おもちゃ映画ミュージアム
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Toy Film Museum

2018.10.09column

台風25号をはねのけて「渡辺泰トークイベント」、広範囲からのお客様で大盛会‼

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9月9日「木村白山って、何者?」の予定外の出来事から始まり、大型台風24号の接近で当初9月30日の「渡辺泰トークイベント」を急遽10月6日に延期にし、その6日にはまたもや大型台風25号接近と、心配し続けた渡辺先生がらみの催しは、主催の私共だけでなく、お客様も一緒になって「開催できるか否か」と随分気を揉みました。前日には、主役の渡辺先生に「テルテル坊主さんを下げて好天を祈ってくださいね。でないと中止になります」とお願いまでしました。もちろん私もテルテル坊主さんを下げて祈りました。お利口なテルテル坊主さんは私たちの願いを聞き届けてくれて、台風の進路がややそれ、おかげ様で無事開催することができ、心底安堵しました。

北は宮城県から、南は佐賀県から、埼玉県や東京都など関東から、兵庫県、大阪府、滋賀県、京都府からと関西各地からも足元の悪い中、たくさんの方々がお集まりくださって、賑やかでした。最年少は高校2年生の将来が楽しみなアニメーション研究者、最年長はもちろん主役の渡辺先生で84歳。今回は日本アニメーション学会西日本支部例会としても参加を呼びかけてくださったこともあり、その多くは多かれ少なかれ、渡辺先生から資料提供などの恩恵を受けておられた方々ではなかったかと思います。

企画者たちが作成して掲示している先生のプロフィールをここに掲載させていただきます。

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当館での展覧会も残り5日間となってしまいました。今はこれまでの活動資料に加え、後期展として初期東映動画の資料も展示しています。

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6日は佐野明子・桃山学院大学准教授(右端)とフリーク北波さん(赤い帽子)が聞き手となって進行して下さいました。本来ならもう一人森下豊美さんも聞き役でしたが、所用のため欠席となりました。今回の展示とトークイベントにつきましては、3人の方に大変尽力していただきました。

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 先生は、連れ合いが初めて描いた似顔絵を「一番嬉しかった。僕も描くのだが、太田さんも描くとは知らなかった」とわざわざ紹介して下さり恐縮しましたが、先生の手によって描かれた1971年10月8日大阪市立中央生年センターでのイルジ・トルンカ作品『バヤヤ王子』、1977年11月12日、電子会館でAFG(旧KAC)アニメ・フィルムの会で、担当して描かれた『BETTY BOOP特集上映』、そして、高畑勲演出・東映動画製作『太陽の王子 ホルスの大冒険』の3枚の大きなポスターは、ひときわ目を惹く出来栄えです。ぜひ、実物をご覧いただきたいです。

「『太陽の王子 ホルスの大冒険』完成にあたって…」という小冊子も展示していますが、2016年11月6日同志社大学寒梅館で「ユーリー・ノルシュテイン×高畑勲公開トーク」が開催された折り、先生が持参されてお見せしたところ「一挙に50年前に連れ戻されました。高畑勲」とコメントを表紙に記されました。この小冊子も展示しております。惜しくも高畑監督は、今年4月5日に逝去されました。生前の手形も展示しています。

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先生が子どもの頃のお正月三が日には、大阪の朝日会館で上映されるアニメーション映画を観るのが恒例となっていて、「自伝によれば手塚治虫さんの家も同様だったから、ひょっとしたら、子どもの頃に手塚さんとここで出会っていたかもしれない」と先生。そういった原体験がお二人の将来に影響を与えたのでしょう。

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子どもの頃の映画との出会いに続き、戦前・戦中、そして戦後のアニメーションとその研究活動についてたくさんお話くださいましたが、ご自分の生きて来られた日々が、そのまま日本でのアニメーション映画史と重なるので、その明瞭な記憶とともに語られる内容は大変貴重な証言となりました。会場の幾人もの人から「今日の話を文章化して欲しい。ぜひ、先生の自伝を書いて貰いたい」という希望が寄せられました。文章化は、どういう形になるかわかりませんが考えてみたいと思いますし、自伝につきましては、先生に要望をお伝えしました。

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今もアニメーション史の底本となっている『日本アニメーション映画史』(1977年)には、先生の希望で実現した手塚治虫さんの序文が載っています。

「この本は、驚異的な企画だ。わたしたちが知りたかったあらゆる分野の記載はおろか、作品の詳しい資料―スタッフや長さや、内容の紹介―まで調査して載せているのだから、これはもう、歴史的な作業である。編者のひとり渡辺さんは、以前から高度な見識を持ったアニメファンと拝察していたが、この人にして、はじめてこの大企画が完成し得たといっていい」

と絶賛されています。この文章は4百字詰め原稿用紙2枚に鉛筆で手書きされていて、後にサインも加筆され、先生にとって貴重なコレクションの一つです。手塚さんが、どのような文字を書かれるのかも、ぜひご覧いただければと思います。

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14時から開始したトークイベントは熱を帯びて予定をオーバーして17時に一応終え、恒例の記念写真を撮りました。この後は交流会。ほとんどの方が参加して下さり、それぞれの自己紹介から始まって、21時頃まで賑やかな交流の花を咲かせました。当団体理事でイラストレーターの西岡りきさん手作りの「コブラ―」(映画『ボビー』『おとなのケンカ』に出てくるケーキ)と「キャロットケーキ」(映画『ゲットアウト』『フルートベール駅で』に出てくるケーキ)の差し入れもあって、私どもが最も大切にしている交流会が豊かなものになりました。皆さま、ご多忙の中、本当にありがとうございました‼

DSC06645 - コピー (2)「前の日はゆっくり見られなかったから」と翌日もお越しくださったアニメーション研究家の五味洋子さん。遠く福岡県からです。展覧会に際し、ビデオメッセージもいただきました。1967年に全国主要都市でアニメーション研究や上映を行うグループが結成されましたが(前述のAFG<旧KAC>もその一つ)、東京で結成されたのが、通称「アニドウ」。今回多数展示している『FILM1/24』は、そのア二ドウから出版された国内最初期のアニメーション批評誌で、五味さん(旧姓・富沢)はそれの編集を担当されていました。渡辺先生も多数寄稿されていたこともあり、旧知の間柄。

ビデオメッセージには、他に日本アニメ―ション協会会長の古川タクさん、元アニメーション学会会長で日本大学心理学部教授の横田正夫さん、同元副会長で大阪芸術大学芸術学部教授の遠藤賢治さん、アニメーション研究者で東京藝術大学グローバルサポートセンター特任准教授のイラン・グェンさんの5人からお祝いメッセージをいただきました。ここに深く御礼を申し上げます。

11~14日に京都市内各所で「映画もアートもその他も全部」を謳う「京都国際映画祭2018」が繰り広げられます。その見聞の足を延ばして、ぜひ「渡辺泰展」もご覧いただければ幸いに存じます。どうぞ、よろしくお願いいたします‼

 

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