おもちゃ映画ミュージアム
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Toy Film Museum

2018.07.12column

第13回「映画の復元と保存に関するワークショップ」初日、関西文化学術研究都市施設見学コースのご紹介

毎夏に開催している「映画の復元と保存に関するワークショップ」は回を重ねて、今年13回目を数えます。初日の実習・見学は7コースを設定。そのうちの一つに、関西文化学術研究都市(通称:けいはんな学研都市)施設巡りを計画しましたので、お申し込みの目安になればと思い、下見をした模様も含めてご紹介させていただきます。ワークショップの参加申し込みも含め、全体につきましては、こちらをご覧ください。申し込み受け付けは7月20日(金)10時開始です。人気のセミナーで先着順となりますので、早めにお申し込みいただければ幸いです。

 

今はWSのことで小さな頭がいっぱい。そんな折、8 日来館のお客さまが、国会図書館本館で研究のため貴重な音源をよく聞くということでしたので、その体験談をお聞きしました。特別室での視聴は係員が立ち合い、1回のみで、繰り返しの視聴は不可。デジタル化されたものを見やすくする操作知識も必要らしく、なかなか使い勝手が良いとは言えないもののようです。しかしながら、貴重なものを後世に残しつつ、今の人もアプローチできるようにデジタル化して保存されていることは素晴らしいことです。

彼は例えとして「本物の浮世絵を見た時の感動は忘れられない。半襟の絵模様が立体的に描かれ、それを見た欧米の人が『おおっ!』と驚愕したのもわかる」と言います。デジタル化したものからは、そうした本物のみが放つ素晴らしさは伝わりにくいでしょう。アナログとデジタルそれぞれの良い点、悪い点も踏まえ乍ら、貴重な資料が後世に残されるのは何とも心丈夫なことです。翻って映像に関して言えば、今やデジタル保存すれば、それで事足りるといった世の中の趨勢ですが、デジタルは万能とはっきり言い切れないのも今の実情でしょう。実際、下見に行った公的機関で映像保存を担当している人も「現時点ではフィルムの方が信頼がおける」と話しておられました。

さて、前述の来客に「今度、国立国会図書館関西館見学を計画している」と申しましたら、「あそこも遠いんでしょう?」と即返って来ました。はっきり言って、遠いと感じる人が多いでしょう。でも、実際に行かれた方がそんなに多いとも思われず、こうした機会に国家的プロジェクトとして発足した関西文化学術研究都市の一端を見てもらおうと計画しました。

奥田東・元京都大学総長を座長とする関西学術研究都市調査懇談会が発足したのは1978年9月のこと。今年はそれから40年の節目です。実は私、この日最後に見学予定のけいはんなプラザ最上階の13階にあった某企業に、プラザ竣工と時を同じくして1993年4月から6年間通い続けました。1986年から始まったバブル景気が1991年3月にはじけ(バブル景気が減速したことを政府が公式に認めたのは1992年2月のこと)、1993年10月までをバブル破たんと呼ぶようです。国、京都・大阪・奈良の2府1県、関西経済界が一丸となって推し進めたけいはんな学研都市構想で動き始めたブルドーザーが広大な土地を整地し、巨大な研究施設が次々建つのを毎日最上階から眺めていました。

景気の後退につれ、開発は遅々としましたが、今回の「第13回映画の復元と保存に関するワークショップ」の見学地の一つとして提案し、その下見を兼ねて久々に訪れたところ、その街並みの変貌ぶりに驚きました。立派な研究施設や企業の建物が次々できていて、街路樹の成長もあり、緑豊かな広々とした立派な街に成長していたからです。

今回の見学会では3つの施設を見学します。真夏の開催であり、建物自体が巨大なのでかなり歩きます。ですので、募集案内サイトには「健脚向け」と書いています。帽子、飲み物、歩きなれた靴と動きやすい服装で参加をお願いいたします。

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8月24日(金)13時、京都府相楽郡精華町(そうらくぐんせいかちょう)のJR祝園(ほうその)駅・近鉄新祝園駅前のタクシー乗り場集合。タクシーに分乗(自己負担不要)し、13時10分に最初の見学施設「けいはんなオープンイノベーションセンター(KICK)」に到着。

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2003年に581億円を投じて厚生労働省所管独立行政法人雇用・能力開発機構が設置した「私のしごと館」でしたが、「無駄遣いの象徴」として批判を浴び、2010年に閉館。2014年に国際的なオープンイノベーションの研究開発拠点として再生するために国から京都府に譲渡され、2015年4月から、(公財)京都産業21が管理運営をしています。

