おもちゃ映画ミュージアム
おもちゃ映画ミュージアム
Toy Film Museum

2025.10.18column

ポルデノーネ無声映画祭見て歩き2

行程3・10月5日(日)、いよいよ世界最大級の無声映画の祭典、ポルデノーネ無声映画祭で紙フィルムが上映される日。上映は14時半(現地時間)からですが、昨夜初めて体験したポルデノーネ室内管弦楽団の演奏による『シラノ・ド・ベルジュラック』があまりに素晴らしかったので、映画通の人たちに倣って朝9時からの上映会に参加することにしました。

上映会場の目と鼻の先にあるホテルモデルノを出てすぐに、アムステルダムのBin Liさんと出会いました。9月26日に出会ったばかりなのに、不思議と気持ちが通じ合い、私たちが無案内な映画祭のサポート役を買って出てくださいました。とても親切な方です💗 ヴェルディ劇場前の大きな看板前で先ずは記念写真を一枚。

Bin Liさんが撮ってくださった一枚。私が手に提げているのが第44回映画祭の記念トートバッグ。思い出の品なので、今はミュージアム内に飾っています。

会場に入ったら、背の高い男性が待っていてくださいました。Micheleさん。2022年パテ・ベビー誕生100年を記念して、欧州の非営利機関“INEDITS”が世界中のアーカイブに協力を求めてパテ・ベビーの機材が映り込んでいるホームムービーを集め『91/2㎜』を製作されました。最初に上映されたのはボローニャの復元映画祭なのだろうと思います。その時の音源を用いた映像を翌年京都国際映画祭で「パテ・ベビー渡来100年」ということで上映しました。

窓口の一人で大変お世話になったアンナ・ブリッグスさんが、私たちのポルデノーネ行きを知って、ディレクターのMircoさんに連絡がいき、共同ディレクターのMicheleさんに連絡がいきました。今頃彼から受け取ったメールを読み返していて気付いたのですが、イタリアには国立のホームムービー専門アーカイブ“ Archivio Nazionale del Film di Famiglia”があるのですね。Cineteca di Bolognaのエレナ・タマッカーロさんと話をしていても感じたことですが、イタリアは本当に映像を大切に守ろうとしていて、その姿勢が素晴らしい国だなぁと思います。

映画祭初日の4日16時45分からのプログラム「再発見のホームムービー」で上映された「アルバイン・コロニー」(イタリア1924-1929年、エミリオ・ガロが撮影した作品)は、Micheleさんたちのところでアーカイブされた作品なのかもしれません。そうと知っていたらギリギリでも観ることができたかもしれず、残念に思います。自分のことで精いっぱいで予習をする時間がなかったことが悔やまれます。ともあれ、Micheleさんは私どもの紙フィルム上映をご覧になってからボローニャに戻られました。

その後Micheleさんに、上掲写真を添付してお会いできた喜びを伝えましたら「紙フィルムの上映は素晴らしく、魔法のようでした。映画祭を楽しんでいただけて嬉しいですし、お会いできたことも嬉しかったです。次回はぜひボローニャに来てくださいね。Mircoより大きなハグを贈ります」と返事が届きました。確かに大きなハグを受け取り、また一つネットワークが広がったことが嬉しいです。アンナ・ブリックスさん、繋いで下さってありがとうございました‼

5日最初のプログラムはグリフィスの1908年の3作品をJohn Sweeneyさんのピアノ演奏付きで上映。10時、11時45分からの上映後にはBin Liさんの案内でピザがおいしいレストランへ。この日は日曜日で、大概の店が閉まっていて、辛うじて開いていたこのレストランもほとんどのお客様は映画祭のお客様でした。

注文したピザは、とてつもなく大きい。よくわかっていなくて、端から全部平らげるものだと思って食べ始めたピザは、食べても食べてもあるので、残りを箱に入れて持ち帰りました。ホテルの1階に朝食バイキングがあり、それ込みでの招待だったのだとわかったのは、もっと後の話。でこれらは6日の朝にいただきました。冷めてもおいしいイタリアのピザでした。

そして午後2時過ぎ、会場に着くとロチェスター大学のジョアン・ベルナルディ教授から「(プロジェクトリーダーの)エリック・ファデン教授が探しておられる」との連絡が入り、キョロキョロ。無事に上映前に、エリック先生と再会できました。今日までの準備、さぞかし大変だったでしょう、ありがとうございました。

facebookで以前から繋がっているValerio Grecoさんが5日撮影記録された私どもに関する写真の数々を16日に送っていただきました。その中から、幾枚かを選んで紹介して、当日の雰囲気を感じていただければ嬉しいです。

