おもちゃ映画ミュージアム
おもちゃ映画ミュージアム
Toy Film Museum

2020.01.28column

出会い、再会、その喜び

1月22日は、京都ノートルダム女子大学の岩崎れい先生が、ゼミ生を引率して見学に来てくださいました。岩崎先生が「こういう施設があることをこれまで知らなかった」と仰っていたので、まだまだ知られていないのだなぁと実感しました。「やっていくことはまだまだある。頑張らなければ」と思った次第。個人では来てくださった方がひょっとしたらおられるのかも知れませんが、京都ノートルダム女子大学から団体で来てくださったのは、おそらく初めてのことだと思うので、出会いがとてもありがたかったです。学びの場として活かして貰えたら嬉しいです。

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そして24日には、名古屋外国語大学の白井先生がゼミの学生さんを引率して見学に来てくださいました。昨年11月30日旧東ドイツを代表する映画音楽作曲家で無声映画の伴奏家としてもご活躍のペーター・ゴットハルトさんをご案内していただいた時に、今回の見学の話を頂戴し、その時が来るのを楽しみに待っておりました。

思わず先生に「先生幸せですね、こんな良い学生さんたちばかりで」と言ってしまいましたが、常設の光学玩具や手回し映写機だけでなく、今展示している岡本忠成さんのアニメーションに関する資料やその映像作品にも、とても興味関心を示してくださったので、張り切り甲斐がありました。

後日先生から「1年間手探りで進めてきたゼミだったのですが、お蔭さまで、最後にとても貴重な体験をしてもらうことができました。フィルムの実物などを見ることができて、皆とても楽しく嬉しかったと言っていました。この4月に就職していく4年生は直接映画に関わる仕事には就かない人がほとんどですが、何かの形で心に留めて生かしてくれるのではないかと願っているところです。」とメールを頂戴しました。春から社会人になる皆さんには「石の上にも3年だよ」と親のような心境になって言いましたが、キラキラした彼女たちの表情から、きっとそれぞれ立派な花を咲かせてくれることと思います。出会いに感謝し、花の成長を楽しみにしています。
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 そして、これは26日にお越しいただいた旧知のお客様と。鈴木重吉監督の次女志村章子さん(緑の上着)がお友達の勝又弘子さんと鎌倉からおいで下さいました。
 
志村さんとのお付き合いは、傾向映画の代表作『何が彼女をそうさせたか』(1930年公開、帝国キネマ演芸)復元から。1993年8月、帝キネ初代社長山川吉太郎さんの孫にあたる暉雄さんが、ロシアでこの作品を発見し持ち帰られたとき、残念ながらそのフィルムは、ロシア語の字幕で、しかも冒頭と最後など約37%が欠落していました。それを志村さんのご協力で、残っていた活弁の台本や新聞スクラップなど資料を参照しながら可能な限りオリジナルに近づけた字幕で補う形で復元。1997年2月の第1回京都映画祭プレイベントで、独のサイレント映画ピアニスト、ギュンター・A・ブーフヴァルトさんの作曲、京都市交響楽団のオーケストラ生演奏で初上映し、大きな反響を呼びました。このことも契機となって、連れ合いは映画の復元と保存、活用をライフワークとするようになりました。
 
志村さん、勝又さんと再会したのは、2013年6月14日~16日に鎌倉を探訪して以来なので、随分久しぶりのことです。その時は茅ヶ崎で、この『何が彼女をそうさせたか』を上映するというので招かれて行ってきました。その折りの探訪録は、こちらに書いています。

http://blog.livedoor.jp/rekishi_tanbou/archives/1747671.html

ミュージアム開館以来、ずっと「訪ねたい」と仰っていて下さったことが実現し、大変嬉しい時間でした。

DSC_1341カラフルな衣装の勝又さん(右端)は洋服を作って「趣味の部屋 比呂」(鎌倉市極楽寺1-3-1)で販売されています。おそろいのベストを着て記念写真を撮りました。これも良い思い出になります

DSC_1350私が着ている古布ベストと上掲上着も勝又さんの作品で、もう1枚ピンクのブラウスもプレゼントして貰いました。紺色の上着は「町家での仕事着に」と見立ててくださいました。今も羽織りながら、これを書いています。陽気で快活で社交的な勝又さんと慎重で控え目で優しい志村さんのお人柄がよく表れている写真です。

心残りは章子さんのジャズを聴けなかったこと。長くジャズを歌っておられることを別れ際にお聞きして惜しく思っています。今度はそれを聴くことを楽しみにしてお会いしたいです。

ようこそおいで下さいました。とても楽しい時間を過ごせました。再会に感謝です!!!!!

 【追記】先にFacebookで、26日の出会いを書いたところ、お読み下さった方から「『何が彼女をそうさせたか』を見たくて見たくて、うわ言のように思っていましたので、おもちゃ映画ミュージアムで上映された時は、天にも登る気持ちでした。期待以上の作品であったことが、この作品以外の傾向映画がハサミを入れられ、消滅させられ、忘却された無念をさらに掻き立てられました。溝口建二の「大都会」など断片でも残って欲しかった」とコメントを寄せて下さいました。当館でこの作品を上映したのは、開館1周年記念として企画した2016年5月22日のことでした。この時は、片岡一郎さんの活弁と上屋安由美さんの演奏付きでご覧頂きました。
 
2018年2月12日に大正6(1917)年生まれの男性から受け取った手紙には、十三劇場で映画を見た記憶も綴られていて、「帝キネ映画が多かったが、日活や松竹のものがかかることもありました。『何が彼女をそうさせたか』は高津慶子の演じる女主人公が、数奇な運命の末、ラストは教会に火をはなち炎の前に立っているという凄い映画でした。大変な評判で、客席は一杯で、多くの観客が立って見ていました。私はまだ幼かったが、これはたいへんな映画と思いました」と書いておられます。90年も前に見た映画が今も記憶に刻まれているほど強い印象を残す作品だったことがわかります。こうした作品が、たとえフィルムが欠落して不完全な状態でも、後世に残すことができて本当に良かったと思います。

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