2021.12.30column
クッサンの蕎麦屋「夢屋」、明日閉店😢
連れ合いが大阪芸大に勤め始めたのは1972年。「クッサン」と親しく呼ばせて貰っている楠木順彦さんが映像学科に入学したのはその前年で、学科の1期生。卒業後、太秦の撮影所で森田富士郎キャメラマンの助手をされていましたが、映画の仕事では生活ができないので、大阪でテレビの仕事に。最初は教わりながらでしたが、やがて独立。撮影機材を揃えてNHK他各局のドキュメンタリー番組制作で活躍されましたが、それぞれの局で使う納品のフォーマットが違うのでそれに対応する機材投資も馬鹿になりません。そうこうしているうちにデジタル社会になり、アナログ機材からデジタル機材に全て取り替えなければならなくなりました。
「また一から設備投資しなければならないのか」と思いながら取材した時に出会ったのが、ソバ打ち職人でした。その時、自分でソバを栽培し、製粉。それを手打ちしてお客様に食べていただくのが自分には合っていると決断。カメラマンから蕎麦屋への方向転換に仕事仲間は、皆びっくり仰天。でも、これまで集めた資金を生かす道をということで大英断されました。
2001年に大阪市中央区北新町3-2で蕎麦屋「夢屋」をオープン。「自分で育てたソバなら個性も際立つ」と奈良県大柳生に畑を借りて自ら栽培。通い続けるのもなかなかに大変なことですが、そうする手間が愛おしいのでしょう。クッサンらしいです。
数日前に共通の友人がFacebookで「夢屋が31日で閉店」と知らせてくれました。まさか、そんな日が来るとも思わず、「いずれソバを食べに行こう」と暢気に先延ばししていたのですが、そうも言ってられないと28日に急いで出掛けました。
私自身は初めての訪問でした。店内は閉店を名残惜しむお馴染みさんで満席。
連れ合いは、にしんそばとおにぎり。米は契約した農家さんから直接購入されています。赤カブの漬け物も大柳生で作った自家製。天然の発色で綺麗で、味も抜群。
私は迷わずおろしソバ。トレイ左下皿に載っているおろし大根の辛いこと。時に「辛すぎる」と怒り出す人もおられるそうですが、この辛さがたまりませんね。この辛子大根もクッサンが丹精込めて育てたもの。おつゆまで全部平らげました。
21年近く営業を続けて拘りのソバを提供されてきましたが、コロナでお酒を提供する夜の営業が出来なかったことが打撃を与えました。ここにもコロナ被害に遭ったお店が1軒あったのです。
ソバ、辛子大根、赤カブの漬け物とお客様に自然のままの美味しい食材を提供しようと頑張ってこられたクッサンの蕎麦屋「夢屋」は、大晦日の明日を以て約21年間あげ続けた暖簾を降ろします。「自分は好きなことをやってきたが、コロナが引き際を教えてくれた。なんでも始まりがあれば、終わりがある」とクッサン。最後の言葉は、常日頃の連れ合いと私の会話に出てくることでもあり、グッときました。
「夢屋」閉店は惜しまれますが、おやじバンドの活動もありますし、多趣味のクッサンだから、次の「おもろいこと」に挑戦するであろう今後に大いなるエールを送ります。