おもちゃ映画ミュージアム
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Toy Film Museum

2018.09.18column

「京都ニュース」の保存と活用について発表報告・第13回「映画の復元と保存に関するワークショップ」(2018.8.26)

8月24日から26日まで開催された第13回「映画の復元と保存に関するワークショップ」での「京都ニュース」の保存と活用についての発表報告です。

お宝バンク登録

京都市の「“みんなごと”のまちづくり推進事業「まちづくり・お宝バンク」という施策が始まり、当館(おもちゃ映画ミュージアム)にも参加要請がありました。京都市の方がお見えになり、市民の活性化を目指して、身近にあるお宝を見つけ、みんなで応援しながら、その京都のお宝を守ろうという意図でした。急なお話で、すぐには思いつかなかったのですが、昔映画館で本編上映前に市政ニュースがあり、当時は「早く終われ」と思っていたのですが、様々な市民の生活や出来事、トピックが報告され、今見ると歴史的な意義を持つようになっている。それらの映像こそ、京都の映像文化財、市民のお宝だと返したところ、後日「ありました。京都ニュースが残っていました」という報告を受け、では京都市のみなさんと共にそれらの映像を保存し、活用することを考えましょうと一般社団法人京都映画芸術文化研究所名で、「昭和31年から平成6年頃京都市が制作した「京都ニュース」の保存と活用プロジェクト」を「お宝バンク」No.234 として登録しました。

 「京都ニュース」について

京都ニュースタイトルC

1956年(昭和31年)、第1号として始まります。1956年という年は映画全盛期の頃で、京都の映画界も未曽有の黄金期を迎えていました。この年、京都市は「市民憲章」を制定します。

「わたしたち京都市民は、美しい町をきずきましょう」「わたしたち京都市民は、清潔な環境をつくりましょう」「わたしたち京都市民は、良い風習をそだてましょう」「わたしたち京都市民は、文化財の愛護につとめましょう」「わたしたち京都市民は、旅行者をあたたかくむかえましょう」という5つの目標です。

この「京都市民憲章」を広く市民のみなさんに伝えるためには、当時映画館での上映が最も効果があると考えられたのでしょう。ちょうど60年前の1958年には、全国映画館観客動員数11億人を突破します。

「京都ニュース」は、1956年に始まり、1994年(平成6年)まで続きました。しかし、映画館は、テレビの普及に伴い、次第に観客動員数も下降線をたどります。多くの映画館は閉館に追い込まれ、下降線は歯止めがきかないまま、シネコンが普及しはじめる1994年、映画館での観客動員が最低値にあった頃に、「京都ニュース」の制作も終了しました。その意味では、京都市の発展の歴史でありながら、「京都映画衰退の歴史」という事にもなります。

「京都ニュース」には、市政報告だけでなく、1作品中には、平均5~6つの市民生活や祭事、出来事、景観の移り変わりなど、これまで推定で1200から1500のトピックが記録されています。その意味からいうと、映像による市政報告記録であるだけでなく、市や市民生活の移り変わりの記録、映像による文化遺産と言うことができます。

IMG_20180811_00011

京都市広報局の企画、京都広報協会の制作、撮影者は市職員であった里見喜好さんです。里見さんが市の職員であった関係から35mmフィルムの画ネガ、音ネガ原版として残っていたのです。もし、業者に委託して製作したものなら、原版は残っていなかったでしょう。それも457本という大量のオリジナル・ネガ原版が残っていたのです。世界に二つとない京都市民の映像記録の原版が残っていた。それは奇跡的な事なのです。現在、京都市歴史資料館に保管されています。

 

「京都ニュース」の調査

画ネガ、音ネガ原版で457本のフィルムが残っていたのですが、1956年の第1号から1994年の244号まで製作されているので、本来画ネガ、音ネガ原版は488巻なくてはなりません。だから、すでに31巻が散逸していることになります。

457本という大量のフィルムが残っていたということは、一度には調査できないほどの量です。特に画ネガ、音ネガという35mmフィルムであり、今日では、4K、8Kといった高細密の映像が提供できる素材が残っていたのですが、一方、ネガ原版ということで、安易に着手できない唯一無二の原版で、もし指紋や埃が付着すると除去できなくなります。映写用のポジフィルムや撮影(ナレーション)台本などの紙資料が残っていれば、内容調査が容易にできるのですが、それらは全く残っていないということでした。

