おもちゃ映画ミュージアム
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Toy Film Museum

2020.09.16column

盛会‼ 生演奏で観る「第4回パテ・ベビー上映会」

コガタ映画A - コピー

9月13日はサイレント映画ピアニスト柳下美恵さんをお招きして、当館所蔵の映像をご覧頂きました。今回も三密を防ぐため定員を15名に設定しましたので、心苦しくも、幾人もの方にお断りをせざるを得ませんでした。せっかく珍しい作品を揃えましたので、できることならもっと多くの方にもご覧いただければと思い、当日撮影した映像は、来る10月15~18日に開催される京都国際映画祭2020でオンライン無料配信することに。詳細は後日改めてご案内いたしますので、ぜひご覧下さい‼

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日本に於ける無声映画演奏者の草分け、柳下美恵さんです。9月5日広島での子ども対象の映画音楽ワークショップをした折りに、飛沫防止にマウスシールドをされたそうで、その体験を活かしてのライブ出演姿。

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今回の司会は連れ合い。頭にいろんなことが入っているので、解説も交えながら自然体で進行。今回ご覧頂くのは、チラシに掲載の『OTHELLO』『当世新世帯』『潜艇王』、そしてチラシに載せ忘れましたが、京博連デジタルパンフレットで既報していた『猛進ラリー』(原題『STOP ,LOOK AND LISTEN』)の4作品。いずれも開館後に寄贈していただいた中から見つかった貴重なフィルムばかりです。

『OTHELLO』『漕艇王』は長崎県の菅 典義様から寄贈いただいた中の作品です。『漕艇王』は勝山宏一様寄贈フィルムの中にもありました。『猛進ラリー』も勝山様寄贈でした。勝山様から他にも珍しいパテ・ベビーのフィルムを寄贈いただいていましたので、すっかり9.5ミリだと思い込んでいましたが、リストで確認したところ16ミリフィルムでした。『当世新世帯』は熊本の米田伊一郎様寄贈フィルムに含まれていました。皆様のご厚意のおかげで、こうしてお客様に広く楽しんで観ていただくことができます。改めて、心より御礼を申し上げます。

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最初に『漕艇王』(1927年、日活大将軍)。今年は内田吐夢監督の没後50年で、大阪九条のシネ・ヌーヴォーで7月25日~8月28日特集上映されました。数々の傑作を手掛けた巨匠内田吐夢(1898.4.26-1970 .8.7)監督は、作品の素晴らしさだけでなく、最初は俳優として活躍するほどの男前で人気があり、京都木屋町の名物女将おたかさんの店があった路地に「吐夢地蔵」がありました。今残っているのかどうか、また確認しに行かねばなりません。今も早慶レガッタが開催されている隅田川堤でロケーションされたスポーツ映画。

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漕艇王2 (2)TOY主役の廣瀬恒美が長身の美形。柔道、剣道、水泳に優れ「海のスポーツ俳優」として売り出して人気に。ヒロインは夏川静江。

続いて、阪妻・立花・ユ二バーサル連合映画『当世新世帯』(1927年、小沢得二監督)を上映。

当世新世帯3TOY

当世新世帯2TOY

阪妻は絶大な人気があったことから、アメリカへの輸出を考えました。しかし、松竹との専属契約があったため、阪妻出演作品の輸出ができず、直ぐに提携は解除され、海外進出の夢はわずか半年間で潰えました。『当世新世帯』は堀川波之助、泉春子出演の喜劇映画で、阪妻は出演していませんが、阪妻・立花・ユ二バーサル連合映画での製作作品は少なく、現存唯一の映画ではないかと推測しています。

2015年4月9日、開館準備中の記事が日経新聞文化面に掲載され、それをお読みになってフィルムを寄贈いただき、その翌月に阪妻特集を企画していたWOWWOWが取材に来ています。9月5日WOWWOWノンフィクションW「阪東妻三郎 発掘されたフィルムの謎~世界進出の夢と野望」が放送され、その中でこのフィルムが紹介。その時以来、初めての公開となります。

3作品目は、イタリア映画『オセロ~ベニスのムーア人(Othello , ou le More de Vinise)』(1909年)。

オセロ3 TOY)

オセロ3TOY

17世紀初頭にシェークスピアが書いた悲劇『オセロ』 を映画化した作品。翻訳ボランティアの吉川恵子さんが調べて分かったことをお話くださいました。

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オセロの字幕を翻訳して

 昨年、太田先生からイタリアの無声映画「オセロ」の字幕翻訳をお願いしたいと連絡が来た時、「やった!ついにイタリア語を翻訳できる」と、イタリアの文化と陽気な人々が好きな私は快諾しました。今まで、英語とフランス語の字幕のお手伝いをして来ましたが、とうとうその時が来たと。

さて、喜び勇んで見てみると、なんとそれはフランス語字幕でした。そうか、パテはフランスの会社ですものね、と納得。

しかし、調べてみると、面白い事がわかりました。1909年、シャルル・パテはローマにパテのイタリア支社として、Film d’Arte Italiana社を設立。ローマの演劇人を集めて設立しました。というのも、イタリアでは、1908-1911年に約25もの映画会社が設立されたそう。負けてはいられないと思ったのでしょう。

で、この年12月17日にこの「オセロ」がフランスのリヨンで封切りされました。クリスマス前をねらったのでしょうか。そして、「オセロ」はシェークスピアシリーズのトップを切り、翌1910年には「リア王」、1911年には「ベニスの商人」、1912年には「ロミオとジュリエット」と続きました。

残念ながら、この会社は1919年にイタリア映画連合に買収され、10年あまりでなくなりました。今日、111年も前の映画がよみがえり、ここで見られることをうれしく思います。

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「資料展では、私が訳した映画がたくさん額入りで展示されており、感無量でした。お手伝いできて、本当に嬉しいです」とも書いてくださいました。吉川さんが示している方角に、それらの額を展示しています。

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 このうち、12作品が吉川さんによって翻訳されました。「古いフィルムが日の目をみられるようお手伝いしたい」と仰ってくださって、本当にありがたいことです。心より感謝しています。

最後に『猛進ラリー』を上映。

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寄贈を受けたとき、フィルムの蓋に『猛進ラリー』と書いてありましたが、これが長い間ロストフィルムだと考えられていた原題『STOP ,LOOK AND LISTEN』(1926年)であると特定してくださったのは、クラシック喜劇研究家いいをじゅんこさんでした。1枚目の写真と2枚目写真の左がラリー・シモンで、二枚目右がオリヴァー・ハーディです。

いいをさんにも解説をして頂き、その内容を簡単に書いていただく約束をしましたので、届き次第、別にご紹介させていただきます。

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お連れ合いの浦木さんが指差しておられるのが、昨年劇場公開『僕たちのラストステージ』で紹介されたアメリカの伝説的お笑いコンビ「ローレル&ハーディ」のオリヴァー・ハーディです。

『猛進ラリー』は、柳下さんの提案で、銃を撃つとき、落下するとき、列車がどんどん迫ってくるシーンなどで、お客様が自由に手を叩いたり、細かく足を鳴らしたりと効果音係として参加する体験をしました。柳下さんの演奏も1回目の上映とみんなと一緒の上映では異なっていて、即興演奏の面白さを味わいました。

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最後にお決まりの集合写真。皆様、お出かけにくい状況の中を、ようこそお越し下さいました。まだまだ珍しい小型映画がたくさんありますので、いずれ第5回パテ・ベビー上映会をしたいと思っています。

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