おもちゃ映画ミュージアム
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Toy Film Museum

2020.03.28column

新収蔵資料、奥田商会の「SLIDE FILM PROJECTOR」

昨日から29日(日)まで、京都のパルスプラザでアンティーク・フェアが開催されています。COVID-19の所為で、どうなるかと思っていましたが、換気や消毒、可能な限りマスク着用、入場者の連絡先を把握するなどの対応をするということで実施されました。気分転換も兼ねて初日に出かけてきましたが、いつもより出店数も、お客様の数も少なくて、少し寂しい感じがしました。

骨董好きなので、欲しいものがいくつも目を惹きましたが、乏しい財布と相談しつつ、いくつかGET。その一つが、東京京橋にあった奥田商会の「SLIDE FILM PROJECTER」。

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手元にあった幻燈スライド用フィルムを装填してみました。この映写機を入れていた専用の箱も付いていました。

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幻燈映写機に付いていたプレート。

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箱に付いていたプレートですが、小さいので読み辛いです。判読できるのは「Simplex-Acme 奥田商會」。惜しいことに、電源コードが失われていましたので、試すことができず。どこかから同じコードが出てこないかしら。。。

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でも、光源の光を集めるための反射盤や200ワットの電球は付いたまま。

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2018年9月9日に「木村白山って、何者?」をしたときに、木村白山作画の奥田商会配給『アクメスライド 如是姫 善光寺縁起』と奥田商会製作発売『アクメスライド 父の反省』(こちらは台本があり、それには(株)奥田商会と書いてあることから、(株)奥田商会の沿革を参照すれば1949年以降の作か)を紹介して貰いました。当時の人々は、このような映写機を使いながら、幻燈を楽しんでおられたのでしょうか。

公開されている同社沿革によると、1922(大正11)年、初代奥田重徳は、立教大学卒業後、米国のアクメ商会(東洋総代理店)に入社します。1931(昭和6)年、アクメ商会東京支店奥田商会として、京橋区(現・中央区京橋)にあった福徳生命(現・第百生命)ビルで独立。その後、アクメ商会はシンプレックス会社と併合したそうです。今回購入した映写機のケースに付されていた小さなプレートに「Simplex-Acme」とあるのは、その証左ですね。

1931(昭和6)年、奥田商会は劇場用35㎜スタンダードトーキー映写機「スーパーシンプレックスアクメ」を輸入して、日本劇場、東宝劇場、日比谷映画劇場、国際劇場、武蔵野館、オデオン座などの一流劇場が建設された時に納入し、設置します。これが日本で最初のことで、映画界がサイレントからトーキーに移行する黎明期のことです。昨年6月15日に開催した長谷憲一郞さんの研究発表で、「横田永之助 トーキーテスト」と缶蓋に書いてある16㎜白黒ポジフィルムの映像を見せて貰いましたが、これは、1932(昭和7)年10月5日に撮影された記録映像「極東フィルム研究所竣工式/日活横田永之助社長の祝辞」の中に含まれていたものでした。東京の方がトーキー化がいち早く進んでいたことが分かります。

続く1932(昭和7)年に、米国フォード社の依頼で、フィルムスライド幻燈機と解説のためのレコードを作ります。私が大好きなアニメ『茶目子の一日』は、童謡歌手平井英子が歌って人気になった1929(昭和4)年4月発売のSPレコードが先にあり、それに合わせて、1931(昭和6)年に西倉喜代治がアニメを作ったもの。奥田商会は、その“音と絵を同期させる”アイデアを活かしたのかもしれませんね。つい先日、京都市内の前田さんから寄贈して貰ったのは大阪にあった家庭トーキーから発売された手回し映写機とそれに装填する紙フィルム、それに同期させて楽しむSPレコードでしたが、先発の東京にあったレフシーが最初に特許を申請したのが1932年。東京で新しい試みが次々生み出されていた時代だったのですね。

1935(昭和10)年には、日米関係が険悪状態になり、米国からの輸入が途絶します。奥田商会はポータブル35㎜トーキー映写機の国産化を図り、教育文化短編映画を作って官公庁や学校、陸海軍省などに納めます。激化した戦争で、東京は焼け野原になりましたが、事務所があった第百生命京橋ビルは焼け残り、戦後の混乱する中、衛生・宗教・防犯・交通安全・労働・学校教材などの教育用スライドを制作しました。2007年、(株)奥田商会は本社を新宿に移転し、今も成長し続けています。

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この沿革を読むと、この映写機は1932~35年までの間に作られたものではないかと推察します。どなたか詳しい方がおられましたら、ぜひお教えください。

 

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