映画のまち京都ですから、撮影所の元編集マンや元映画従業者を動員しての作業はできるのですが、ボランティアではできません。またラボ(フィルム現像所)などの業者にお願いするには費用も掛かります。予算ゼロでのスタートですから、まずは、ボランティアで、簡単な調査を行い、市が本気になって、「京都ニュース」を保存するための予算化してくれることをめざします。

調査1

左上―移管された際の養生テープで巻かれたままの缶。右上―鉄錆びた缶。下―劣化度Dのフィルム

そこで、目視程度の簡単な調査ですが、数人で2日間(2017.10.3と11.23)行いました。まず、保存されたフィルム缶の写真撮影。これはのちに缶表などに記載されたものを記録でき、内容の照合に役立ちます。錆びた鉄缶などを開封することで、充満した酢酸ガスの濃度を下げることにもなります。内部も目視で、画ネガか音ネガの判別、そして劣化度の確認です。すでに復元が難しいというものと、巻などの状態から目視して判別する以外にありません。そこで、A~Dの劣化度を記録をしました。Aは通常の状態のフィルム、Bは劣化が始まったものの、まだプリントなどができるもの。Cは劣化が進み、歪みや縮みができて、作業が難しいものの、まだ復元できる可能性があるものです。Dは全くダメになったフィルムです。測定する器具がある訳ではなく、実際に巻き直しをすると正確に確認できるのですが、今回は時間もなく、経験上の目視識別としてリスト化に終始しました。リスト化したものの、不備な点が多く、専門家を動員した調査の必要性を提案しました。また、フィルムの洗浄と新しい紙箱か、ポリケースに入れること。特にフィルムの洗浄は劣化を遅らせるためにも欠かせないことを強調しました。

調査2

ピンクの帯になっている箇所は、上映用プリントもなく、デジタル化もされていないものです。

今回の調査で、完全に劣化し、復元できないであろうフィルムは30巻以上ありました。劣化は感染するので、隔離などする必要があるのですが、その場所がありません。

フィルム洗浄が劣化の防止に効果があることは、「みんぱく」での報告にもありました。1度にするのではなく、3年計画でしてはどうか?洗浄をすれば、明らかに延命することが出来ます。ただ、元の鉄缶に入れると、再び密封され、劣化が進みます。そこで、紙箱に入れることを勧めました。紙箱の場合は、酢酸ガスが外部に漏れると心配されますが、空気の流通があれば、他の紙箱を透過してまで感染するほどの濃度になることはありません。もちろん、紙箱の入替は必要になるでしょうが、・・・。市としては、少しでも着手するとどこまで費用が嵩み、膨大化するかわからず、手を付けられないというのが本音のようでした。

これまでも一部を調査され、復元するには1億円ほど掛かるという業者からの見積書が提出されていて、そのような高額の費用では市議会の承認が得られないというものでした。

なにより、著作権者である広報局はすでに終了した事業であり、新たに立ち上げることはないというスタンスです。また京都市歴史資料館(市民文化局所轄)は、すでにデジタル化した映像を公開し、そのサービスも終わったもので、原版フィルムは市から預かっているという考えです。文化財保存課の方にもお聞きしましたら、京都市には文化財が多く、映画フィルムまで手を回す余裕がないということでした。

ただ、一番大きな課題は、35mmという原版があると、4K、8Kという高画質の映像を提供できるのですが、一方費用が掛かるということです。

この調査や「京都ニュース」の保存・活用のための費用調達に、クラウドファンディングなどを提案されましたが、市の職員全員が1口1000円でも出せば成功するでしょうが、市の職員が協力してくれるでしょうか、その問題が残りますし、そもそも京都市の財産ですから京都市が予算化すべきだという反発もあるでしょう。

幸い、一部デジタル化された映像があり、それらの映像活用を行いながら、市民に「京都ニュース」の重要さを知ってもらうことを考えました。

 

「京都ニュース」の活用

幸いデジタル化された映像が、1956年から1970年までの70本の映像がDVDとして残っていました。1~106号までです。しかし、2,8、9、10,26,32,40、41、43、52、53、54,55,56、57、58,59,60、61,64、87,88、91,92、93、94、95,96、97,98,99、101、102、104,105号の35巻が欠落しています。作業されたのが、10年も前ですから、すでにデジタル化できない状態だったのかもしれません。

全244作品中デジタル化された70作品、残り174作品が全く手つかずの状態で、デジタル化を待ったまま、京都市歴史資料館の地下倉庫で眠っています。錆びた缶の中は、鼻を突くような酢酸臭が充満し、少しでも早く修復や復元が求められていると言えます。

