2015.07.31column
「夏休み!こどもくまどり体験」から
7月25日(土)午後1時と午後3時の2回に分けて、劇団前進座の協力で歌舞伎の隈取(くまどり)体験教室をしました。司会進行も全てお任せで、私は好奇心の赴くままメモを取ったり、身を乗り出したりして、既にテンションUP。最初に役者さんがメイクのお手本を披露。立ってお話をされているのが中嶋宏太郎さん、メイクをされているのが早瀬栄之丞さん、その手前が本村祐樹さん。
ハゼの実と植物油を混ぜて作った鬢付け油の軟らかいものを手のひらで温めて顔全体に塗ります。そうしないと白粉がムラになってしまうのだそうです(きれいにつく分、落としにくいのでこの日は子どもには塗らず)。カツラ下に用いる羽二重の糊代わりにも使うそうです。眉毛を塗りつぶし、若い女性は笹眉を描きます(年配の女性役は眉のないままで)。白粉は、昔は貝殻を砕き細かくすり潰したものに顔料を加えていました。江戸時代は鉛を使用したために鉛毒が問題になりましたが、便利だったこともあり、明治まで使われ続けました。今は化学物質+白顔料+香料だそうです。女性のメイクは簡単ですが、首、手足、背中と体中に塗るので大変。水溶きの京紅を使って「目張り」「口張り」「笹眉」を描きます。赤を塗った上に黒で描くと色っぽくなるとか。
続いて立ち役(男役)作りへ。隈取には何種類もあり、この日は一番力強い「筋隈(すじぐま)」という隈取メイクを体験。『菅原伝授手習鑑』や『暫』に出てきます。赤は正義、一番強くカッコいい役、青は亡霊、茶色は悪役が多いそうです。指でぼかしを入れますが、指のあとが残るくらい雑にする方が客席から良く見えるそうです。
江戸時代の劇場は暗く、客席の天窓だけで芝居をしたので、暗くてもはっきり役柄が分かるようにメイクしたのだとか。ちなみに「隈」は取ると言い、書くと言いません。小屋は南向きに建てられ、南側は自然光を取り入れて明るい客席、北側は舞台。客席は東西に広がることから、歌舞伎は「トザイ、トーザイ」、皆々様の口上から始まるのだとの説明に納得。
「隈取体験を希望する人」と聞かれ、元気よく挙手する参加者。二手に分かれてメイクして貰いました。
お父様と息子さんが並んで隈取メイク体験(午後1時の回)。子どもは、鬢付け油を用いないでも、きれいに白粉がのります。
「押隈(おしぐま)」をした手拭いを記念に持ち帰り。本来は芝居が終わって汗をかいた後に、初日の記念や千秋楽に押隈をしてご贔屓さんにお渡しするのだそうです。男の子の表情から、楽しさが伝わってきます。
役者さんから教えて貰った目つきを真似るお父さん。二人ともメイクをとっても気に入って「できればメイクをしたままバイクで帰りたい」とさえ言われるほど。「来年の年賀状は、これで決まり!」。
午後3時から参加されたこちらのお母様もメイク体験。とってもカッコいいです。
その仲良し家族3人と親友の男の子。感想を聞くと「やる前より良かった。役者も良いなぁと思った」と返ってきました。滅多にできない貴重な体験、企画して良かったです。
最後に「隈取」メイクさん勢揃いの記念写真撮影(午後3時の回)。見ているだけでも充分楽しかったので、「次は歌舞伎入門編第2弾をしましょう」と早速持ち掛けました。次はあなたもご一緒に。
前進座の皆様、お世話になりました。感謝でいっぱいです。