Valerioさんは、ボローニャ復元映画祭やポルデノーネ無声映画祭の公式記録係として写真撮影を担当。実際にお会いするとまだお若い方ですが、その腕の確かさは観る人を魅了します。

会場で約束通りおもちゃ映画ミュージアムのTシャツを着たお二人とヴェルディ劇場で再会できました。ポルトガルのリスボン出身で世界中にお友達がおられるPedro Lãさんと、背が高いベルギー王立シネマテークで活躍しておられるChristophe Piette さん。スケジュールさえ合えば、ここに映画監督のRoberto Priamo Sechiさんもおられるはずだったのですが、奥様の誕生祝いで参加できず。でも来春には再度日本に来てくださる計画らしく、その時を楽しみに待っていましょう。

今日、Valerioさんはメールで「私は何年も前からToyfilm Museumの素晴らしい活動を拝見しており、特にPedro Lãさんを通じて貴館のアーカイブを知って以来、ずっと感銘を受けております。 日本を訪れることは十年来の夢であり、いつか同じ志を持つ多くの同僚や友人、そしてもちろん貴館の皆様とお会いできる日を心待ちにしています」と嬉しい言葉を綴ってくださいました。

Binさんも、Pedroさんも、Christopheさんも、この映画祭に集う人々は期間中ずっと朝から真夜中まで無声映画漬けのようです。ジョアンさんも同じで、毎年この映画祭でのみお会いするアメリカの大学の先生と一緒に今年は指定席をGETして楽しんでおられました。映画を見る楽しみだけでなく、この映画祭会場で年に一度再会することが何よりも楽しみなのでしょう。

紙フィルム上映会は特別プログラムということで、3階までの席はすっかり埋まっていました。実は昨日ニューヨーク市立大学で映画の授業をされている鈴木繁教授(マンガ研究)が来館されておしゃべりしていたのですが、日本映画、活弁文化に対する関心が高まっているようです。紙フィルムへの関心もその一端かもしれませんが、この眺めは大変に嬉しいものでした。今回の上映では、1933年ごろから38年にかけてつくられたアニメーション、ドキュメンタリー、時代劇等を、箏とチェロの生演奏だけでなく、レコードトーキーのバージョンでもご覧いただきました。

最初に映画祭ディレクターJay Weissbergさんが、舞台で、この紙フィルムについて説明をして、この上映会のために京都から私どもが参加していることを紹介して下さいました。全く忝いことです。

そして照明が落とされ、大きなスクリーンにエリック先生特別編集の紙フィルム作品集上映が始まりました。

冒頭に「この上映会はおもちゃ映画ミュージアムに捧げます」と映し出されました。エリック先生が紙フィルムと出会われたきっかけが当館だったことによるのでしょうが、晴れの舞台で、このように表現してくださったご配慮に感動し、改めて感謝の思いを深くしました。この写真を美しく写真で撮ってくださったValerio Grecoさんにもお礼のメールを送りました。自分では「あらっ‼」と思って見た一瞬だったのですから。エリック先生が掲げてくださったこの思いやりの言葉を皆さんと共有したいと思います💖

1932年に東京のレフシーが特許を申請して誕生した紙フィルムは、1938年戦時統制によって製造中止になり、戦後も復活することなく姿を消した日本独自のメディアです。最初の作品は『嵐の夜 フランドル童話』。後発組で、可愛い鳥がシンボルマークの家庭トーキーの作品。パーフォレーションが2つあります。

オーケストラボックスで演奏してくださったDuo 夢乃の木村怜香能さん(箏)と玉木光さん(チェロ)。紙フィルムの世界にこのお二人の演奏、楽器の音色はぴったりでした。

3階からの眺め。オーケストラボックスで演奏されているお二人の様子も小さく見えますね。この『のらくろ軽気球の巻』は松本夏樹さん所蔵。パーフォレーションが1つ、レフシーの作品。のらくろの面白さは世界共通で、笑い声が上がっていました。

大阪の家庭トーキーから販売された『特急忠臣蔵』はレコードトーキーでお楽しみ頂きました。昔の活弁士さんの話し方や声のトーンなど、海外の皆様はどのように聞き取られたことでしょう。当時すでにカラー印刷はできましたので、動く色のついたマンガが、家庭で楽しめました。