ビデオ化されたDVDも、過去の技術ですから、高画質は求められえないのですが、これらの残った映像を市民の皆様に見てもらい、「京都ニュース」の保存と活用の意義を知ってもらおうと、映画祭での上映を提案しました。その中で、協力していただけたのは、祇園天幕映画祭と京都国際映画祭でした。   

天幕映画祭

祇園天幕映画祭は、祇園祭宵山(7.15)の歩行者天国の祇園町、四条通りの南座辺りから花見小路までに2か所にスクリーンを張り、路上映写を行います。「祇園祭芸妓行列ねりもの」も今では行われていず、とても貴重な映像でした。

国際映画祭

京都国際映画祭では、元立誠小学校(跡地)の教室で、1956,1957年の「京都ニュース」を上映しました。「60年前の京都」というテーマでした。新聞にも採りあげられて話題になったのは、「戦争遺児靖国参拝」という映像でした。

私事になりますが、1956年は小学1年生、戦後生まれです。父がシベリアの抑留から帰り、生まれることが出来ました。当時の6年生は、生まれてすぐか、お母さんのお腹の中にいる時にお父さんが出征し、帰って来なかった母子家庭の子供たちです。私の父は幸い生還できたものの身体を壊し、幼少の時に父を亡くした私にとっては、他人事とは思えない出来事でした。

 上映すれば、残った映像の意義は知ってもらうこともできるのですが、上映された映像だけを見て、「京都ニュース」が残っていると誤解されます。まだ見ることのできない貴重な映像たちが死蔵され、劣化し、廃棄されかねない状態であることが伝えられないのが残念です。

 メディアの反響

メディアの反響

京都新聞(2017.7.12)「芸妓行列「ねりもの」記録、京都新聞(2017.10.7)「戦争遺児靖国参拝、祇園祭音頭」60年前の出来事・・・」、京都民報(2017.12.10)論壇・オピニオン「京都ニュース」保存と活用」、月刊「ねっとわーく京都」(2017.12月号)9ページにわたり「とーく」で、「京都ニュース」にもふれました。(以前に当館のスタッフブログで紹介したもの)/blog/column/6369.html

 

賛同者の声

〇これまで写真は比較的あったが、舞が具体的に見られる映像は珍しい。現在、「ねりもの」は中断しているが、復興の際には役立つのではないか。

〇祇園祭で途絶えていた提灯行列は、残っていた江戸時代の絵図を参考に復活した。映像で残っていると、とても参考になる。

〇昔の映像を見ると、高齢者の脳に良い効果がある回想法がある。介護、医療面でも活用の価値があると思う。

〇昔親が撮っていた8mmフィルムでも、今になってどんなものが映っているか見たいと思っている。京都ニュースでしか見られない映像もあるだろう。

〇京都の文化、風俗を伝えられる貴重な資料。大劇場でも上映が可能な35mmフィルムで残っていることは奇跡的。

〇紙の文献ではなく、映像を見るととてもわかりやすい。フィルムがまだ残っているのなら,なくしてしまわず、見られることは大事。

 

一方、反対者の意見

〇市政ニュースに興味はない。

〇高山義三市長ばかり出てきて、選挙対策だ。

〇昔の映像を高いお金をかけてまで残す意義を感じない。

〇昔の映像に関心がない。

という声も聞こえてきました。

 

「お宝バンク」交流会でのアンケート

100名の参加者に配布、回収率は37%でした。

「京都ニュース」を知らない67%、関心がない。あるいは見ていない55%、見てみたい45% どのようなジャンルに関心があるか?(複数回答)文化芸術59%、市民生活51%、祭事38%、観光27%、景観22%、教育・子育て14%、経済・産業11%、福祉11%、生活環境11%、市政8%、防災5%、国際3%

 

今後の調査と課題

まずは、内容の把握です。最近、立命館大学アートリサーチセンターに「京都ニュース」の上映用16㎜ポジフィルムが大量に残っていることが分かりました。保管場所がないため、預かってもらっていると云うものです。保存庫が必要なのは、ネガ原版の方ですが、上映用ポジは学校や区民センター、図書館などでの上映用でした。この16㎜フィルムによって、「京都ニュース」の調査リストを完成させることができます。

