おもちゃ映画ミュージアム
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Toy Film Museum

2017.04.21column

映画「台北ストーリー」

4月17日、映画「台北ストーリー」の試写会に行ってきました。

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1985年に作られた「台北ストーリー」は、エドワード・ヤン監督の長編第2作。今回の作品で製作・共同執筆・主演を務めたホウ・シャオシェン監督と並ぶ台湾ニューシネマの代表的な監督の一人でしたが、惜しいことに2007年6月29日に癌の合併症で亡くなりました。59歳の若さでした。遺されたのは本作も含め、わずか7本の長編のみ。ホウ・シャオシェンは、盟友のエドワード・ヤンのために自宅を抵当に入れてまでして「台北ストーリー」の製作費を捻出して完成させたのだそうです。長く日本で見る機会に恵まれませんでしたが、マーティン・スコセッシ監督率いるフィルム・ファンデーションのワールド・シネマ・プロジェクトにより4Kによるデジタル修復が行われ、彼の生誕70年・没後10年にあたる今年、日本で初公開されます。修復にあたっては、ホウ・シャオシェンも監修協力されているとのことです。

【フィルモグラフィ】

「光陰的故事」(1982年)第2話「指望」

「海辺の一日」(1983年)、初の長編映画でヒューストン映画祭グランプリを受賞

「台北ストーリー」(1985年)、ロカルノ国際映画祭審査員特別賞を受賞

「恐怖分子」(1986年)、ロカルノ国際映画祭銀豹賞を受賞

「牯嶺街(クーリンチェ)少年殺人事件」(1991年)、第28回金馬賞最優秀作品賞、国際批評家連盟賞を受賞。1995年英国BBCの「21世紀に残したい映画100本」に選出、2015年釜山国際映画祭のアジア映画ベスト100の第8位に選出。現在3時間56分のデジタルリマスター版が公開中。

「エドワードヤンの恋愛時代」(1994年)

「カップルズ」(1996年)

「ヤンヤン 夏の想い出」(2000年)、カンヌ国際映画祭監督賞を受賞

主演のアリョンを務めるのは前述の通り、ホウ・シャオシェンで、俳優として唯一の出演作。もう一人の主人公アジンを演じるのは台湾の人気シンガー、ツァイ・チン(「恐怖分子」主題歌を歌っています。後にエドワード・ヤンと結婚しますが95年に離婚)。アリョンとアジンは幼なじみ。リトルリーグのエースとして将来を嘱望されていた過去を引きずりながら廸化街(ディーホアジェ)で家業の布地問屋を営んでいるアリョンに対し、アメリカに移住し新たな生活を築こうとする未来志向のアジンの間にいつしか隙間風が吹き始めます。二人は変貌著しい台北の過去と未来を表し、その移行をテーマに描いています。ヨーヨー・マの音楽も良かったです。119分。5月6日から全国で順次上映され、私が見たシネ・ヌーヴォ―では5月20日~6月16日に上映されます。

エドワード・ヤン1

写真は、1997年秋に開催された第1回京都映画祭の国際シンポジウムに参加されたエドワード・ヤン監督。若くして亡くなられたのは本当に残念です。

昨年12月18日に、「玩具映画としてのチャンバラ映画の受容~阪東妻三郎を中心に~」の演題で研究発表して下さった京都大学大学院生の雑賀広海さんが、フィルムアート社から刊行される『エドワード・ヤン論考集』に論文を書いているとお聞きしていますので、それを読んでから今度は「牯嶺街少年殺人事件」を観に行こうと思っています。

それから、2008年に開催された第2回香港国際映画祭アジア・フィルム・アワードに「エドワード・ヤン新人賞」が創設され、石井裕也監督が、その第1回を受賞しています。石井監督は、大阪芸術大学映像学科の卒業生で、おもちゃ映画ミュージアム開館の折、応援メッセージをいただいています。「舟を編む」や「バンクーバーの朝日」でも高い評価を得て、この5月に「夜空はいつでも最高密度の青空だ」が公開されます。エドワード・ヤンの冠に輝いた若い監督の作品もどうぞ映画館でご覧ください。

 

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