おもちゃ映画ミュージアム
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Toy Film Museum

2022.05.19column

映画『教育と愛国』そして、「毎日戦中写真アーカイブプロジェクト」始動

5月16日18時から、丸善ジュンク堂京都店で上映中の映画『教育と愛国』の斉加尚代監督×藤原辰史・京都大学准教授の対談がありました。対談を聞きながらメモしたことをSNSで書きましたら、思っていた以上に反響がありましたので、ここにも書きます。
「強く、ひっぱたいているように見える政治を特に大阪では民衆が支持し、そうした政治家が喝采を浴びている」と斉加さん。経済力が落ち、文化力も落ちている日本では、賃金を下げ、人権を壊しに来ています。自己責任が声高にいわれ、行き場を失った人々が自殺する、人に優しくない社会です。
会場におられた歌人で細胞生物学者の永田和宏先生が「『愛国』の言葉がひとり歩きする状況は非常に怖い」「メディアは聴衆に飽きられることを恐れて、すぐウクライナにいって、ミャンマーを忘れるが、『忘れない』ことが大切だ」と話されました。
 
斉加さんは「辺野古の問題で普通の生活を守りたいお年寄りにフェイクやバッシングが及んでいる。プロの取材者はその前に出ないと状況が改善されない」と話しておられました。今こそ、メディアの一層の奮起を促したいです。
 
「歴史から学ぶ必要がない」と明言した歴史学者で東京大学名誉教授の存在を初めて知りましたが、ネットでこの方の対談を読んでいたら「僕はずっと安部さん(安倍晋三元首相)の支持者だから」という発言がありました。いやはや。この名誉教授は斉加さんに「あなたの映画には期待しません。あなたは偏っている」とはっきり言われたそうです。歴史教育の今後を考えると空恐ろしく感じました。『教育と愛国』観に行こうと思います。
写真は、対談後に一瞬マスクを外しての撮影タイムで。
 
そして、今朝19日の毎日新聞は「毎日戦中写真アーカイブプロジェクト」がスタートするという記事を、1面だけでなく、13面全てを使って特集記事を掲載していました。「歴史から学ぶ必要がない」と明言した前述の名誉教授がおられた東京大学で、18日共同研究者の渡邉栄徳東京大学大学院教授と貴志俊彦京都大学教授らがプロジェクトの共同研究発表会をされた内容が詳しく紹介されていました。貴志先生とは、3月の第17回大阪アジアン映画祭で上映した『おもちゃ映画で見た日中戦争』について、公式パンフレットで執筆いただいたことを契機に交流が始まりました。紙面を読みながら、良い先生と繋がれたと嬉しく思っています。
 
毎日新聞大阪本社には、満州事変(1931年)から太平洋戦争末期までの約15年間にわたる、中国大陸や太平洋戦争地域などの戦地で、同社特派員が撮影した写真やネガが6万点以上残っているのだそうです。幸いに戦火を免れ、さらに戦後の戦犯裁判の証拠とならないよう日本軍から焼却を命令されたにも関わらず、こうして貴重な記録が残った背景には、当時の高田正雄大阪本社社会部長の判断があったとのこと。高田さんは「特派員たちが命を懸けて撮影した写真を焼くことなどできるものか」と守り抜くことを決断し、大阪本社の地下金庫室に隠しておいたそうです。なんだか、映画『スパイの妻』でパテ・ベビーで撮影したフィルムを隠したシーンを思い出します。
 
貴志先生は「取材陣がどこへ行って、どういうチームで、何を報道したのか。死を覚悟して取材しているので、苦悩もある。家族も抱えており、人生も反映している。悪戦苦闘の軌跡を、毎日戦中写真を通して追っていく」と話しておられます。安全なところにいて、兵士を思うがままに操れると思っている権力者側には「過去を学ぶ必要がない」と考えられるのかもしれませんが、その兵士一人一人が置かれた環境、抱える思いを決してないがしろにしてはならないと思うのです。今、ロシアによるウクライナ軍事侵攻が毎日報道されています。21世紀になってこのような戦争が起きるとは誰も予想できなかったのですが、だからこそ、歴史に学ぶことは大切だと私は思うのです。
 
地道な作業の積み重ねだろうと思いますが、大切な取り組みです。完成は戦後80年の2025年だそうです。期待して待ちます‼

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