おもちゃ映画ミュージアム
おもちゃ映画ミュージアム
Toy Film Museum

2015.06.17column

パズルが埋まった瞬間

当館では入館されたお客さまに、復元した無声映画の中から50種類ほどの作品を選んで編集して作った35㍉フィルム栞か缶バッジをプレゼントしています。今日最後に来館された男性は、迷うことなく長谷川一夫(林長二郎)の出演作品を選択。後に聞けば、趣味で彼の研究をしている方でした。膨大な数のポスターをコレクションし、中にはまだ有名になる前のデビュー作も。「いつかポスター展をしましょう」と提案し、賛同していただきました。

これまで修復・保存した「おもちゃ映画」は約900本あり、それぞれ30秒から3分程度の短いものですが、その中から長谷川一夫出演のものをご覧いただきました。7、8本はあったと思います。その中にタイトルが不明で「長二郎の殺陣」と仮見出しを付けていた作品があり、1928年松竹下加茂で製作された「京洛秘帖」(衣笠貞之助監督)だと教えていただきました。パズルが埋まった瞬間に立ち会えた喜び。コレクションした「おもちゃ映画」には、このように詳細不明なものがたくさんありますので、来館者の皆様に教わりながら、少しずつでも明らかになれば良いなぁと思います。

で、この男性と一緒に改めて長谷川一夫さんの作品を観ると、その動きのキビキビした様子、殺陣の美しさに思わず「ホーッ」とため息が出ます。舞踊をされていたことも大きいのでしょうが、観る人の目を引き付ける立居振舞の美しさ。上映後の映画は、こうして切り売りされてお茶の間で投影して楽しみ、子どもたちは、チャンバラごっこして遊んだのでしょう。短くても今に残ったフィルムから昭和の初めのころを想像し、ただ漠然と上映していたものが、違う輝きをもって心に響いてきました。(文)

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