おもちゃ映画ミュージアム
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Toy Film Museum

2019.09.04column

素晴らしかった「おもちゃ映画の夕べ」‼

ICOM 2019.9A - コピー「夕べの『おもちゃ映画の夕べ』がとっても面白かったから、感想を言おうと思って」と電話がかかってきました。初めて活弁と生演奏付きで無声映画の上映をご覧になった「七条大橋をキレイにする会」事務局長・井上茂樹さんからでした。こういったマメな姿勢が皆さんの心を動かし、活発な地域活動展開に結びつくのだなぁと感心しながら電話を聞きました。

弁士のことに大変興味を持たれたようで、「楽しかった!また、やるなら見に行く」と仰いましたので、活弁士大森くみこさんとピアニスト天宮遙さんが毎月神戸でやっておられる活弁ライブや、28日十三のシアターセブンで「井上陽一活動弁士40周年記念」上映があることなどをご案内し、さらに10月半ばの京都国際映画祭を紹介しました。本当なら、うちでも毎月やれたら良いのですが。。。

ICOM京都大会に参加いただく国内外の方に、日本の活弁付き無声映画上映の面白さを知って貰おうと早々と計画したのですが、結局通訳ボランティアの船渡麻衣さんの出番が無いままに終わりました。インターンシップ生2名にも良い経験だからと見て貰いました。3人は10代と20代。初めて活弁上映を見て、「大変面白かった」と言ってくれました。若い人に知ってもらい、面白がってもらえることが、これからの無声映画の裾野を広げることに一番大切なことだと思っています。

ICOMの参加者は、夕べは世界遺産二条城の二の丸御殿夜間特別公開のソーシャルイベントに参加されたよう。惜しかったのですが、それは横に置いといて、大勢の無声映画ファン、大森さんと天宮さんのファンの方が次々お越しくださって、ご覧の盛況ぶりで開催することができました。ご参加いただいた皆様、本当にありがとうございました。

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恒例の集合写真。皆さんとっても笑顔が素敵でしょう。それもそのはず、とっても充実した上映会で、それぞれが大満足の表情。活弁と生演奏で楽しむ無声映画の醍醐味を充分に味わってもらうことができました。大森さんの話芸は、益々磨きがかかり素晴らしく上手いです。台本が創意工夫に満ちていて面白いですし、よく勉強されていることもわかります。声もおじいさんから可愛らしい少女まで様々に演じ分けられて、巧みです。

司会進行は大森さんにお願いしました。最初におもちゃ映画の中からアニメーション「砂煙高田の馬場」「正ちゃんの動物地獄」「茶目子の一日」などをいくつかまとめてご覧いただきました。「とても短いので、瞬き厳禁で」とトークも交えながら。昭和一桁ぐらいに作られた日本のアニメーションは発想がユニークで、何度見ても面白いです。今時のデジタルで綺麗に描かれたアニメーションとは異なる味わいがあります。

そして、本編の『微笑みの女王』(Grapevine Videoでの上映)。原題は『Ella Ciders』。1926年、日本で言えば昭和元年に作られた「現代版シンデレラ」。Ellaは主人公の本名でcinderは灰。シンデレラは灰かぶりのエラの意味なんですね。で、この作品は逆読みして『Ella Ciders』。

大森さんの解説によると、見どころは二つあって、①第4のコメディ俳優ハリー・ランクドン(1884-1944)が途中友情出演している。不勉強でハリー・ランクドンの名前を初めて知りました。ロスコー・アーバックルが事件に巻き込まれて退いた後に登場したそうですが、以前チャーリー・チェイスの主演映画の断片『WHY MEN WORK』が見つかった時、「近年世界四大喜劇王との評価が高まる」と新聞で紹介して貰ったのですが、ハリー・ランクドンも第4のと形容されていることから、その当時人気があった喜劇俳優が幾人もいて、しのぎを削っていたのでしょう。②当時のサイレント映画撮影所の様子、舞台裏が見えて、どんな風に撮影していたのかが分かる。確かにこの部分面白かったです。もっと面白かったのは、コリン・ムーアが目をあっちこっちに向けるシーン。凄技!と思ったら、撮影秘密がありました。

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主役のコリン・ムーアについても、不勉強でその名前を今回初めて知りました。当時のファースト・ナショナル・ピクチャーズ社では、一番ギャラが高い大女優さんだったそうです。シリアスな作品やコメディ作品にも出ています。当時フラッパー・ガール、日本流に言えばモダンガールで、アイドル的な存在。おかっぱヘアがとても可愛いです。トーキー時代になり、人気が陰った後は、投資家になり、ドールハウスの世界的コレクターになったそうです。サイレントからトーキーへの移行期には、洋の東西を問わず苦労された有名俳優さんたちがおられたのです。

ネットで検索したら、どうやらシカゴ科学産業博物館に「コリン・ムーアの妖精の城 オリジナルの小さな家」が展示されているようです。「ドールハウスのコレクションを携え、子どもの慈善活動のための資金を集めるために国を巡回し」とあります。コリン・ムーアの活動は、この日東京から駆けつけてくださったシンデレラコレクター川田雅直さんの活動と重なるように思いました。川田さんも小児ガンと闘う子どもたちと家族のために、子どもホスピスの必要性を訴え、本業の傍ら、シンデレラコレクションを携えて各地でチャリティーイベントをなさっておられます。

映画は51分あり、上映前は長いように思っていましたが、いざ始まってみると大森さんの巧みな活弁に引き込まれ、映画の登場人物たちがスクリーンの中で話しているように感じられて、あっという間でした。天宮さんの即興演奏もいつもながら上手いです。決して映像の邪魔にならず、見る者を映像の世界に没入させてくれます。この日も終了後の映画祭の打ち合わせで、「大丈夫です、任せてください」と頼もしい言葉が聞けました。

思わず最後の挨拶で「今日の参加者の皆さんは得をしましたね。本当に良い映画上映会でした」と言うと、皆さん大きく首を縦に振っておられました。

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皆さんから、「良かった、楽しかった‼」という言葉をかけられ、達成感を味わっておられるお二人。

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活弁に夢中の岡住さん。以前お越しいただいたときに、おしゃべりしたことも契機になって、関西のみならず東京での活弁上映に熱心に通っておられます。同日2回公演も鑑賞されて、その都度のライブ感を楽しんでおられるとか。「今は活弁上映が面白いということを、できるだけ多くの人に知って貰いたいと思っています」と目を輝かせて話されました。他にも、可能な限りOSシネマズ神戸ハーバーランドでの活弁ライブに出かけているという方もおられました。

心強い応援団の言葉に、大いに励まされます。12月13日公開の周防正行監督の『カツベン!』もたくさんの人にご覧いただいて、無声映画、活弁上映が広く支持され、親しまれる文化になっていけば良いなぁと願っています。

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