おもちゃ映画ミュージアム
おもちゃ映画ミュージアム
Toy Film Museum

2019.05.30column

「文化」保存の話題、4つ

IMG_20190530_0001 (2)

たまたま目にした今朝の日経新聞文化面に、「京都ニュース」のアーカイブでお世話になっている立命館大学の細井浩一・アートリサーチセンター長の寄稿文が載っていました。ゲーム機とそのソフトを保存し始めた当初は、ゲームを「文化」と考える人は少なくて、「研究費でおもちゃを買ってはいけませんよ」といわれたそうですが、今や海外からもそのコレクションを見学に来られるほどだと、細井先生と一緒に活動をされているゲームシナリオ担当の竹田章作先生からお聞きしたことがあります。このコレクション数はこれまでの20年間の地道な取り組みをされた成果ですね。文末にもお書きになっているとおり、「日本が誇るゲーム文化を後世に残す」ために益々のご活躍を期待しております。

IMG_20190530_0001

IMG_20190530_0002

その竹田先生のお爺様、竹田猪八郎さん(1901-76)が手描きされた映画のポスター100枚をまとめてご覧いただく第2回の展覧会が6月3~9日、同大学アートリサーチセンターで開催されます。委託を受けた当初の記事を読むと、約600枚と書いていますが、少しずつ散逸していたものが戻って来て、現在約800枚。映像が失われたものがほとんどですから、このポスターは当時の雰囲気を知る貴重な資料です。これとは別に映画看板を書くために「タケマツ画房」が参考にした大きなポスター類も相当数竹田先生から受け取っていて、現在ボランティアさんの手をお借りして、リスト化を進めています。これも「文化」の保存の一環として取り組んでいます。

さて、今日ネットを見ていて気になった話題に、鳥塚亮・元いすみ鉄道社長、NPO法人おいしいローカル線を作る会理事長がお書きになった「鉄道博物館展示車両解体に見るこの国の文化度の低さを考える」があります。JR東海は7月17日から新しく名古屋のリニア・鉄道館でN700系新幹線電車の展示を始めるのに伴い、これまで展示していた117系電車と381系電車の一部の展示を終了し(5月17日付け発表)、総合的判断で解体する方針である(5月21日のJ-CASTの取材に対して)と述べたことを受けて書かれたものです。

いろんな制約があり、どれもこれも残すことは実際難しいとは思いますが、「この国は『文明』は確かに発達していますが、『文化財としての価値』を理解すること、つまり『文化』に関してはとても弱いですね」という文言には頷いてしまいます。何も鉄道文化に関してだけでなく、あらゆるものに対して言えるように私には思えます。

このことをFacebookで呟いたところ、5月の展覧会「覗いて、写して、楽しむモノたち展」に出展してくださっている絵本作家の吉田稔美さんから書き込みがありました。彼女の故郷である兵庫県西脇市に廃線後屋外に置かれているキハ車両2両があります。その車両が錆びたまま放置されていたので、市民から「何とかして」という要望が市に寄せられました。当時の市長さんが市の管轄でもあることから実費予算を計上し、吉田さんのデザインで塗り直しがされました。時の移ろいと共にそれもまた色褪せ、機械部分の錆びも進んでいたことから、一昨年塗り重ねをし、昨年はコーティングが施されました。市の財政に余裕がないことから、西脇高校の生徒ボランティアとその予算、ロータリークラブや市民の寄付で賄われたそうです。

西脇電車保存

吉田さんらしいイラストが施されて、可愛らしい車両です。でも、今後もメンテナンスを繰り返していかねばならず、撤去解体には一千万円かかると言われたそうです‼ 鳥塚さんが取り上げた例は保存場所がないことからでしたが、保存場所があっても、屋外保存を継続していくのもなかなかに大変です。まして、鳥塚さんの文章で知りましたが、旧型の鉄道車両に含有されているといわれているアスベストの問題が立ちはだかっていますから、尚更大変です。

「この国が『文化』に関しての理解が弱い」という文言が頭の中をぐるぐる回っている間に、昨年9月にお越しになったお客様から教えて貰った産業技術史博物館構想の顛末を思い出しました。ネット検索すると幻の博物館「国立産業技術史博物館」が目につきました。大阪千里で開催されたEXPO'70の跡地を活用して、産業立国ニッポンの技術の歴史を保存しようと1970年代後半に計画され、30年以上に亘って貴重な資料が集められましたが、2009年3月末で、計画がおじゃんになり、廃棄処分されたそうです。前掲サイトではその数2万3千点以上ということで、あまりの数で「ええっー」と絶句してしまいました。今改めて別のサイト「史料ネット第57号」の中で大阪大学総合学術博物館・廣川和花さんが特別寄稿された「産業技術史資料の廃棄が残した課題」を読むと、機械類は千数百点で数トンの重量のものがほとんど、ダンボール250箱に入っていた紙資料2万点超を含む数のようです。全点目録が存在しないので正確な数はわかりません。いくつかは別の施設に貰われて救われましたが、ほとんど全てがスクラップにされてしまったそうです。この寄稿文によれば、廃棄の直接原因は、保管場所の鉄鋼館の改装にともない、立ち退きを求められたことにあるそうです。昨年9月に聞いたときには「何と酷いことを!」と思ったのですが、産業技術史資料を保存しようと思った場所が鉄鋼館だと今初めて知り、重ねてびっくりしています。

1290ec6d-s

なぜって、今年3月2日に「小さいとこML」の見学会で訪れたばかりの施設だったからです。当日の見学のことはこちらで書きましたが、そうと知っていれば、もっと違った見方ができただろうと惜しく思っています。スクラップにされてしまったニッポンの産業技術の貴重な資料類と引き換えに、と思うと見え方が違うはず。経済情勢の悪化で、身の周りを見渡しても閉鎖、閉店が相次いでいます。企業博物館も厳しい状況に違いありません。これから益々貴重な資料類が行き場を失う可能性を考える時、鳥塚さんがおっしゃる「文明的には先進国にになりましたが、文化的には発展途上国」という位置から抜け出して、もっと「文化」を大切に考える国になってほしいと願わずにはおれません。

 

記事検索

最新記事

カテゴリー

月別一覧