おもちゃ映画ミュージアム
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2019.06.14column

『映画探偵:失われた戦前日本映画を捜して』著者、高槻真樹さんから届いた8日のルポ

『映画探偵:失われた戦前日本映画を捜して』(2015年11月、河出書店新社)の著者、高槻真樹さんから、8日に開催した長谷憲一郎さんの研究報告「新資料発見‼稲畑勝太郎がリュミエール兄弟に宛てた書簡4通について」を聴講してのルポルタージュが届きました。当団体正会員としていつも温かく応援して下さっていますので、スタッフブログのコーナーで紹介させていただきます。では、早速どうぞ‼

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長谷さんの研究の意義   高槻 真樹

 このたび2回にわたって研究発表を行っている長谷憲一郎さんなのですが、私たち日本映画史に携わるものにとっては、信じられないような大発見を次々と成し遂げている、まさにアーサー王級の伝説のスーパーヒーローです。

 9日に開かれた第一回目の講演には、日本映画研究の錚々たる面々がすらりと揃いました。彼らが誰も成し得なかった「大発見」。それは、日本への映画輸入第一号の称号を勝ち得た稲畑勝太郎がリュミエール兄弟へ宛てた、同時代の書簡の写しでした。その生々しい肉声から、今まで謎とされてきた多くのことが明らかになったのです。たくさんのライバルに手を焼いていたこと、対抗措置をとってなんとか撃退しようとしたこと。莫大な権利金を払って独占契約を結んだはずなのに、横浜で別の業者が興業を始めたこと。稲畑の慌て振りから、どうやら横浜の業者が扱っていたのはシネマトグラフではなく、その類似品である可能性が高まった模様です。これまでは両者が事業提携をしていたのではという憶測すらあったのですが、それが間違いであったことがわかりました。

 実は日本映画史は分からないことだらけ。それはそうでしょう。残っている戦前のフィルムは10%足らずなのですから。残念ながら日本にはアンリ・ラングロワはいませんでした。従って、多くのフィルムは失われ、かつて見た評論家の、公平かどうかもよくわからない論評を足場に研究を進めざるを得ません。かつて田中純一郎という映画研究者がいました。彼は誰よりも早く映画史研究の大切さに気付き、まだ創生期の映画人が存命だった時代に調査を開始、5巻本から成る大著『日本映画発達史』を刊行しました。この業績は、特筆に値するものです。

 ただ、思い出話は不正確になりがちです。特に映画の世界と手を切って長い時間が経っていた稲畑の場合、あやふやだったり明らかに間違いだったりする情報がいくつも混じっていました。ですが、長谷さんが発見した書簡からは、不透明だった要素が一掃され、くっきりと事実が浮かび上がりました。稲畑がシネマトグラフを扱っていた時代、その当時の情報は、それほど生々しいものだったのです。

 私も含めて誰もが思いました。自分でこれを発見できたら、どんなにうれしかったろうかと。ですが、長谷さんの見つけた情報は、新しい発見に繋がっていくはずです。まだ私たちにもチャンスはあるのです。当日の熱気は、大変なものでした。やはりそうなのです。誰もが日々、大発見を夢見て、映画史と取り組んでいるのです。

 体験できなかった方は実に残念。しかし、この講座は、今週末に二回目があります。稲畑勝太郎から映画事業を引き継いだ横田永之助。後に日活の社長にもなる、大事業家。ちょっと山師でもありますが。長谷さんはなんとこちらでもすごい発見をしてしまいました。動き喋る横田永之助のトーキーフィルム。まさかそんなものがあるとどうして思うでしょうか。横田永之助は俳優ではありません。まだフィルムが高価で貴重だった時代、社長とはいえ、姿が記録されることは大変まれでした。

 日本映画史にはかならず登場する横田永之助ではありますが、どんなしゃべり方をしたのでしょうか。どれぐらいの背丈だったのでしょうか。16日においでいただければ、それを知ることができます。

 当日は、終演後も、関係者を交えた交流会で、長く熱い議論が繰り広げられるはずです。日本映画史が書き換えられる瞬間を目撃したい方はぜひおいでください。できれば酒瓶を一本携えて。

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9日付け京都民報と13日付け朝日新聞にお知らせを掲載していただきました。高槻さん、記者さん、8日の催しに参加して下さった皆さま、本当にありがとうございました!!!

そして、15日のご参加を思案しておられる方も、高槻さんのルポをお読みになって、ぜひお仲間になってください。会場でお会いできますことを楽しみにしています!!!!!

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