おもちゃ映画ミュージアム
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Toy Film Museum

2020.08.02column

旭堂南陵さん、どうぞ安らかにお眠り下さい

前回は楽しい出会いの様子を書きましたが、31日に新聞を広げてびっくりしました。とても悲しい知らせです。講談師で、元参議員議員の旭堂南陵さんの訃報を目にしました。連れ合いよりほんの少し誕生日が後なので、まだ70歳。まだまだこれからの年齢ですのに、何ていうことかと、天を恨みました。

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 7月初めに膵臓癌がみつかり、1ヵ月も経たないうちに黄泉国へ旅立たれたなんて、惨すぎます。ヤフーニュースによれば、精密検査を受けた段階で肝臓にも転移が見られ、「ステージ4」の段階だったそうです。23日の国立劇場での公演に、入院先の病院から電話でリモート出演される前に、南陵さん自身が医師に余命を聞かれたそうで、その時医師は「月単位ではなく週単位で考えて」と返事したそうです。自分なら、とても怖くて聞けない。医師からの返事を受けての電話出演を、ご長男さんは「死を覚悟した最後の舞台でした」とお父様の心情を代弁しておられます。私はその公演を見に行けてませんが、その胸中の無念さに思いを致しています。謹んでご冥福をお祈り申し上げます。

 

昨年5月18日に開館満4年になるのを記念して、「覗いて、映して、楽しむモノたち展」を開催しました。「覗いて」に関して所蔵する映像で真っ先に思い浮かんだのは、講談師旭堂南陵さんが自ら発掘され、連れ合いが復元した『荒木伊賀越三十六番斬り』でした。

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その時のチラシ裏面です。「この作品を皆様にご覧頂くなら、活弁を付けて貰うのは南陵さん以外に考えられない」と思って、厚かましくも出演をお願いしたところ、「喜んで応援するよ」とおっしゃって下さって、特別イベントを実現することができました。もともと講談や浄瑠璃など日本の話芸は発達していましたから、無声映画が日本に入ってきたときも話芸に巧みな人々が、これに語りを付けて人々を楽しませていました。

南陵さんの語りは天下一品で、「さすが‼」の一言。その上、おまけで本業の講談『鼓ヶ滝』も上演してくださいました。その時の様子はこちらに書いています。今振り返り記事を読みながら、あの日の楽しく、充実した内容を思い出して、しみじみしています。

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手にしておられるのは、この特別イベントの1ヵ月前に出版されたばかりの本『事典にない大阪弁~増補改訂版 絶滅危惧種の大阪ことば』。この1ヵ月後の6月22日、大阪のシェラトン都ホテルで、この本の出版記念、古希の祝い、芸人生活50年の3つの慶事をお祝いする会が催されました。益々円熟味を発揮してご活躍いただけると誰もが思っていましたのに。こんな結末がくるなんて、無念です。

今朝、南陵さんを知る友人から「時間がないことを思い知らされます。ご冥福をお祈りいたします。お互い体力と相談しながら、残りの命を大切にしたいものです」とメールが届きました。私は頷きながら「毎日、今できることを一生懸命やるだけです」と返しました。明日のことは誰も分からないから、「今、ここで」できることに最善を尽くす、本当に、そう思っています。

旭堂南陵さん、お世話になりました。どうぞ安らかにお眠りください。合掌。

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