ネガ原版を早く、適切な保管庫に収容することです。一昨年、国立フィルムセンター(現国立映画アーカイブ)に市の職員たちが相談に行きました。最終的には、同アーカイブに保管してもらうことになるでしょう。しかし、京都市民の財産である映像を国に寄贈するというのは、市民のコンセンサスが得られるか、これも課題です。

「京都ニュース」は市の財産ですから、国や府の費用で復元することもできません。そのためにも、京都市はデジタル化を急ぐことです。デジタル化の費用は、1本につき10万円ほどです。244本ですから、2440万円、まだデジタル化をしていないものを優先するなら1740万円です。一度には出来なくても、数年に分けて作業する方法もあります。

貴重な映像ですから、テレビの番組や映画の一部に活用することもできます。また、回想法という提案もありましたが、学校や福祉施設での上映、映画祭での上映、神奈川県「川崎市映像アーカイブ」のようにWebサイトでの公開も出来るでしょう。今年も、祇園天幕映画祭や京都国際映画祭でも上映し、貴重な映像を鑑賞してもらうことができます。その機会に、1作(10万円)ずつ、スポンサーをつけ、応援してもらうことも一つの方法です。

私の提案は、京都に文化庁がやってくる機会に、既存の文化財を管理するだけでなく、西日本にも国立映画アーカイブ相模原分館のようなフィルム専用保存庫の建設をお願いしたいということです。地方には、「京都ニュース」のように映像文化財を保存する施設がないところは多いのです。地域の行政機関だけではありません。学校、資料館、図書館など、また民間にも映像文化財はあります。映画だけではありません。アニメやゲームも同じです。テレビ局にも初期のニュース映像はフィルムでした。教育委員会が製作した記録映像も劣化して「捨てた」とか散逸していることを耳にします。次の世紀には、世界各地で映像による図書館機能が充実していることでしょう。海外に遅れを取らないためにも、映像図書館の建設は急務かもしれません。そのためにも今することは、映像を数多く残しておくことです。

今回のワークショップでは、全国の博物館や資料館などの学芸員の方、大学や在野で映像アーカイブに携わる人たち、また、専門の映画・映像の技術者の方たちの集まる勉強会ですから、これからの「京都ニュース」の保存と活用について、良いご提案やアドバイスがあれば、ご教授戴きたいと思っています。

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講演後のアンケート、また個別にメールで戴いたご提案を記載したいと思います。

●「ラボの最新修復技術の報告」「『京都ニュース』の保存と活用について」 : 知恵や技術が注がれて修復されていくフィルムと、役目を終えたとして地下に残されているフィルムの対比に強い印象を受けました。

●京都市の映画フィルム保存に関する意識とやる気の低さにはがっかりしました。懇親会とは別に、講義の中で発表者と参加者との質疑応答や議論の時間があればよかったと思います。

●過去のフィルムに対する考え方が大きく変わりました。近年、過去のフィルムやビデオを整理し、保存するものと処分するものに分ける作業をしていますが、もう一度考え直さなくてはいけないと感じました。

●「京都ニュース」を残すため、署名運動をするのはどうですか?

●提案①テレビ放送局の報道部署へ投書や情報提供をすることで、地元向けニュース(の1コーナーとして)で取り上げて頂く。12月1日が映画の日であるタイミングを利用して、未調査フィルムの保存状況の実情を取材してもらい、『京都ニュース』の価値の高さを説明し、復元保存活用を視聴者に呼び掛ける。

 提案②全国放送のトークバラエティー番組で取り上げて頂く。いわゆる本編(劇場用)映画以外の小型映画(おもちゃ映画、無声映画、ニュース・記録映画、幻灯機等含む)の“フィルムの復元・保存・活用”というテーマは、一般的にみればかなり特殊で間口が狭い、マニアックな世界だと思います。全く知識のない方、関心がない方、存在すらご存知ない方々も多いので、まずは知って頂くために、以下のような人気番組の中で取り上げて頂くというのはいかがでしょう。「小型映画(又はおもちゃ映画)の世界」の魅力を熱意を込めてプレゼン(又は解説)をし、最後には「京都ニュース」の話と保存を視聴者へ呼びかけます。持ち込み企画案か取材招請的な情報の提供、フィルム映像や展示機材の貸し出しが必要です。例えば、●『マツコの知らない世界』(東京放送系列/MBS)●『リトルトーキョーライフ』(テレビ東京系列/テレビ大阪) ●『タモリ倶楽部』(テレビ朝日系列/ABC)など。

以上のようなご意見、ご提案をいただきました。京都市の担当者にも共有たいと思います。

 

 

 

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