おもちゃ映画ミュージアム
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2018.09.24column

「忠臣蔵」など3作品をフランスのシネマテーク・フランセーズに寄贈しました

2018年9月17日シネマテークに寄贈フィルム (2)

9月18日、ドイツのサイレント映画演奏家として世界的評価が高いGunter Alfred Buchwaldさんから、メッセンジャーでこの写真と“Yesterday, Monday 9/17 the 3 parcels were deposit at the Cinémathèque Française.”が届きました。

フランスの映画文化の中心拠点シネマテーク・フランセーズに3作品の35㍉フィルムを寄贈したという知らせです。その3作品とは、

忠臣蔵 - コピー

 「(実録)忠臣蔵」(1926年、日活大将軍、監督:池田富保、主演:尾上松之助) 。2015年当館に寄贈されたフィルムの中から見つかったパテ・ベビー完全版を35mmフィルムに復元したものです。この年10月に開催された京都国際映画祭2015を皮切りに、東京国際映画祭や国内外の映画祭で上映していますが、イタリアのポルデノーネ無声映画祭でも上映できればと、ブーフヴァルトさんに託しました。

特急三百哩 - コピー

「特急三百哩」(1928年、日活京都 監督:三枝源次郎、原作脚本:木村千疋男、主演:島耕二)。2004年の第4回京都映画祭で復元・上映しました。その時、JR京都駅の大階段で、生演奏をしてくださったのもブーフヴァルトさんでした。原版提供は、安井喜雄・神戸映画資料館館長さんです。

何が彼女をそうさせたか - コピー

「何が彼女をそうさせたか」(1929年、帝国キネマ、監督:鈴木重吉、主演:高津慶子)。傾向映画の代表作で、キネマ旬報現代劇第1位。今から20数年前、幻の映画がロシアで発見されました。日本映画百年を記念して開始された京都映画祭プレイベント(1997年)で復元版完成披露上映。その時演奏して下さったのもブーフヴァルトさんでした。この作品は、ドイツ、イタリア、スウェーデンなど海外の映画祭でも上映され、絶賛を博し、世界の名だたる名作の中、日本で唯一の作品として紀伊国屋書店からクリティカル・エディションDVDが販売されました。

いずれの作品も連れ合いが復元に携わり、思い入れがたっぷりあるものですが、とりわけ「何が彼女をそうさせたか」はブーフヴァルトさん、連れ合い双方にとって格別。初上映が京都映画祭で京響でのオーケストラ伴奏ということで、オーケストラとのリハーサルの時間が十分とれないこともあり、ブーフヴァルトさんはドイツで全て新たに作曲。連れ合いに対しても「どのような意図で演奏すべきか」と何度も問い合わせがあったそうです。

連れ合い自身は復元に際し、欠落部分の復元方法や、また活弁ではなく、演奏のみで上映したいことなどを帝国キネマの末裔である山川暉雄さんに相談して、自由にやれせていただいたこともあり、ブーフヴァルトさんに対しても「自分の感じたまま作曲してください」とお願いしました。ですから、ブーフヴァルトさんにとっては、わが娘のような作品なのです。そういうこともあって、彼はドイツでのタイトルを「Das Madchen Sumiko(少女すみこ)」と名付けました。当時無声映画の演奏歴500作品ということだったブーフヴァルトさんが初めて作曲した記念すべき映画音楽の第1作、それがこの作品なのです。

昨年のことですが、連れ合いがブーフヴァルトさんに「『忠臣蔵』を35mmフィルムで演奏する機会があるか」と尋ねました。それは『特急三百哩』、『何が彼女をそうさせたか』と同じように、彼が自由に上映して演奏できるように預けようと思ってのことでした。ところが、残念なことに「最近はほとんどの映画祭でフィルム上映する機会がない」と返事がきました。「それなら、フィルムを大事にしてくれるアーカイブがあれば寄贈しても良い」と考えて、ドイツ在住の山下秋子さんを通してお尋ねしました(以前、山下さんから寄稿いただいていますので、お読みいただければ幸いです)。連れ合いが寄贈に際して要望したのは、彼に既に預けていた先の2作品同様、フィルムでの上映ができる時は、ブーフヴァルトさんが自由に使えるようにして欲しいという一点でした。

