おもちゃ映画ミュージアム
おもちゃ映画ミュージアム
Toy Film Museum

2019.08.28column

夭折の天才映画監督を偲び、「山中会」が建立した「山中貞雄之碑」を拓本軸装しました‼

 

DSC00955

8月8日に完成したばかりの、綜藝社(京都市上京区)の藪田夏秋さんに作っていただいた「山中貞雄之碑」拓本の軸です。来月17日、数々の名作時代劇を生み出し、多大な影響を与えながらも、日中戦争に召集され、1938年9月17日午前7時、満28歳の若さで戦病死した山中貞雄監督の命日がやってきます。

1941(昭和16)年6月、「山中貞雄の精神をわれら友人の映画的生活の上に顕揚して行こう」という親睦団体「山中会」が結成され、9月17日、山中家の菩提寺である京都市上京区の大雄寺(だいおうじ)境内に「山中貞雄之碑」が建立されました。甥の映画監督加藤 泰『映画監督 山中貞雄』(1985年、キネマ旬報社)や千葉伸夫編『監督山中貞雄』(1998年、実業之日本社)によれば、碑文は山中の友人たちが推敲し(小津家の記録では当時のキネマ旬報社社長田中三郎撰文とある)、親友の小津安二郎監督が書きました。以下に碑文を書き出してみました。

  山中貞雄之碑

 山中貞雄死を聖戦の大義に奉り忠魂永へに靖国の社に招かる。山中貞雄を芸能の大道に致し鬼雄千載映画の史乗に耀かん。君ハ明治四十二年十一月七日京都市五條本町に喜左衛門氏五男として生る。学業を京都一商に卒へるや性来信愛措かざりし映画の道に志を得べくマキノ撮影所に入り脚色及び監督助手の任に精勵す。後、寛寿郎映画に転じ始めて宿志を延べ監督として處女作「抱寝の長脇差」を作り才幹の凡ならざるを示す。二十三歳の秋なり。爾後作品を重ぬる毎に天稟愈々冴え鏤刻益々凝って克く時代劇映画の藝域を伸展し請われて日活京都撮影所に移るや「盤嶽の一生」「國定忠治」「街の入墨者」「河内山宗俊」等幾多の名作を世に問ふ、その匠意の逞しさ、格致の美しさ、洵に本邦藝能文化史上の亀鑑として朽ちざるべし。昭和十二年春東宝東京撮影所に迎へられ、氣を負ふて「人情紙風船」の作を成すや幾千もなくして日支事変勃発し、名誉ある公務に應じ陸軍歩兵として出征、支那各地に轉戦すること一歳餘り遂に徐州の野に陣歿、曹長に進級す、享年三十歳、昭和十三年九月十七日なり。君生得一途映画道に精進し、映画の中に師弟知友を視、愛すべき特偉の風格掬すべき純撲の性情、傾けて之盡く映画に親昵しさり。茲に友人有志相寄りてその至情に酬ひ興亜聖業の礎石たる君が勲功を顯彰し、その菩提を弔ひ訪る者に然く語るなり。

  皇紀二千六百年建立

評論家の岸 松雄によれば、小津安二郎は「山中ほどの仕事をしても、それが僅か六百字内外に詰められてしまうかとおもうと寂しいな。しかし、俺たちが死んだってこんな碑は建ちっこないんだから、まあそう考えれば幸福な奴さ」と話したそうです。

昨年9月17日「山中貞雄を偲ぶ会」開催前にお立ち寄りいただいた北海道の方に「大雄寺の碑文を拓本できないかしら?」と話したところ、法要の折りご住職にお伝えくださり、「どうぞ」ということに。その後、知人を介して藪田さんを紹介していただき、立派な軸が完成しました‼

DSC00175 - コピー

6月9日9時過ぎから拓本とりが始まりました。右が藪田さん、中央がご子息、左がお弟子さん。大きな碑文なので3人がかり。 

DSC00184 (2)

以前、私が主宰していた会で、知人を講師に拓本体験を催したことがありますが、本職の、それもその道で著名な藪田さんにしていただけるなんて、とっても貴重な機会。というわけで、ミュージアム開館前に見学させて貰いました。

DSC00193

 霧吹きで水を吹きかけながら、柔らかい刷毛で貼り付けていきます。

IMG_0826 - コピー

まず最初に、外枠を別とり。

IMG_0827 - コピー

外枠の和紙を、 

IMG_0832 - コピー

そろり、そろりと注意深くはがします。

IMG_0838 - コピー

 次は、本文どり。外枠の時も同様な手順ですが、霧吹きで水を吹き付け、柔らかい刷毛で貼り付けていきます。

IMG_0840 - コピー

そして、小さく折りたたんだ乾いたタオルを碑面に直角になるようにあてて、押さえていきます。彫った文字等の窪みに紙がめり込むと共に、水分を取りかたく密着することができます。

IMG_0841 - コピー

IMG_0842 - コピー

そして、こういった刷毛も用いながら、密着させて

IMG_0846 - コピー

紙が生乾きになったら、丸いタンポに墨を付けて、もう一つのタンポで擦り合わせ、充分に墨をならしてから、碑面に直角に打ち込んでいきます。ここまで見たところで、ランドルフ・メーコン大学から見学に来てくださったジム・ドーリング教授らを出迎えにミュージアムへ戻りました。

この後、ムラなく墨を打ち込んだら、注意深く紙を剥がして、拓本終了。せっかくなので豪華な軸装にしたいところですが、我が家に余裕がないことから簡易なものでお願いしました。でも、思いを受け止めてくださったようで、充分に素敵な軸装に仕上げてくださいました。

DSC00867

DSC00871

8日納入の記念写真。 一年越しの思いが叶えられました。この軸は9月25日~11月10日開催する「山中貞雄生誕110年記念展示」で披露しますので、どうぞ見にいらしてください。イベントのご案内は「新着情報」のコーナで。

 

記事検索

最新記事

カテゴリー

月別一覧