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京都府相楽郡精華町と木津川市にまたがり、敷地面積8.3万㎡、延床面積3.5万㎡の地上3階建て。名誉会長は長尾真氏(京都大学総長の後、元国際高等研究所所長、元独立行政法人情報通信研究機構理事長、前国立国会図書館長を歴任して、現在)。

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通常は建物全体の見学は不可ですが、特別に許可して貰いました。当日は林靖所長様から全体の説明を受けた後、館内を案内して貰います。写真は3面の大型スクリーンがある120席の円形シアター。

自立ロボット等の開発・実証に必要な環境を整備して、実用化を目指す企業が共同で利用できる「けいはんなロボット技術センター」は、実際の見学時にどれ位進んでいるのでしょうか。京都府は学研都市への関連企業の集積を狙い、「様々な知見や技術を持つ世界の企業をけいはんな学研都市に引き寄せ、日本の『ロボットバレー』に育てたい」と意気込んでいます。

同館の研究開発テーマのひとつに、蓄積された文化資源等「モノづくり」の保存・継承やアーカイブ化も挙げています。京都府は2014年、日本文化財保存修復国際センター構想の実現をめざして、京都国立博物館を研究機関として認定し、翌年11月から同博物館は文化財保存修復技術の研究開発や保管環境のあり方等に関する研究を始めています。目的にも合うと思い見学を希望しましたが、叶わずでした。

やや脇に反れますが、先日NASA(オーストラリア国立映画・音響アーカイブ)のサイトを見ていて、そのコレクションの幅広さに驚きました。映画、テレビやラジオ番組、オーラル・ヒストリー、ビデオ、オーディオテープ、レコード、コンパクトディスク、蓄音機のシリンダーとワイヤ録音、写真、ポスター、ロビーカード、宣伝アイテム、脚本、衣装、小道具、フィルム機器、論文、組織記録等々。映像と音声、音に関するあらゆるものを次世代に継承しようとする姿勢を、とても羨ましく思いました。どちらかといえば「文化」が抜け落ちている関西文化学術研究都市だからこそ、名称に相応しく、こうした文化を幅広くアーカイブできるような施設が例えばKICKのような施設を利用してできないものか―と願っています。

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KICK2階に今年4月14日開所したばかりの「SEIKAクリエイターズインキュベーションセンター」(630㎡)。アーカイブに力を入れている凸版印刷、マンガ学部がある京都精華大学、世界レベルのネットワークシステムのシスコシステムズ、子どもたちに科学体験教育を行うことを想定している「科学のまちの子どもたちプロジェクト」(K-Scan)、それに精華町と京都府がコンソーシアムを形成して整備(約4000万円)。今年度から運用方法について検討し、いずれは一般向けに公開していく予定だそうです。

約40分の見学後、タクシー(自己負担不要)に分乗して、見学2番目の施設、国立国会図書館関西館へ向かいます。

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途中目にする日本郵政新築工事現場(2018年1月15日~2019年10月7日予定)。また巨大な建物ができるようです。

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今年4月に竣工したばかりの三菱UFJ銀行関西ビジネスセンター。

DSC05135 (3)サントリーワールドリサーチセンターは、基礎研究や技術開発の機能を集約した研究開発拠点として、2015年5月に竣工しました。

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2番目の見学施設、2002年10月に開館した国立国会図書館関西館に到着(13:55)。敷地面積8.3万㎡、延床面積5.9万㎡。書庫収蔵能力600万冊。建設設計は、国際コンペで応募があった493作品から陶器二三雄さんの作品が選ばれました。現在は第2期施設が来年度竣工をめざして工事中です。電子図書館システムなど書庫ツアーを含めて70分間見学の後、同館が取り組んだSP盤レコードの保存事業(2007~2013年度)についてお話を伺います(約20分)。1900年初頭から1950年頃までに国内で製造されたSP盤・金属盤等に収録された音楽・演説等約10万点のうち、約半分程度の音源がデジタル保存され、その歴史的・文化的資産である「歴史的音源」は、公立図書館などで聴くことができます。

近年増加する電子書籍・雑誌は、技術面や著作者への補償問題が壁となり、一部しか納本に至っていない(2018年6月1日付け日経新聞参照)そうで、ここでもデジタル時代の課題があります。

担当者からお話をお聞きした後は館内を自由見学、または4階カフェテリアで休憩(35分)して、16時に出発します。3番目の見学施設けいはんなプラザへは徒歩で移動します(約7分)。

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けいはんなプラザ(京都府精華町光台。敷地面積2.5万㎡、延床面積4.0万㎡)。北極星を指す日時計(箕原真設計)の針は、高さ約20m、長さ約35mのチタン製。文字盤面積3877.86㎡が文字盤面積世界一としてギネスブックに記載されています。