劇場の外にプロジェクションマッピングされていたうちの一枚なので、「あぁ、この作品か!」と興味を持たれたお客様も多かったでしょう。当館所蔵の『汽車の旅』。カタログには、アニメーション作者名に「Masaki Tozo」とあります。紙フィルムに書いてあったのでしょうけど、よくわかりません。デジタル化されたことで、これからいろんなことが分かってくるのでしょう。

紙フィルムで時代劇も販売されていました。モノクロフィルムの時代なので、紙フィルムもモノクロのまま。

レコードトーキーの『動物オリンピック』は、活弁士さんが、様々な動物の鳴き声を真似しながら語りを進めていくのが面白く、笑い声があちことで沸き起こりました。

松本夏樹さん所蔵『スキー』(1933年)は先ほどの時代劇と同じようにモノクロフィルムで撮影されているので、紙フィルムもモノクロ。こうして見ると、いろんなジャンルの作品が紙フィルムで作られていたことが分かります。

これは草原真知子先生所蔵の一作品で、レフシーから販売された『かっぱ踊り』。2023年6月に初めてこの紙フィルムを上映した時に、草原先生は「当時流行していた東京音頭のレコードに合わせて楽しんでご覧になっていたものかもしれない」と仰っていました。この曲は今もよく耳にする曲ですが、つくられたのは1932年。人気にあやかって紙フィルムもつくられたのかもしれないと私も思います。草原先生と一緒にポルデノーネの映画祭で鑑賞したかったなぁという思いで胸がいっぱいになりました。

ジェイさんからの提案で、エリック先生、Duo夢乃のお二人と一緒に私どもも舞台に上がらせていただき、満員の聴衆の皆様に深くお礼のお辞儀をさせていただきました。まるで夢のような光景で、帰国して9日経った今でも、これを書きながらフワフワした感覚でいます。多くの関係者の皆様のおかげで貴重な体験ができました。

ずっと直接ご挨拶したいと思っていたディレクターのジェイ・ワイスバーグさんとお話することができました。この写真も思い出の一枚になるとValerio Grecoさんにお礼のメールを送りました。私たちの間に写っているのは指揮者で作曲家、バイオリンとピアノの演奏家ギュンター・ブーフヴァルトさん。「とても良いプログラムだった」と絶賛してくださいました。今、図録で数えてみたら、30作品、77分18秒のプログラムでした。様々な表現による紙フィルムの世界を世界中の映画研究者、映画愛好家、アーキビストの皆さんにご覧いただく機会を得て、本当に良かったです。

夕ご飯は、Christophe Piette さんがお友達のGary Carrelさん、そしてBin Liさんと私たちで一緒にレストランへ。最初に飲んだビールがおいしかったです。とにかく円安が凄まじく進んでいるので、円に換算すると恐ろしい金額に。とはいえ再会が嬉しいのでクリストファーさんのご厚意に甘えて、みんなでごちそうになりました。日曜で空いている店が少なかったので、昼と同じ店だったかもしれませんが、イタリアのピザはきっと毎日食べても飽きない美味しさなんだろうと思います。

クリストフさんと初めてお会した5月のことは、こちらで書いています。その時、手に提げておられたトートバッグにプリントされていたのが、ブリュッセル生まれのシャンタル・アケルトマン監督。後になって、この女性監督を研究している大阪大学の院生さんがおられることが分かりましたので、いつの日か、その学生さんが当館で研究発表できるように協力して欲しいと依頼し、頷いてもらいました。来年あたり実現すると良いでね。そして今回知り合うことができたゲイリーさんは「来年日本に行くから」と仰っていましたので、今から再会が楽しみです。

映画祭が縁で人の輪が一層広がりました。この後チャップリンコネクションを観たような気もするのですが、ビールを飲んだせいか記憶がおぼろで💦気持ちの良い夜風に吹かれながら、それぞれの宿に帰りました。6日は映画を一休みしてべネツィア観光へ。デュオ夢乃さんは6日7日とベネツィア観光を楽しまれるそうで、見学予約をされて準備万端だと聞いて、 (。•́︿•̀。)の心境。またもや事前学習一切していないぶっつけ本番旅。

ポルデノーネ2日目の夢のような一日が、こうして過ぎていきました。

【10月22日追記】

Bin Liさんから、ヴェルディ劇場壁面に当館所蔵紙フィルム『汽車の旅』が投影されてる動画が届きました💖

 

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