おもちゃ映画ミュージアム
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Toy Film Museum

2021.11.26column

現役最高年齢映画監督の井上昭さん来館‼

11月16日共同テレビの取材で、現役最高齢映画監督井上昭さんが来館。大映京都の思い出についてインタビューでした。聞き手は和田健佑さん。写真手前に座っておられるシルエットは、京都組の西村維樹さん。井上監督は12月10日で満93歳になられますが、とてもそんな年齢に見えず、若々しくダンディです。

丁度、大映京都の特撮技術「マット画」原画展をしているので、インタビュー取材終了後に見て貰いました。

取材時にも『大魔神』三部作を撮られた森田富士郎キャメラマンのお名前が幾度も出てきました。聞けば森田先生は一年上で、とても気が合ったのだそうです。

向かって右が井上監督、左が西村さん。西村さんは、当館での取材を繋いで下さいました。井上監督は「こんなところがあったとは、知らなかった。また来るよ」と仰って下さいましたので、その実現を願っています。これらのマット画を用いて映画を製作されていた頃をよくご存じだろうと思いますので、いろいろ教えて頂けるとありがたいです。

和田さんが国会図書館でコピーされた『シナリオ21』(1/2)(200)1965ー0102合併号の130ページを見せてくださいました。いろんな方が「演出を批評する」という特集らしく、そのページは作家の舟橋和郎さんが井上監督の『勝負は夜つけろ』(1964年、大映)を批評しておられます。舟橋さんは、井上監督の『黒の狂気』に続いて脚本を担当されていて、

「…(略)二本目のこの映画を見て、私は彼が、才能ある芸術家であることを認めざるを得なかった。大袈裟に云えば、日本のゴダールとでも云うような才気溢れた感じがある。(略)少なくとも彼の描く映画には、ゴダール的なものがある。(略)…」

「井上氏は、映像の中に、抽象的な観念を表現することが、これからの映画の進むべき方向だという信念を抱いている」とも書いておられるあたりに、『勝手にしやがれ』(1959年)でヌーベルヴァーグの名を高めたゴダール的なものを感じられたのでしょう。

伝統を重んじ、時代劇の重厚さとリアリズムをめざした大映京都にあって、「新しい波」の到来を感じさせる作風で森田先生と通じる斬新な技法で時代劇を作られた井上監督を、舟橋さんは「日本のゴダール」と表現したのでしょう。

さて、取材があった前日には井上監督の最新作『殺すな』のスタッフ試写会がありました。藤沢周平さん『橋ものがたり』が原作の時代劇で、以前にも時代劇チャンネルで、同作品の中の『小ぬか雨』を演出されています。

主演は中村梅雀さん。来年1月に劇場公開されますので、拝見するのをとても楽しみにしています。詳しくはこちらをご覧下さい。

色紙にサインをねだりましたら、お地蔵さんの絵を添えて下さいました。最近お地蔵さんにはまっているのだそうです。早速飾ったら、帰りがけに、その色紙をご覧になって「可愛いね」とにっこり。失礼ながら、とてもチャーミングでした。『殺すな』にもお地蔵さんが出ていると聞いたような。。。誰にでも「愛」を持って優しく接して下さる井上監督は、本当に素敵な方でした‼

【11月27日追記】

助監督としてだけでなく、一緒にシリーズを監督したこともある原田徹監督に「井上監督のことを太秦の映画人は日本のゴダールと呼んでおられますか?」とお聞きしましたら、「ゴダール…それは、聞いたことはありませんが、ちょっとユニークな撮り方を初期の頃はされていたと思います。わざと割れたレンズで撮ってみたりとか。特に初期の作品には森田富士郎キャメラマンとのコンビで実験的なカットがあります。渡辺貢キャメラマンとのコンビで撮った勝プロでのテレビ作品には、埋もれている傑作が幾つも残されています。松竹京都では藤原三郎キャメラマンとのコンビでした。井上組の現場は工藤栄一監督と同じでいつもワクワクします。井上監督とは随分と仕事し、2時間ものは時代劇も現代劇もありましたが、(五代目)中村勘九郎さんの『森の石松』は傑作でした」と話して下さいました。

現在、原田監督は、ハリウッド発時代劇『将軍』の撮影の監修の為にカナダのバンクーバーに滞在中。ジェームズ・クラヴェル原作の再ドラマ化で真田広之さん他が出演。インターネットは、お聞きしたいことが直ぐに聞ける便利なツールだなぁと改めて実感しています。

 

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