おもちゃ映画ミュージアム
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Toy Film Museum

2020.06.06column

今日の午後2時から、NHK BS 8 Kで黒沢清監督『スパイの妻』放送‼

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夕べの京都新聞掲載の写真は綺麗だったんですけど、すみません。黒沢清監督が最新の8Kカメラで撮影されたドラマ『スパイの妻』が今日の午後2時から放送されます。5月31日11時からそのドキュメンタリー番組がBS4Kで放送されたばかり。番組を視聴するには、それに対応した受信設備が必要とのことらしく、時間的にも経済的にも余裕がなく、4Kも8Kも縁がない身ですので、観ること叶わず。ですが、ご覧になれる環境の方は、ぜひどうぞ‼

実は、この作品に当館所蔵9.5㎜のアルマ映写機をお貸ししました。そのご縁もあって、昨年10月31日神戸市塩屋にある旧グッゲンハイム邸で行われた撮影現場を見学させて貰いました。

貸出にあたって台本を頂いていたのですが、…太平洋戦争前夜の神戸が舞台で、満州事変以降、不穏な空気を感じ取っていた貿易商の男は、妻を残し彼の地へ赴く。そこで男が見たものは世にも恐ろしい国家的犯罪行為だった。…

そうか満州事変、満州から連れ帰った女の死、映画が描くのは、今自分が最も関心を持つ時代の事ではないかと、今頃気付き「観たいなぁ」という気持ちが募ります。ご覧になれる環境の方がどれくらい居られるのか分かりませんが、正直羨ましいです。

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塩屋駅から少し歩いて、JRの小さな踏切を越え、階段を上がった所に素敵な洋館、旧グッゲンハイム邸があります。知人達がよくここで無声映画の上映会をされているので、古い建物が好きなこともあって、一度は訪ねて見たいと思っていた館です。このような願ってもない機会に、その夢も叶いました。スタッフの方達は、この後掲載する洋館内の調度品などを人海戦術で運ばれました。さぞかし大変な作業だったことでしょう。

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のんびり出かけた頃には、室内外にセットが組まれ、スタッフの人たちがてきぱき作業を進めておられました。

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多くの設えが、昔から、そこにあったような調和した美しい室内風景ですが、大きな本箱にしろ、クローゼットにしろ、あらゆるものが実は大道具さん小道具さんが作られた美術セットなのだと聞いて、その技術の高さに唸りました。その一角にお貸ししたアルマ映写機が鎮座していました。うちにあるときは、他の映写機に混じって没個性なのですが、まるで主役のように鎮座していて、その光景が眩しかったです。

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映写機が言葉を話すことができたなら、「いや~、嬉しいなぁ‼」と照れているはずです。この映写機を女優の蒼井優さんが、慣れた手つきでフィルムを装填し、暗くした室内で映写されます。小型映画研究者の飯田定信さんが東京で蒼井さんに扱い方を指導されたのだそうです。所蔵してはいても、機械が苦手で避けている私ですが、女優さんは役に応じて何でもこなさないといけないので、大変だなぁと思います。

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 奥に黒沢清監督の姿が。監督がおられる部屋は主人公達の寝室で、大きなダブルベッドが設えてありました。これもあの狭い石の階段を歩いて運ばれたのかと思うと、大変だなぁと汗が噴き出ました。亡くなった母がよく言っていました、「世の中で大変じゃない仕事なんてない」と。全く。

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この映写機は、うちに来るまでどんな世界を見ていたのかはわかりませんが、きっと相当お金持ちの家に置かれて、このようなサスペンスに巻き込まれるようなこともなく、家族の人たちや周辺の人たちに動く絵を楽しませてきたのでしょう。でも、製造されてから1世紀ほど後に、綺麗な女優さんの手によって上映される機会が来るとは思ってもみなかったことでしょうね。残っていればこそ、です。

DSC02184このステンドグラスも美術さんの手によるもの。映写機のシルエットを記念写真に撮りました。

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そのステンドグラスの外には、青い海が広がっていました。5月31日ドキュメンタリー放送前にTwitterで番組を紹介したところ、「天気が良ければ淡路島が近い」と教えてくださった方がおられました。とても見晴らしのいい場所です。今はデュルトというグループが100年近く経つ旧グッゲンハイム邸の維持管理をしておられ、幸いなことに、この日の出会いを縁に当館のチラシも置かせて頂いています。

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この日撮影最後部分に、日頃お世話になっているシネマトグラファー石井義人さんの出番です(黒沢監督の前の男性)。

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日が落ちた後の撮影中の洋館。翌日は別の場所で撮影するそうで、つい気になって美術の人に「撮影が済んだら、あの調度品などはどうするの?」と尋ねましたら、「壊す」と聞いて、勿体ないと思いました。同様にデュルトの方も思われたらしく、いくらかはこのまま残すことに。良かった、良かったと心底思いました。美術製作したものは、あくまでも撮影用ですので耐用を考えていないことから、普段使いは難しいかもしれませんが、展示するだけならバッチリだと思いました。次に訪問するときに、それを確認するのも楽しみです。

撮影現場は、もっと賑やかなものかと思っていましたが、とても静かで粛々と進んでいました。監督さんのキャラクターにもよるのでしょう。今展示している第四の巨匠と讃えられた成瀬巳喜男監督の撮影現場も「ほぼNGなし。セットは静かでみんなヒソヒソ話」をしていたようですし、古川ロッパも「成瀬組はまことに能率的でムダ待ちが殆ど無い。トントン行くので気持ちがいゝ」と書いていて、似たような雰囲気だったのかも、と思っています。間近で高橋一生さんと蒼井優さんを見て、ミーハーな私は舞い上がりそうでしたが、その雰囲気に応じて、じっと我慢していました。そのことも含めて良い思い出になった一日でした。

番組は、もうすぐ始まります‼

 

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