雑誌『城市画報』を繰って、またもやびっくり。金城さんは、中国美術家協会理事他数々の要職に就いておられる高名な方でした。この冊子の中で「総術」を寄稿されています。「今年是中国漫画100年、、、新中国的第一部木偶片『皇帝夢』、第一部漫画短片『甕中捉龜』、、、方明(持永只仁)、、、日本漫画之父手塚治虫、、、」と持永只仁さんと手塚治虫さんのお名前を最初部分に書いてあり、お二人が日中の漫画と人形アニメーションに貢献したことを称えておられます。

(このパンダの絵が描かれた袋の中に入っていたTangoさんの『I have a dream』という絵本は、One Time One Paiting  の考えで描かれた文字が一切ない本。文章がなくても世界中の様々な文化の人と理解できる漫画家になろうと活躍されている作家さんのようです。もうひとつのトランプ一箱には、1枚ずつ異なった言葉が書いてあります。最初の一枚、スペードの1には日本語に訳すと「愛すべき人を愛するのが愛 愛する人を間違えるのが青春」とあり、ちょっとクスッと笑えますね)

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金さんの文章にも名前があった手塚治虫さんの絵が、イベントのメインポスターになっています。

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原画はこちら。22日のイベントに登壇された古川タクさんが、Facebookに書かれた内容によれば、40年前に手塚治虫さんを団長とする日本アニメ―ション協会有志が、中国を訪問されました。北京の人民大会堂で中日友好協会会長の廖承志さんとお会いされた後に上海美影スタジオを訪問。この絵は、その時に手塚さんが孫悟空とアトムを描いてプレゼントされたものだそうです。

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中国らしい設えの挨拶文掲示。この序文を拡大したのが下掲写真。

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ここにも、持永さんと手塚さんのお名前が書いてあります。22日伯子さんは「父がこの場にいたら、どんなに喜んだろう」と感極まっておられたそうです。人形アニメーションを通じて生涯を日中友好に尽力されたことが、こうして今も称えられていることを多くの日本の方にも知ってもらえたらと思います。

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展示されていたうちの一つ。この作品を見ていると、毎日テレビで見ている朝ドラ『なつぞら』の主人公なつが、どういう風にキャラクターを動かせば良いのか、自分の身体を動かしながら工夫している場面を思い出します。

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CGを駆使したおそらく三国志を扱ったアニメーションなど目を見張るばかりの作品や、淡いタッチがとても美しい水墨画漫画など、中国を代表する新旧の作家による総計200点が会場に展示されていて、無料で自由に見ることができます。こうした内容での大規模な作品展は日本で初めてなのだそうです。

作品の中で、私が最も気に入ったのが、下掲「秋実」のアニメーション。

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 2017年11月22日~26日、安全を考えて僅か1週間だけでしたが、持永只仁さん『少年と子だぬき』(1992年)、岡本忠成さん『おこんじょうるり』(1982年)、川本喜八郎さん『死者の書』(2005年)をお借りして展覧会をしました。その時のタイトルは「持永只仁展-人形アニメを通した日中友好の足跡を追う―」にしました。伯子さんとお話をしていて、持永さんは中国の盛徳偉さんと生涯にわたっての大親友だったという話がとても印象に残りました。水墨画を得意とした漫画家として21歳の時から頭角を現しておられましたが、持永さんと出会って以降、共にアニメーション製作に関わってこられた方です。「水墨画を活かしたアニメーションが、どのようなものか」と、ずっと興味を持っていました。

この作品は、上海美術映画製作所と北京電影学院によるものだと書いてありましたので、丁度良い機会だと思い、昨年11月1~7日北京電影学院学院学院祭に行った時のことを思い出しながら、写真をいくつか。

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 持永伯子さんが「勉強になるから、見学にいらっしゃい」と声をかけて下さって、初めての海外一人旅でした。先に伯子さんとお嬢さん、そして、東京工芸大学助教細川晋さんが到着して、持永只仁展開始に間に合うよう人形の展示作業をされていて、1日細川さんと入れ違いに北京入りしました。いろんなことが不慣れで戸惑いの連続でしたが、ここでは持永さん中心に思い出写真を掲載します。

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毎年持永伯子さんは、全中国から選ばれた優れたアニメーション作品を作った学生さんに「持永只仁賞」を授与するために招待されていますが、昨年は11月2~9日迄「持永只仁人形アニメーション文献展」が開催されました。持永さんの作品が中国で大々的に開催されるのは、初めてだそうです。学院の構内至る所にこれらの学院祭の幟が立っていました。右から二番目の幟が、持永さんの催しを紹介するもの。

