おもちゃ映画ミュージアム
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Toy Film Museum

2016.01.12column

昭和歌謡『彼女の唄』

一般の人はあまりご存知ではありませんが、日本では、戦前の貴重な映画の散逸が著しく、ほとんど残っていません。危機感を覚えた連れ合いが、そうしたフィルムを発掘し、修復、復元して、フィルムで保存して次世代に残したいと活動するようになったきっかけは、恩師依田義賢先生の『僕らの弟』(1933年、日活)の復元でした。公的施設に寄贈されたまま倉庫に眠り、劣化が進むままだったフィルムを、大学に研究費を申請して復元しました。その後世界的に評価していただいたのが、鈴木重吉監督の『何が彼女をそうさせたか』(1930年、帝国キネマ)の復元でした。

1月9日に活動写真弁士・片岡一郎さんのFacebookを読んでいて、この映画が上映された当時の主題歌が、昨年末に「ぐらもくらぶ」から古い音源を使用して復刻されたことを知りました。早速アマゾンに注文したら、翌10日に届きました。連れ合いは、東京の早稲田大学小野記念講堂で開催された「無声期の映画館と音楽~日活関連楽譜資料『ヒラノ・コレクション』から考える」に参加し、翌10日にラピュタ阿佐ヶ谷へ。2月27日まで開催中の「映画探偵の映画たち」をのぞいて晩に帰京しました。そのタイミングを待って、早速CDをかけて一緒に聴きました。

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タイトル『思ひ直して頂戴な』に収録されたのは、全22曲。『何が彼女をそうさせたか』の主題歌『彼女の唄』は10番目。うたっているのは谷田直子さん。アルバムを選曲された毛利眞人さんの曲目解説によれば、映画の主題歌には、別にポリドールの羽衣歌子さんのものもあるそうですが、谷田直子さんの「初々しいオデオン版の方が傾向映画の主題歌っぽい」ということで選ばれたようです。谷田さんにとっては、これがデビュー作。

くろい瞳の 乙女子に

哀れ十五の 春くれば

夕べの鐘の 身に沁みる

町の外れの 丘の上

父はいずこ 母いずこ

 

可哀想な少女の運命を思い出し、切なくなる歌詞です。人々が「唇に歌を」と気軽に口ずさむような唄ではありませんね。作詞は川口松太郎さん、作曲は松本四良さん、演奏は松竹座管弦楽団。最後の収録曲『流浪の旅』などは

流れ流れて 落ち行く先は

北はシベリア 南はジャバよ

いづこの土地を 墓所と定めん

いづこの土地の 土と終らん     (作詞は後藤紫雲さん)

 

全く肩で溜め息をつきたくなります。こういう曲が売られ、聴かれていた時代…

先の早稲田大学では、日活系無声映画館で演奏していた平野行一さんの楽譜をもとに、研究成果が報告されました。無声映画、演奏、活弁の世界と社会、興味深いですね。曲調が重たいので、皆が落ち込まないように、さわやかな風薫る5月の開館1周年として、主題歌付き、映画『何が彼女をそうさせたか』の上映ができたら良いなぁと思っています。

《参考》 先に紹介したラピュタ阿佐ヶ谷の上映会では、1月16日と21日に、片岡一郎さんの活弁付で『何が彼女をそうさせたか』を上映されます。16日は映画を復元した後に新たに録音された音響版での上映ですが、21日は上屋安由美さんの生演奏付きで上映されます。片岡さんから上屋さんには『彼女の唄』を活かした演奏をしてほしいとリクエストされたそうですから、聴き比べてみるのも一興かと。お近くの方は、ぜひ足をお運びいただければと願っております。

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