2017.10.19column
今週土曜と日曜に京都の花街をテーマにした研究発表と関連上映会をします。
今日の京都新聞「情報ワイド』面に、これから開催する研究発表会2つについてお知らせ記事を掲載していただきました。
最初に掲載していただいた中原逸郎さんの「外モノの支えた京都花街の芸」のタイトルを見ながら、12日に開幕し、15日に閉幕したばかりの京都国際映画祭2017のオープニングセレモニーでの祇園甲部の芸妓さんたちの「手打ち」の素敵な伝統芸能披露を思い出しています。拍子木を打ち鳴らしながら一列になって南能舞台に進み、そこで慶事の時しか披露しない「手打ち」を艶やかに披露して下さいました。昨年も同様にありましたが、今年披露されたのは、「七福神」「花づくし」の2曲。
おそらくオープニングパーティーとクロージングパーティ―でも甲部の皆さんによる芸が妓楼されたのではないかと思うのですが、両方とも遅刻したので未確認。その代わりというのも変ですが、クロージングパーティ―で出会ったとても美しい舞妓さん「実佳子」さんを紹介。
「G9+1プロジェクト」の紅一点、一色あづる先生が、この美しい舞妓の実佳子さんの口元について質問されたことから好奇心ムクムク。これが「お歯黒」なのだそうです。舞妓さんから芸妓になる最後の2週間、このお歯黒をして、先笄（さっこう）という髪型で過ごすのだとか。赤襟の舞妓さんから白襟の芸妓さんに変身する「襟替え」に至る貴重なタイミングに出会えました。
この写真の舞妓・小衿さんとは、どこか大人っぽさが違いますね。なりたての舞妓さんは「われしのぶ」という髪型で下唇だけに赤を挿します。1年ぐらい経つと「おふく」という少し地味な髪型になり、上唇にも紅を挿します。
これが先笄（さっこう）と呼ばれる髪型。衿替えでは置屋のおかあさんやお姉さんが髪に鋏を入れるのだそうです。
この舞妓さんから芸妓さんに変わる期間中は、置屋さんの宝物である本鼈甲の簪を挿し、お歯黒をして過ごします。武家の若奥さまの格好で過ごすのだそうです。昔は蝋燭に黒い色を混ぜてライターで溶かして歯を塗っていたそうですが、聞いているだけで「うぇっ」となりますね。お歯黒をしていると温かいものも飲めないそうです。彼女たちは2週間の辛抱ですが、江戸時代の武家の奥様は、ずっとですから、想像するだけで大変ですね。
これが、だらりの帯。21日に16㎜フィルムで上映する「祇園小唄第1話舞の袖」（1930年、金森万象監督、マキノ・プロダクション）の歌詞にこの言葉が出てきます。
１． 月はおぼろに東山
霞（かす）む夜毎のかがり火に夢もいざよう紅桜
しのぶ思いを振り袖に
祇園恋しや だらりの帯よ
２． 夏は河原の夕涼み
白い襟あしぼんぼりに
かくす涙の口紅も
燃えて身をやく大文字
祇園恋しや だらりの帯よ
３． 鴨の河原の水やせて
咽（むせ）ぶ瀬音に鐘の声
枯れた柳に秋風が
泣くよ今宵も夜もすがら
祇園恋しや だらりの帯よ
４． 雪はしとしとまる窓に
つもる逢うせの差向い
灯影つめたく小夜ふけて
もやい枕に川千鳥
祇園恋しや だらりの帯よ
若い人はご存知ないかもしれませんが、ある年齢以上の人なら思わず口ずさんでしまうほど良く知られた名曲です。作詞は長田幹彦、作曲は戦前のシュールなアニメ―ションでご存知の人も多い『茶目子の一日』の作者・佐々紅花（さっさこうか）。京都祇園新地、甲部歌舞伎会、有名な祇園屈指の老舗「一力』などが協力した作品です。
また、22日の上七軒についての参考上映では「きぬよのみせ出し」という興味深い映像もあります。仕込み期間中の初々しい「おちょぼ」さんが、舞のお師匠さんに認められて舞妓になる準備が整えば、いよいよデビュー。それが「見世出し」です。祇園甲部と上七軒では、同じ京都の花街でも、いろいろしきたりに違いがあるのかもしれません。21日は祇園甲部と関わりの深い作家・吉井勇に注目して、22日は上七軒と関わりの深い映画監督・石田民三に注目して、研究発表していただきます。
各日13時半と15時の2回開催しますが、内容は同じです。ご都合のよい時間を選択してお運びください。席に余裕がございますので、当日参加も可です。
皆さまのお越しをお待ちしております。