おもちゃ映画ミュージアム
おもちゃ映画ミュージアム
Toy Film Museum

2017.07.27column

7月15日研究発表会は、1926年の映画館楽士が用いた楽譜で生演奏しながら当該映像を観る貴重な機会に!(その2)

前回に続き、7月15日に開催した研究発表会「1920年代の映画館楽士と楽譜-早稲田大学演劇博物館所蔵『ヒラノ・コレクション』の分析と活用」について書きます。今回は、開催日翌日に書いてくださった参加者からの感想文です。書き手は、「サイレント喜劇のすばらしき世界(The Wonderful World of Silent Comedy)」を運営されているクラシック喜劇研究家・いいをじゅんこさんです。

では早速、どうぞ!

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昨日、おもちゃ映画ミュージアムへ無声映画の伴奏音楽についての研究発表を聞きに行ってきました。

東京では早稲田大学の演劇博物館で毎年研究発表会が行われています。演奏家の鳥飼りょうさんが今年1月に参加なさってたのをうらやましく見ていたのですが、今回、研究者の白井史人さんが京都で発表してくださるとのことで、参加してきました。

「ヒラノ・コレクション」とは、1920年代後半(大正末~昭和初期)に日活直営館で映画館付き楽士であった平野行一さんが保管していた映画音楽の楽譜集です。無声映画の音楽の楽譜がまとまった形で残っている唯一の資料ということで、いままさに研究が進んでいるところだそう。現代でいう「映画音楽」の感覚とはかなりちがっていて、ひとつの作品に数パターンのメロディしかなかったり、さまざまな場面に対応する定型音楽として譜面が残っていたりして、実際にどんな構成で演奏されていたかはまだよくわかっていないようです。今回は、参考上映として『照る日曇る日』(1926)の一部と、2015年に9.5ミリフィルムが発見された『忠臣蔵』(1926)の抜粋場面に、ヒラノ・コレクションの楽譜をもとに再構成した音楽を鳥飼りょうさんがピアノで演奏し、当時の上映を再現しました。

これがすばらしかった。90年前に楽士たちが努力してつくりあげた音楽と、21世紀の演奏者の感性とが時を超えて出会った不思議な高揚感が、映画をいっそう感動的にしていました。『忠臣蔵』はただでさえ超大作の傑作映画なのですが、豪雪の中討ち入りに向かう四十七士たちの悲壮な決意や、吉良邸でのチャンバラの迫力、殺陣のかっこよさなどが、音楽によってこれほど高められるものかと、改めて驚き。無声映画にとって音楽がいかに重要なファクターであるかを痛感しました。1930年版『元禄快挙 大忠臣蔵』との比較もあって、わずか数年で撮影技術が飛躍的に進歩しているのもさることながら、ボーカル入り長唄がシークエンス中ずっと流れているなど、無声映画音楽の多様性を感じさせました。

白井さんによると、当時の映画館ではピアノ、チェロ、バイオリンの編成での生演奏が基本で、そこに三味線やトロンボーン、稀に尺八が加わることもあったそうです(昨日は尺八演奏もありました!)。早稲田の研究会では編成を再現しての上映も試みられています。

太田米男先生によると、大正初めに「洋画は洋楽で音楽をつけるべき」と主張する運動があったそうです。大正期というのは日本で映画音楽が試行錯誤をかさねていた過渡期だったようです。ということは、洋画も和洋合奏だったということなのかな?1925年キネ旬に「洋画は音楽のパターンがいつも同じで飽きる」という批判が載ってたりするんですって。おもしろいですね。

さらに日本には弁士がいますから、活弁と音楽の関係というのもこれから研究が進んでいくところ。弁士が全体のリズムを作って、楽士がそれに合わせていくというのが基本だったようです。白井さんは「バロックオペラのような感じだったのではないか」と仰っていましたが、文楽の太夫と三味線の関係にも似ているかもしれない、とも思ったり。関東の楽士は「伴奏」に徹し、関西の楽士は音楽で主張する傾向があった、というお話も「なるほど」という気がしました。

わたし自身は音楽のことはまったくわかりませんし、日本の無声映画の知識も乏しいのですが、無声時代の上映形態の一部を今回の発表で知って、当時の映画の楽しまれ方がすごく生き生きと身近に感じられて、非常に良かったです。ぜひこれからも研究のアップデートを発表していただけたら、と願っています。重要な場を作ってくださったおもちゃ映画ミュージアムに感謝。

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先の岐阜の女性、今回のいいをさんには、許可を得て掲載させていただきました。どうもありがとうございました。「ヒラノ・コレクション」共同研究者の紙屋牧子さん、柴田康太郎さんも当館にとってはお馴染みの方々ですので、いいをさんがおっしゃる通り、皆さま方の研究成果を今後も継続して発表していただけたら、とても嬉しいです。

DSC01536 (2)

最後にいつもの集合写真。せっかく、いいをさんが来られているので、喜劇映画研究会代表の新野敏也さんをお招きして開催した1月15日のように、仲良く腕組み写真を撮ろうと呼びかけましたら、前列の5人は素直に応じてくださいました。私は、このことに感激しました‼ 

登壇者の皆さま、ご多忙の中お運びいただいた皆さま、本当にありがとうございました。

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