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沿革や映画について紹介する資料館が開放されていたので、見学。

DSC07382 (2)北京電影学院が輩出した著名な映画監督や俳優さんが大勢おられます。

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中央に掲載されている東北電影製作所のコーナーに掲載されている一番下写真6枚のうち、右から3枚目に若き日の持永只仁さんが右端に、左端に村田幸吉さんが写っています。他は『皇帝の夢』を作った時の中国の仲間たち。この作品名は、前掲「序文」や金城さんの「総術」にも出てきます。

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そして、学院祭オープニングの11月2日。持永只仁さんの作品が展示されている棟の前で、伯子さんの中国の幼馴染たちと記念撮影。私もご一緒させていただきました。敗戦後の混乱の中、満映から映画撮影機材を急ぎ列車に積み込んで中国東北部へ移動し、東北電影製作所設立に協力された映画人のご子息とご息女たちです。この方たち自身もですが、その親御さんたちは中国映画に大いに貢献された人ばかり。持永只仁さんは、満映時代から中国人スタッフに対していつも対等に接しておられたので、今もこのように笑顔がこぼれる関係が世代を超えて保たれています。遠方から、伯子さんとそのお嬢さん(左から3人目)に会いに、そして只仁さんの作品をご覧になりに集まってこられました。

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左の女性のご家族が最近お亡くなりになったそうで、抱き合いながら寂しさと悲しみを慰めておられて、見ている私もジーンときました。国境や政治、制度を超えた熱い友情をみます。

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 学院祭開会式。例年なら人民大会堂で開催されるとお聞きしていましたので、とても楽しみにしていたのですが、この日は他の行事のため学院内で行われました。北京電影学院副校長・北京電影学院アニメーション研究院院長さんのご挨拶。来賓の方々のご紹介・挨拶に続き、

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持永伯子さんが壇上でスピーチ。DSC07201 (2)人形アニメーションの指導を通して日中友好に尽力されたお父様のことをお話になりました。先ほどの副校長・アニメーション研究院院長さんも、持永只仁さんの教え子のお一人です。

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華やかなセレモニー終了後、持永只仁人形アニメ―ション文献展の会場へ移動しました。

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これが展示会場入り口。

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北京電影学院アニメーション研究院の先生方と中国中から集まった先生方。先ほどの副校長さんのお隣の先生も持永只仁さんの教え子だそうです。

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ここでも、伯子さんはスピーチを求められ大忙し。「持永只仁人形アニメ―ション文献展」は、2018年日中平和友好条約締結40周年を記念して開催されたのでしょう。

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会場では大勢の人が『甕の中で捉えたスッポン』『皇帝の夢』をご覧になっています。左のショーケース内では多くのアニメーション制作に関する持永さん自筆の貴重な資料類が展示されていました。

DSC07263 (2)右から二人目が、滞在中ボランティアで通訳をしてくれた女子学生さん。先ほどステージでスピーチされる伯子さんの通訳をした女子学生さん共々、滞在中はとてもお世話になりました。二人とも、日本の漫画とアニメーションが大好きで、それを見て日本語を勉強されたそうです。

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皆さん、とても熱心にご覧になっています。たくさんの人で賑わいました。

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上海美術電影製作所に寄贈された持永さんの人形たち。他にも同様な人形がいくつもありました。持永さんが所蔵されている人形も含め、いったい何体の人形が展示されたのかしら?可愛らしい人形がたくさんあって、人形好きの私には至福の時間でした。きっと見学者の多くにも共通する思いでしょう。

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2017年11月に展示した『少年と子だぬき』の人形も。その時とは異なった表情を見せていて、こちらも可愛いです。

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こちらは『ルドルフ 赤鼻のトナカイ』(1964年)。今もクリスマスの定番として放送され、アメリカの子どもたちに大人気の作品です。

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そして、11月4日夜の閉会式で、中国全土から応募があった作品の中から選ばれた数々の作品が表彰され、その中に「持永只仁奨学金」もありました。受賞した女子学生さんに伯子さんが直接授与されています。こうした才能ある若者の作品も大阪TWIN21会場で展示されていた中にあったのかもしれません。前掲「序文」にあるように、アニメ・漫画という架け橋によって両国民が相互理解を深め、友情をより一層推進していけたら良いなぁと願っています。

 

 

 

 

 

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