おもちゃ映画ミュージアム
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Toy Film Museum

2020.08.25column

ニューヨークを拠点に活躍する映像作家の山崎エマ監督とプロデューサーの夫君エリック・二アリさん

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昨日アップリンク京都で観てきました‼ 9月3日まで同劇場で上映されますので、ぜひお出かけ下さい。内容につきましては、上掲チラシに詳しく書かれていますし、各地上映会場などの情報もQRコードでお確かめ下さい。横浜隼人高校の水谷哲也監督、その教え子である花巻東高校の佐々木洋監督、この二人の指導者の下で、一生懸命「夏の甲子園」第100回記念大会出場を目指して日々練習に打ち込む球児達、そして家族にも密着して取材されています。どの表情もとても自然に写し撮られていて、だからこそ観ていて、当事者達と一緒になって泣き、悩み、微笑むことができるのだと思いました。山﨑エマ監督は、とても聞き上手だなぁと思います。

でも、ただ上手なだけではなく、下調べを十分されているのです。なぜそう思うかと言えば、連れ合いが6月にミュージアム内でエマさんからインタビューを受けているのを見ていたからです。事前のメールでのやりとり、ミュージアムでの取材はもちろん、様々な資料を短時間の間に集中して読み込み、見過ごしていた細かい箇所への疑問点を指摘されるなど、とても凄いなぁと思いました。そして、それだけでなく明るくて、快活、元気で、前向きです。こうした長所が、この高校野球を題材にしたドキュメンタリーにも、十分発揮されていると思います。先が見通せないコロナ禍で疲弊しきっている世の中ですが、そして、球児達にとっては「夏の甲子園大会」が中止になり、その不運な巡り合わせをどこにぶつけたら良いのかもわからない現実でしょう。でも、こうした経験を将来に活かせて欲しいと願わずにはおれません。

で、先日このチラシを持って来て下さった夫君でプロデューサーのエリック・二アリさんによれば、連れ合いもインタビューを受けたドキュメンタリー映画は、彼の会社ニューヨークのシネリック社で4K修復が進められている稲垣浩監督、宮川一夫先生撮影の『無法松の一生』(1943年)完成作品と同時に今年のヴェネチア国際映画祭に正式に出品が決まったのだそうです。うちがパテ・ベビー・カメラと映写機で協力させて貰った黒沢清監督『スパイの妻』共々の快挙です‼ おめでとうございます!!!!!

宮川先生の代表作の一つでもある『無法松の一生』修復作業が行われている機会を活かして、山崎エマ監督は、この作品が作られた背景、制作者達の思い、当時の評判、作品が経験した軍部と進駐軍による2度に亘る検閲の詳細、アメリカのニューヨーク、ポルトガルのリスボンにもあるシネリック社と、日本で行われている修復作業の様子、宮川先生の弟子だった宮島正弘カメラマンと宮川先生のご長男一郎さんの思いをカメラで捉えたいと取り組まれました。宮島さんと一郎さんは、この作品のことを「宮川一夫の原点」だと言い、「修復されたら死んでも良い」とまで話されたそうです。そのドキュメンタリーの一部に晩年の宮川先生に間近で接していた連れ合いも参画できることを光栄に思っています。

そして、エマさんからの電話で知ったのですが、日本アニメーション協会会長の古川タク先生が、そのドキュメンタリーのアニメーション部分を担当されたそうです。古川先生に尋ねましたら、日程的に厳しかったそうですが、何度も連れ合いのインタビュー映像を繰り返してご覧になったそうです。そう聞けば、尚更完成作品を観るのが楽しみになってきます。

今年のヴェネチア国際映画祭は9月2日~12日開催で、ギリギリになったそうですが、エマさん無事に出品されたそうです。今年の開催はオンラインで、世界中の観客の皆さんがどのようにご覧になるか楽しみですね。ヴェネチア国際映画祭では、黒澤明監督の『羅生門』(1950)、溝口健二監督の『雨月物語』(1953年)と『山椒大夫』(1954年)は、みな宮川一夫先生が撮影され、『羅生門』は第12回金獅子賞、『雨月物語』第14回、『山椒大夫』第15回は銀獅子賞に輝いています。日本が誇る名作群です‼

宮川先生は、1999年8月7日、91歳で亡くなられましたから、没後21年。美しく修復された映像で世界の映画ファンにご覧いただけることを、泉下の宮川先生もお喜びになるでしょう。できることならオンラインではなく、イタリアまで観に行きたかったです。

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