1987年6月に関西文化学術研究都市建設促進法(この時に文化の2文字が入りましたが…)が公布・施行され、1989(平成元)年8月文化学術研究交流施設設置運営主体として㈱けいはんなが設立、1993年4月に竣工・オープンしました。

しかしながら順風満帆とはいかず、バブル崩壊その後の景気停滞もあり2008年の民事再生手続きを経て、ラボ棟(屋上にヘリポートがある13階建て)、住友ホール(左の円形建物)と、そのホールの奥に位置するスーパーラボ棟を京都府へ寄付し、ラボ棟、スパーラボ棟は府から無償貸与、名称が変更された京都府立けいはんなホールの指定管理者として再出発しました。今年4月に、理化学研究所のips細胞創薬基盤開発連携拠点「バイオリソース研究センター」がスパーラボ棟に開所しました。写真右半分は交流棟で、右端に写る「けいはんなプラザホテル」(客室4~6階)は、京都市内で宿の手配が難しい場合の選択肢の一つに、ご検討いただければ幸いです。

DSC05160 (2)当日は、㈱けいはんなの荒木康寛社長様のご厚意で、けんはんな学研都市全体の説明を受け、13階から街並みを展望し、入居施設のいくつかを見学させてもらいます(写真はプラザから東を見た眺め。西の眺望は当日のお楽しみ。所要約1時間)。東の筑波研究学園都市に対抗して、京都・大阪・奈良の3府県にまたがる丘陵に国家的プロジェクトとして建設・整備が進む「けいはんな学研都市」には、現在140を超える研究施設、大学施設、文化施設などが立地しています。

プラザからは、京都駅と関空への直行バスが運航しています。そこで、当日の解散は祝園駅としていますが、希望者は奈良交通の京都駅行き直通バスの「けいはんなプラザ」18時発に乗り、京都駅八条口18時55分着も可能です(片道700円、所要46分)。

本来の計画に沿ったご案内に戻れば、けいはんなプラザから徒歩3分の奈良交通バス「ATR前」バス停に行き、17時23分発連節バス「YELLOW LINER華蓮(かれん)」に乗車して、祝園駅17時38分着(260円)。新祝園駅発近鉄電車急行17時48分に乗車し、京都駅18時18分着(490円、所要30分)となります。

今回、脳情報通信、ロボット及び無線通信の分野を中心に研究開発をしている「ATR(㈱国際電気通信基礎技術研究所)」(1989年4月開所)の見学を検討しましたが、セキュリティが厳しくなっていて、一般見学不可ということで叶いませんでした。

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今年3月30日から走行している連節バス。写真右方向先にある光台3丁目から祝園駅を結びます。今年2月に光台3丁目に竣工し、350人体制で業務を開始した日本電産㈱生産技術研究所(代表取締役会長兼社長永守重信氏)は、2~3年後に1000人体制になる見込みで、朝夕ラッシュ時の輸送力 強化と、マイカーから公共交通へ転換を図ることにより二酸化炭素排出量を削減する狙いもあり導入されました。

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スウェーデン製のエンジンにオーストラリア製の車体で、定員が従来の約1.5倍の130人。可愛いので、ぜひこれに乗って貰いたいと行程に入れました。

先に京都駅とけいはんなプラザを結ぶ直行バスがあると書きましたが、京都駅八条口7時25分発の京阪直行バスに乗車して、KICK前で8時02分下車、あるいは京都駅八条口7時55分発奈良交通直行バスに乗車し、KICK前で8時32分下車して、「けいはんな記念公園」に行かれるのもオプションとしてお勧めします。学研都市建設を記念して、1995(平成7)年に開園。棚田など日本の文化や自然が感じられるよう設計されていて、四季折々の美しい風景に出会えます。

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現代の回遊式日本庭園「水景園」。延長123m、水面上約10m、幅4mの歩廊橋「観月橋」に繋がるのが、奥に見えている大きなジャングルジムのような形をした交流施設「観月楼」。

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 水景園の巨石群。岡山県犬島産の御影石で、重さ20~70t、約500個からなる延長150mの壮大な空間をぜひ見てもらいたいです。水景園入園料は200円ですが、満60歳以上は年齢証明書の提示で無料になります。開園は9時~17時。庭園を管理しているのは、嘉永元(1848)年創業の京都の有名な植彌加藤造園㈱です。京都駅でお弁当を買って、綺麗な庭を眺め乍らお昼を食べてから、KICK前に集合でも構いません。その場合は、前もって連絡をお願いします。

真夏の施設見学会です。最初にも書きましたが、健脚で体力に自信のある方の参加をお願いします。楽しい一日になりますよう全力を尽くします。当日お会いできますことを楽しみにしています。

 

 

 

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