おもちゃ映画ミュージアム
おもちゃ映画ミュージアム
Toy Film Museum

2016.04.19column

盛会‼「無声映画の昼べ」

4月16日、地震で九州が大変なのを気に掛けつつ、予定通り坂本頼光さん主催「無声映画の昼べ」を開催しました。午前中に椅子を並べて会場の設えをしましたが、前日までの予約状況から「いったいどれくらいの人が、この椅子に腰かけてくださるのか」と心配の種は尽きません。「おもちゃ映画ミュージアムの認知度が低いから、せっかく頼光さんが来てくださるのに申し訳なくて」と詫びを入れる私に、当の頼光さんは「大丈夫です。たとえ少なくても一生懸命やりますから」と優しく、頼もしい声掛けをしてくださいました。

ところが、開幕が近づくにつれて、当日参加のお客様が続々と。日本アニメーション史研究第一人者・渡辺泰先生から教えていただいた上映アニメーションに関する配布資料が足りなくなって、慌てて増刷。用意した椅子では足りなくなり、休憩まで立ってご覧頂く羽目になったお客様も。私たちも含めて総勢35人が、ホールを埋め、会場は熱気に包まれました。この日の大きな教訓は「どんな時も、最後まで諦めてはいけない‼」ということ。これは、誰にでも当てはまる言葉だと思います。

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午後3時、頼光さんの登場。彼は昨年12月12日の「実録忠臣蔵」上映に続いて2度目の登壇です。

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最初に上映した「Aladin and the Wonderful Lamp」(邦題「不思議のランプ」)は、1935年3月14日に東京の本郷座で封切られた作品。2月に美濃部達吉の天皇機関説が問題化し、3月に衆議院で、統治権は天皇にありとする国体明徴決議案が可決した時、市民はこうしたアメリカのアニメーションを楽しんでいたのですね。アラビアンナイトに登場するお話なので既視感があります。1930年代のアメリカはトーキーの過渡期。無声で売っていますが、時々音楽付きのものもあります。日本でも、そろそろセル画が出てきたころですが、紙でトレースしていく時代が長かったので、アメリカのアニメーションが技術的にも映像表現的にも断然進んでいたので、当時の日本の人々は「凄い‼」と思って観ていたことでしょう。今回の作品は劇場でかかったものの短縮版に頼光さんが音楽を付けて上映。

少しづつ施設を整えようと1、2階とも防炎遮光カーテンを下げ、映画に集中できるよう工夫しましたので、向かって右に立って説明をする坂本さんが暗く映っていますが、会場の雰囲気が伝わるかと思います。今回から入場は、映画美術の宇山さんが作ってくれたばかりの素敵な裏木戸からにしました。

続いて、「KO-KO The Barber」(邦題「床屋のココさん」)は、余りの面白さに没頭して写真を撮り忘れ。日本公開は1932年。前年に満州事変が起こり、この年3月に満州国建国宣言、そんな年です。作画はフライシャー兄弟の兄、監督は弟。最初に、原画の作者の実写があって、彼が途中までココさんを描くのですが放っておいたら、アニメのココさんが体の残りを自分で書き始め、やがて…。凄い実写とアニメーションのコラボで、いろいろ試みられていた時代だとわかる作品。

会場には、このフィルムを提供してくださった方もおられて、一緒に拝見できたことも嬉しかったです。先週入籍したばかりの大森くみこ弁士が来館の折、この作品を見て「わたしも上映したかった」と悔しがっていましたが、いつか彼女の可愛らしい声でも観てみたいものです。無声映画の楽しみというのは、弁士それぞれの持ち味によって味わいが異なる面白さ。

オマケということで、ヴワディスワフ・スタレーヴィチ(ポーランド系ロシア人)が1912年に作ったアニメーション「カメラマンの復讐」をサプライズ上映。おもに大人向けに作られた昆虫を主人公にした不倫もの。一見仲睦まじく見えるカブトムシ夫婦ですが、夫は踊り子のトンボと不倫。彼女を横取りされたキリギリスのカメラマンは密会現場を押さえようとパパラッチさながらに追跡開始。一方、カブトムシの妻も亭主の留守に画家を招き入れて不倫中。その現場を夫に押さえられて、ひと悶着…。頼光さんの活弁の持ち味が発揮され、際立つ面白さ。大いに笑わせてもらっただけでなく、ロシアのユーモアにも気付かせてもらいました。ネットで映画評論家山田和男さんの講演録「ロシア革命と映画」を読みました。スタレーヴィチは世界的な人形アニメーションの改革者だそうです。代表作とされているこの作品においても、人形や模型を駆使して、実に精密な動きを作り出しています。1912年は、日本でいえば明治の終わりで大正元年。山田さんが仰る通り「帝政ロシア時代の映画がかなりの程度発達していた」ことがよくわかります。

もう一つ、知的ナンセンスの傑作と言われた作品をサプライズ上映。「本物が偽物に勝てない」という権威主義に対する痛烈な批判。全巻揃っていなくて惜しいのですが、ミュージアムには後半部分の一部があります。今後、ミュージアムの活動が津々浦々に知られて、どこかの家から蔵から見つかると良いですね。是非、「全編通して観たい」そんな作品です。

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 休憩をはさんで、後半は、岩波の科学映画「かえるの発生」(1955年)から。写真は、アンパンマンに見えなくもない卵が分裂を始めたころの映像です。かえるになるまでを微速度撮影した作品で、本来は音声付きですが、敢えてナレーションを消して頼光さんに、一回限りの説明を付けていただくという迷惑千万、でも値千金の上映です。当人は「もっと面白く表現したかったが、オリジナルのナレーションから、なかなか外れられなかった」と後で話しておられましたが、どっこいどうして、皆さん食い入るように観ておられました‼ こうしたジャンルの作品の楽しみ方、見方を一つ提案できたように思います。最後に沢山のかえるが映っている場面では、時事ネタ(子どもの声が騒音になると住民が反対運動をした結果、保育園開園を断念した問題)を披露して語るなど、活弁の面白さ、ライブ感を味わせてもらいました。この日の参加者には、春に京都の大学生になったばかりの女性も参加。数日前来館の折り、「ぜひライブ感を味わって欲しい」という願いに応えて足を運んでくださったのですが、きっと彼女にも面白さは伝わったと思います。残念だったのは、フィルムの提供者である友人が、お母様の介護で参加できなかったこと。彼女にこそ観て欲しかったです。

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 そして、最後に林長二郎の「黒手組助六」(1929年、松竹下加茂)。歌舞伎の出し物で有名で、長二郎の美しさが存分に味わえる作品。日活がスターを揃えても、林長二郎には勝てなかったといいますが、女性ファンの心をつかみ、「ミーハー」の言葉まで生まれるほど、その時代「熱狂させた」というのが、よくわかります。映画デビューから2年目で、既に31本目の作品という人気ぶり。揚巻大夫を演じるのは若水絹子。林長二郎(後の長谷川一夫)ファンでコレクションを展示してくださっている岩本さんも一緒にご覧いただけたことも幸いでした。

これにて終了。全部で6作品。このうち2作品が初演でしたので、頼光さんの疲労も相当な模様。この後繰り広げられた交流会を終えて、友人と路地を行く背中から声がしました。「あ~、疲れた‼」。今回も全身全霊のパフォーマンス。そのサービス精神は、ちょっと表現できないくらい圧倒的なものでした。

お疲れさまでした。そして、頼光さんはじめご来場いただいた皆様、どうもありがとうございました。心より御礼申し上げます。

 

 

 

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