タイミングよく、山下さんは今年のベルリン国際映画祭でブーフヴァルトさんに再会。その時に、彼女は「ドイツ国内あるいはヨーロッパ内で日本映画の寄付を受けてくれるところがないか」と尋ねてくださいました。早速ブーフヴァルトさんは「シネマテーク・フランセーズが日本映画の大きなコレクションを持っているので、担当者に聞いてみよう」と言ってくださいました。

しばらくして、シネマテーク・フランセーズもこの3作品寄贈提案に大変興味を持ってくださり、当方の要望を承知した上で、正式に受け取るということになりました。17日ブーフバルトさん自ら車で、お住まいのドイツ・フライブルグからパリまでフィルムを運んでくださいました。写真は、映画保管場所に運び込んでくださったときの様子。

「何が彼女をそうさせたか」をロシアから持ち帰った帝国キネマ創始者山川吉太郎の孫、暉雄さんは既に他界されているのですが、ご子息の雅行さんには、いずれ感謝状が贈呈され、うちには寄贈した契約書が届くことでしょう。丁度今年は、パリと京都市が友情盟約を締結して60周年の記念の年ですから、丁度良い機会でした。両市の民間交流の一つとなれたことを喜んでいます。

丁度今、シネマテーク・フランセーズでは、「日本映画の100年」ジャポニズム2018が開催中。今朝の活動写真弁士坂本頼光さんの呟きでは、

「Japonismes2018映像事業企画『日本映画の100年』で、フランスに伺います。フランスはパリから始まり、トゥールーズ、リヨン、ドイツはベルリンと……『雄呂血』(25.監督=二川文太郎、主演=阪東妻三郎)『滝の白糸』(33.監督=溝口健二、主演=入江たか子)の説明を担当します。湯浅ジョウイチさんを楽長とする音楽家の皆さんとの旅公演です。帰国は来月の8日予定です。行って参ります。」とありました。

今年は間に合いませんでしたが、いずれ、シネマテーク・フランセーズでブーフヴァルトさん演奏で、寄贈したこれらの作品が上映されるでしょう。その時が来るのを今から楽しみにしています。

ブーフヴァルトさん、そして、山下さんには大変お世話になり、感謝でいっぱいです‼ ありがとうございました。そして、坂本頼光さんと湯浅ジョウイチさんたち演奏家の皆さま、頑張って素敵なパフォーマンスを披露して下さい‼

【後日追記】背景をもう少し詳しく説明します。

・「忠臣蔵」は当館に寄贈された中から見つかりました。貴重なものだと判断してDNを作り、そのプリントを2本作りました。原版、DN、プリントも当館にあり、そのうちの1本をヴ―フヴァルトさんに預けました。

・「特急三百哩」は、神戸映画資料館の安井館長が上映用ポジを持っておられたのですが、可燃性フィルムだったので、京都映画祭で復元し、それをもとにDNを作りました。そのDNから上映用プリントを2本作り、それを用いてヴ―フヴァルトさんの演奏付きで映画祭上映しました。原版とDN、上映プリントは安井さんが所持されています。連れ合い用のもう1本をヴ―フヴァルトさんに預けていました。

・「何が彼女をそうさせたか」の当時の上映用プリントはロシアにあり、後に国立フィルムアーカイブも購入して所蔵しています。山川暉雄さんが、ロシア語版のコピーを持ち帰り、それを連れ合いたちが日本語版に復元しました。その原版とDNそして、2本作った上映用プリントのうち1本は山川雅行さんが所蔵されています。自分用のもう1本をヴ―フヴァルトさんに託していたのです。

今回シネマテーク・フランセーズに寄贈した3作品は、こうしていずれも連れ合いが所持していた35㍉フィルムです。日本映画を海外に広げるために、無声映画演奏家として世界中で活躍するブーフヴァルトさんなら、彼の企画で上映し演奏することが可能だろうと判断して託したものです。今や、ポルデノーネ映画祭でも、DCPが条件になり、他の映画祭でも35㍉では、ほとんど上映されなくなっています。

シネマテークフランセーズなら35㍉上映が可能であること、フランスなら映画を大切にしてくれることなどを考えて、寄贈することにしました。

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