おもちゃ映画ミュージアム
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Toy Film Museum

2022.09.07column

3日「川端康成『伊豆の踊子』とその映画化」と題して講演していただいた福田淳子先生から届いた贈り物💗

3日に開催した川端康成没後50年記念イベントで、「川端康成『伊豆の踊子』とその映画化」の演題でお話し頂いた福田淳子・昭和女子大学教授から贈り物が届きました。
鳥取県智頭町の“タルマーリー”で作られた野生の菌で醸した美味しそうなパンの詰め合わせ💗良い匂いがしていたので、その中の一つ“全力豆乳バナナ”(写真一番下の左から2個目)をパクリ。水を一切入れず、酒種、有機バナナ、豆乳の水分だけで作った生地は本当にふんわりして、もちもちした食感。
 
このオーナーシェフ渡邉格(いたる)さんのお名前に「何だか聞いたことがあるなぁ」と検索したら、評判の『田舎のパン屋が見つけた「腐る経済」-タルマーリー発、新しい働き方と暮らし-』の著者でした。おそらく新聞の書評で読んだのでしょう。
 
ご夫妻は東京出身ですが、智頭町に移り住み、廃園になった保育園を改装して、スタッフと共に野生の菌だけで発酵させるパンとビールを製造販売し、カフェも営んでおられます。試行錯誤しながら今があるのですが、智頭を選ばれたのは、水と空気の綺麗な環境でないと麹菌が採取できないからだそうです。
 
ところで、なぜ智頭町から福田先生が?と思ったら、講演の翌日智頭町にある同町出身、西河克己映画記念館へ行かれて調査をされたのだそうです。3日に上映したのは①五所平之助監督が1933年に田中絹代主演で作った『戀の花咲く 伊豆の踊子』で、この作品が映画化の最初。続いて②1954年に野村芳太郎監督、美空ひばり主演作③1960年に川頭義郎監督、鰐淵晴子主演作④1963年西河克己監督、吉永小百合主演作⑤1967年恩地日出夫監督、内藤洋子主演作⑥1974年西河克己監督、山口百恵主演作。川端の『伊豆の踊子』は原作発表後、6回も映画になっています。西河監督はそのうち2作品を手掛けておられるのですね。
 
このうち最も評価されているのが、原作と最も異なっている五所作品なのだそうです。いろんな伏線が効いていて、小物使いもうまく、とても良いお話でした。ヒロイン役では23歳で演じた田中絹代が最年長ですが、10代の役を旅の気配と共に初々しく演じていてさすがでした。この映画で田中絹代は女優としてやっていこうと思ったのだそうです。
 
早速、西河克己映画記念館を検索すると1930年ごろに建てられた素敵な洋館です。同じ敷地内にある1897年ごろ建築の和風建物と共に国の登録有形文化財に登録。前身はキリスト教の教会堂でしたが、西河監督から映画関係の資料が寄贈されたことから、2001年に塩屋出店・西河克己映画記念館として活用が始まったそうです。
 
ともあれ、福田先生と第2弾もしようと話しています。その時に智頭での話も聞けたら良いですね。福田先生、評判のパンをお贈りいただきありがとうございました‼
 
 
【追記】昨日、4日に10日間に及ぶインターンシップを終えた京都芸術デザイン専門学校の学生さんから、五所監督『戀の花咲く 伊豆の踊子』を観た感想が届きました。前回書きました通り、本当におとなしい二人で、ほとんど声を聞かないうちにインターンシップを終えた印象があります。その二人にも、西村小楽天さんの活弁付きで1974年に上映されたバージョンを他の参加者の皆さんと一緒に観て貰いました。
 
・モノクロで音声のない古いタイプの映画ということは聞いていたので、カラー映像や音声付きに慣れている私たちにとっては難しい内容で理解しにくいかもしれないと思っていたのですが、実際に観てみると、意外に物語が理解できて驚きました。妹の恋を非常に応援したくなるような、そんな内容でした。
 
・活動弁士という存在を初めて知り、当時はこんな風に映画を観ていたんだ、と勉強になりました。洋服と着物を着ている人がいたので、どんな歴史背景があるのかが分かることも古い映画の面白いところだと感じました。そのような部分も作品の良いところだと感じます。古い映画への価値観が変わり、私が普段通りに過ごしていたら知ることができないようなものに出会うことができました。原作についても気になります。他の『伊豆の踊子』の作品も観てみたいと思いました。非常に貴重な体験をありがとうございました。
 
・今まで過去の映像を拝見させていただく機会があったのですが、無音の中、語りの方がいる映像を観たのは初めてだったので、驚きもありました。カメラの視点や出演者の表情やしぐさが、無音の中伝わってくるのが凄いと思いました。いろいろと勉強になる充実した一日でした。本当にありがとうございました。
 
 
初めての活弁付き無声映画の鑑賞を、好意的に受け止めてくれたことを嬉しく思います。会場には7月30日坂本頼光さんの活弁と天宮遥さんのピアノ生演奏付きで『吸血鬼 ノスフェラトゥ』をご覧になって、こうした上映会に魅了され、参加申し込みをしてくださった若い男性もおられました。無声映画鑑賞の裾野が広がっていくのは、何とも嬉しい限り‼
 
1974年にご覧になった観客の笑い声に、今日受ける感覚と異なる箇所を見出したのも興味深く思いました。改めて映画は、それがつくられた時代を知ることができ、それをご覧になる時代によって受け止め方が違ってくることを体験させていただきました。私も時間に余裕があれば、9月24日茨木クリエイトセンターでフィルム上映される西河克己監督版『伊豆の踊子』を観に行って、見比べてみたいです。

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