おもちゃ映画ミュージアム
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Toy Film Museum

2022.03.22column

2年間続いた「大阪芸術大学映像学科歴代学生映画上映会最後のプログラムのご案内

一昨年2020年4月1日から始めた「大阪芸術大学映像学科歴代学生映画上映会」(First Pictures Show 1971-2020)は、明日からの短編2作品上映を以って一旦終えます。2年間にわたり、毎週替わりで上映した作品の総数は99本(短編やアニメーション作品を加えると100本以上)。お忙しい中、見に来てくださったお客様はもちろんのこと、貴重な作品の上映に賛同して協力してくださいました卒業生の皆様にも心より御礼を申し上げます。

韓国から留学されていたぺ・テス監督によれば、同国では学生の作品もみな国の映像資料院で保存されているそうです。もちろん彼が大阪芸大時代に作った作品『GONG』(2003年制作、35ミリ。当館上映は2020年7月1~5日)も映像資料院で保存されています。映画やテレビ制作の現場、ゲーム、アニメーション、広告、ネット業界、教育の場と幅広く活躍している映像学科の卒業生や出身者は大変多いです。彼らが学生時代に自由に作りたいものを仲間と一緒に作り上げた作品も同様にアーカイブするべきではないかと思って始めた取り組みです。この蓄積を大切にして、形を変えて、いずれ改めてご覧いただく場を設けたいと考えています。ご協力いただいた皆様には、どうぞ引き続きよろしくお願いいたします。

今回は短編2作品を上映します。

最初に、増田龍治監督『のちのおもいに』(1990年度、16mm、カラー、スタンダード、22分)。

授業を抜け川辺で、水切り(石切り)をして遊ぶ女子学生と読書する女子学生の千乃と鈴美は、川を流れていくいくつもの茄子をみかける。なぜ茄子がたくさん流れてくるのかを知りたいと思った二人は教室に戻らずに、川の上流へと向かう。そこで、一人の老人と出会う。「何をしているのか?」と尋ねる老人に、二人が茄子のことを話すと、老人は「古い茄子は使いもんにならんから捨てる。丹精込めて作ったものでも時期を過ぎたらこうやって流してやらんとなぁ」と言って、茄子を川に投げ入れる。そして老人が被っている黄色い帽子にも妻との思い出があった。

増田監督から先ほど制作意図が届きましたので、コピペします。

……学生の頃は、記憶とか思い出とか、そうした曖昧なものに儚さを感じていてノスタルジーな空気に心地よさを感じてました。この作品もそんなテイストです。

楽しい思い出も、悲しい思い出も、みんな流れていくんじゃないか?と思ったのです。

しかし、今、実際に歳をとってみると、ノスタルジーにひたる事はまったく無くて、今は今だな、むしろ今最高だなと思って暮らしています。

現実は、学生時代の想像とは違いましたね(笑)……

増田監督は文化庁メディア芸術祭受賞作家で、京都造形芸術大学キャラクターデザイン学科学科長も歴任されました。2000年『ポピー・ザ・ぱフォーマー』は12万枚もヒットし、2002年度コロムビアゴールドディスク大賞を受賞されています。『ガラクタ通りのステイン』『Funny Pets』など数々の作品で活躍されています。前回3月3~7日に上映した『未完成』(1989年)の時は新作『星に語る恐竜』予告編をご紹介しました。とても素晴らしい作品です。

もう1作品は佐藤早苗監督『トカトントン』(2019年度、DV、カラー、ビスタサイズ、35分)。第14回アジア国際青少年映画祭(2021年)グランプリ作品です。同映画祭で日本の作品が初めてグランプリに輝きました。あらすじは、以下に。

両親の死をきっかけに火葬場で働き始めた典子は、これまで度々人の死を目にしてきた。火葬場 から出てきた骨。数日前まで肉体を持ち呼吸をして、喜んだり悲しんだり、確かに生きていた命 が「物」に変わった瞬間。それを目にする度に典子は人生に一体何の目的があるのか、一体何の意味があるのかと思う。そんな典子が、病に死にゆく速雄、火葬場職員の小野、そして太宰治の短編小説『トカトントン』を通じて死を見つめ生を問う物語。

佐藤監督の今後の活躍を祈って、一連の「FIRST PICTURES SHOW 1971-2020」の大トリを飾る作品に選びました。これからも頑張ってよい作品を生み出して下さることを心より期待しております。

 

3月30日からは、学生映画の上映はなく、10時半から17時まで通常のミュージアム営業に戻り、午前中から見学ができます。開催中のアニメーション作家 渡辺栞さんと端地美鈴さんの作品『にょきにょきかんさつにっき』は、この日より以下の3作品ずつ上映になります。根気強く制作されたコマ撮りアニメーションの力作を、ぜひお一人でも多くの方にご覧いただきたいです。

渡辺栞さん▼『ワタヤ』(2017年)▼『忘れたまり』(2018年)▼『とけるぼん』(2022年)

端地美鈴さん▼『夜の道路工事』▼『膿んだ星のうた』(2020年)▼『Hobo's lullaby』(2021年)

詳しくは、こちらで書きました。

 

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