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2018.10.24column

ドキュメンタリー映画「子どもに本をー石井桃子の挑戦」上映会を終えて

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「読書の秋」到来。10月27 日から読書週間が始まるのに先駆けて、10月20日(土)と21日(日)に、子どもの読書活動の発展に尽力された石井桃子さん(1907-2008)の生涯を貴重な写真と映像で追ったドキュメンタリー映画『子どもに本を—石井桃子の挑戦』3部作を上映しました。

行楽の秋でもあり、秋祭り、運動会の時期でもあり、皆さまご多忙で一体どれくらいの方がお集まりいただけるかと心配したのですが、子どもに読み聞かせなどの活動をされている熱心な方々に多数お越しいただくことができて、おかげ様で充実した催しとなりました。

写真は監督の森 英男さん。子どもの頃に読書の楽しみを覚えた森さんは、もっともっと石井桃子さんのことを知って貰いたいと、石井さんの映画作りを決意。実は大阪芸大映像学科卒業で、映画の現場で、演出や撮影もされていたので、製作はお手のものですが、問題は製作資金集め。彼は、出始めたばかりのクラウドファンディングでそれを実現し、これら3作品を手に、全国津々浦々に「石井桃子さん広め隊」と呼んで良いような活動を地道に展開されています。

20日13時から第1部「ノンちゃん牧場」、16時から第2部「子どもと文学」を上映しました。

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印象深かったのは、参加者の多くが、上映中もですが、森監督のお話を一言も聞き漏らさないようにと耳を傾け、熱心にメモをされていたこと。実際に石井桃子さんの講演を聞かれ、お葬式にも参列したという男性もおられ、エピソードを披露してくださいました。3部作全てをご覧になった方が何人もおられたのも嬉しいことでした。

この日は、去る10月13日「渡辺泰展」をご覧に来館されたロシア児童文学研究者で、翻訳家の田中泰子さんがサプライズで、石井桃子さんとの思い出話などをお話くださいました。さらに昨日、20日の上映会に参加しての感想文を送ってくださいましたので、こちらで紹介しています。

20日は皇后美智子さまの84歳お誕生日。以前NHKで皇后さまの「子供時代の読書の思い出」が放送され、大きな反響を呼びましたが、この番組をご覧になっていた石井桃子さんは、『世界名作選』が1998年に復刊された折りの談話で「(皇后さまが)『世界名作選』を克明におぼえておられたことは大変嬉しく、また、このご講演がきっかけで、六十余年も前に刊行された本が復刻されると聞き、喜んでおります。」と述べておられます。

DSC07008 (2) - コピー1935(昭和10)年、「日本少国民文庫」という全16巻のシリーズが新潮社から刊行されました。戦争が近づき、いよいよ困難な時代へと向かう中にあって、作家の山本有三さんが「少年少女の感性の陶冶と知性の訓練に役立つ書物を」という企画を立ち上げ、石井さんは一番若い編集同人として活躍されました。

皇后さまが感動されたお話が載る『世界名作選』は「日本少国民文庫」の中の2冊でした。1931年に満州事変、1932年に5.15事件、1936年に2.26事件が起きている時代のことです。オスカー・ワイルドの『幸福の王子』、ボンゼルスの『蜜蜂マーヤの冒険』、アン・モロー・リンドバーグの『日本紀行』等々が含まれています。でも、石井さん自身は「つらいことに耐える感心な子」という傾向の話が多いと感じ、「もう少し明るい話やナンセンスな作品も紹介したかった」そうです。

DSC07021 (2) - コピー1940年に出版された『熊のプーさん』と1942年に出版された『プー横丁にたった家』。『ピーターラビット』シリーズや『小さなうさこちゃん』などの翻訳でも知られています。森さんによれば、言葉に対する調べを大切にしていて、何度も何度も繰り返して、ピッタリの言葉を探したそうです。それだからこそ親から子へ、子から孫へと読み継がれて愛され続けているのでしょう。

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これは、渡辺泰先生のコレクションから。発売された当初の広告ですね。

森英男監督からも昨日メールが届いていますので、以下にご紹介します。

…………

太田さま

上映会ではたいへんお世話になりました。20、21日は気持ちの良い秋晴れで、映画を観るのにはもったいない日和でした。熱心に来ていただいたお客さまに感謝いたします。

石井桃子さんは晴れがましいことがお嫌いでした。これまでに石井さんのことで動き出すと強い力が働いておかしなことが起こりました。大雪になったり、嵐になったり、尾崎真理子さんの『ひみつの王国』(文部科学大臣賞を受賞した石井桃子さんの評伝)が出版された時には、5月でしたが調布に雹が降りました。石井さんの怒りのメッセージです。ぼくのコンピューターは編集中にハードディスクが3回ふっとび、最後には完全に壊れて電源が入らなくなりました。映画などもってのほかです。

最近は石井さんも許してくださったのか何事もなく平穏です。それどころか20日にはスペシャルゲスト田中泰子先生が「石井さんの思い出」をお話して下さいました。石井さんが田中先生と京都のみなさんを引き合わせてくれたのに違いありません。

石井さんは「作品だけ残ればよい」というお考えでしたが、石井さんの活動は翻訳と創作にとどまることなく「子どもと本のすべて」に関わられました。ぼくはこのことを多くの人に知ってもらいたいと思って映画を作りました。とくに次の世代に石井さんのことを知ってもらいたいのです。

今日、上映会にお見えになったお客さまから上映会の依頼をいただきました。石井さんのことがすこしだけ広がりました。ありがたいことです。

これから京都は紅葉がうつくしい季節を迎えますね、うらやましい限りです。同時に「京の冷え込み」もはじまります。どうぞみなさまお身体をたいせつになさって下さい。

あらためて心からお礼申し上げます。ありがとうございました。

 

10月23日 森英男

………

森さんを学生時代から存じ上げていますので、誠実なお人柄そのままが、映画にもあらわれていたように思います。ゆっくり丁寧にお話される内容も聞いているこちらの心に届きます。「よく調べられたなぁ」と思いながら見ておりました。良い作品ですので、お声がけくださればどこへでも彼は出掛けていって、上映しながら石井さんの思いをわかりやすくお話して下さるはず。今回の上映会後にも、そうしたプランを考えようという話が持ち上がっていました。

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保母さんをしているという人は「力のある絵本に、子どもは良い顔をする。こういう態度で作ってこられたとわかり、石井さんに感謝する。人間を80年の大きな木に例えたら、土の中の根っこを育てる仕事だ。たとえ子どもたちの記憶に残らなくても、幸せだった時間にしてあげたい。」と話されました。

子どもたちの根っこになるよう優しく、たくましく、頑張って活動されている彼女たちの参加を得て、とても良い時間を過ごすことができました。森監督を始め、参加して下さった皆さまに心から御礼を申し上げます。

 

 

 

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