おもちゃ映画ミュージアム
おもちゃ映画ミュージアム
Toy Film Museum

2021.03.12column

寄贈本の紹介

ありがたいことに寄贈本が相次ぎましたので、ご紹介。

9日に届いた1冊は、日本映画・文学研究者の雨宮幸明さんから寄贈いただいた『さまよえる絵筆-東京・京都 戦時下の前衛画家たち』(みすず書房)。この中で、雨宮さんは「京都の文化運動と知識人、あるいは、モンタージュの試み」の題でエッセイを発表されています。この本は板橋区立美術館で3月27日~5月23日に、京都府文化博物館で6月5日~7月25日に開催される「さまよえる絵筆」展のために編まれたとても美しい装丁の図録です。板橋区立美術館のサイトに展覧会の案内が載っています。こちらをどうぞ。

1936年7月京都で、タブロイド新聞『土曜日』が創刊されました。弾圧や言論統制が強くなってゆく時代にあって、美学者中井正一と、弁護士の能勢克男が編集者になり、もう一人松竹下加茂撮影所の大部屋俳優だった斎藤雷太郎も関わって、人々の憩いとなるよう「憩ひと思ひの午后」という副題を掲げて発行され、多くの人に開かれた言論の自由の場になっていきます。この斎藤雷太郎は、『土曜日』に先だって、『京都スタジヲ通信』を1935年8月に創刊し、京都の映画産業に関わる人々の交流の場にして、「書いてみんなで話し合って解決しよう」と考えてスタートしていて、その姿勢が『土曜日』に引き継がれたのだそうです。その後は、戦況の激しさに伴い1938年3人は治安維持法違反で検挙され、『土曜日』は廃刊となります。タイトルにモンタージュとあるように、雨宮さんは3人に共通することとして、映画の存在をあげ、社会階級や嗜好、思いが異なる人々の言葉を編集して、印象的な紙面を作ろうとしたのではないかと考えておられます。初めて知った大部屋俳優斎藤雷太郎の存在も興味深いです。

今年の3月5日の山本宣治命日は過ぎてしまいましたが、2017年4月17日雨宮さんに「プロキノと山本宣治-京都に於ける『政治と映画』」の演題で研究発表をして頂きました。その時の振り返りはこちらで書きました。他にもこの図録には、河田明久千葉工業大学教授の「『生きてゐる画家』の時代」も載っていました。2018年9月9日に謎が多い木村白山をテーマにした研究発表会をしたときに、「絵師・木村白山の片影」の題で興味深い話をしてくださいました。

京都府文化博物館での開催はまだ先なので、それまでに論考を読んで勉強してから、見学を楽しむとしましょう。

これは昨年12月にお送り頂いた京樂真帆子滋賀県立大学教授の『アリーナ』第23号(中部大学)に掲載されたエッセイ。きょう届いたのは、このエッセイの中でも触れていた「“参加する”映画『祇園祭』とその時代-映画製作上映協力会メンバーに聞く-」(『新しい歴史学のために』207号、2021年2月、京都民科歴史部会)の抜刷。68~90頁に京樂先生と高木博志京都大学教授の連名で〈研究ノート〉として掲載されています。

その一頁。勝手に載せたら叱られるのかもしれませんが、私どものことと恩師である滝沢一先生のことにも触れて書かれているので、嬉しくて。

2018年10月28日京大人文研で開催された公開シンポジウム「映画『祇園祭』と京都」に復元を担当した者として連れ合いが参加することになりました。そのお知らせも含む催し案内の一斉メールをお送りしたところ、親交がある岡田佳美さん(上掲写真いちばん左)が、直ぐに返信メールをお送り下さいました。

……映画「祇園祭」は、映画と行政がタイアップをし始めた初期の作品で、私はまだ独身で、京都府職員の新人でしたが、仕事の余暇に製作事務所に入り浸り、いろいろとお手伝いをした、懐かしい作品です。中村錦之助さんが、ご自分が製作の中心におられて、参加スタッフのどんな小さい役割の人にも腰が低く、親切だったことを思い出しています。

製作事務所の出版ニュースに、役者さんのインタビュー記事を載せたり、山鉾巡行シーンのエキストラの募集から撮影当日の世話(何百人分)をしたり、はたまた、自分もエキストラとして、三船敏郎演じる馬上の山賊に追いかけられたり。当時発行された映画プログラムの中に、町娘姿の自分を見つけて喜んだりと、色々思い出しました。

監督が途中で交替されたり、スターの顔見せのような作品になってしまったのは、ちょっと残念でした。あの頃のフランス映画に「アルジェの戦い」というのがあって、それはそれはすごい民衆のエネルギーに満ちあふれた映画だったので、室町時代の京の町衆のエネルギーはこんなだったのだろうと、勝手に想像を膨らませたものでしたから。……

その内容に興味を持った私は、折り返し、次のメールを送りました。

……興味深い思い出をお教えくださり、ありがとうございました。連れ合いも拝見しました。ここで紹介されている「製作事務所の出版ニュースにインタビュー記事を載せたり」とありますが、それをスクラップされたりしておられませんか?あれば、資料に残したいですが。……

そして、2019年7月24日に「祇園祭の映像を見て、1150年記念『祇園祭』還幸祭神輿渡御見物」を実施しました。その時のことはこちらに書いています。私どもの能力では、岡田さんが示してくださった「映画と行政がタイアップをし始めた初期の作品」をより深めることは出来ませんでしたが、この催しに京樂先生が参加して下さったことが幸いしました。その後、田中弘さん、堀昭三さんに連絡をとり、この〈研究ノート〉に書かれているインタビューへと発展しました。

そして、昨年7月24日に「映画『祇園祭』研究者と製作上映協力会メンバーとのトークイベント」を開催しました。この振り返りは、3回に分けて書きました。(1)(2)(3)。今回、京樂先生の手によって当事者の方々の記憶が文字化され残されることは大変有意義なことだと思います。高木先生の「むすびにかえて」は、先生の専門の視点を活かした文章で「流石だなぁ」と思いました。

昨年7月の「映画『祇園祭』資料展」でご覧頂いた初公開資料類も含め、それらを紹介する冊子を発行しようと、現在京樂先生のご尽力で進めております。順調にいけば、7月17日に発行記念講演会も予定しています。

最後に羽鳥隆英新潟大学特任助教から寄贈いただいたアニメやビジュアルメディア素材のアーカイブの動きについて書かれたエッセイ集。その中で羽鳥さんが書かれたのは「Theatrical performances Rediscovered:An Archival Approach to Shinkokugeki in the Mid-1970s」。再発見された演劇の時代-1970年代半ばの新国劇へのアーカイブ アプローチ、ということでしょうか。丸ごと1冊英語なので、正直読むのは至難の業。語学堪能な方が来られたら読んで貰いましょう。

以上4冊の紹介をしました。お声がけ頂ければ、館内でお手にとってお読みいただけますので、遠慮なくどうぞ‼

 

 

 

 

 

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