おもちゃ映画ミュージアム
おもちゃ映画ミュージアム
Toy Film Museum

2017.08.08column

8月5日、映画の著作権について学びました

8月5日13時半、研究発表「映画の著作権を考える」と参考上映『末っ子大将(暴れん坊大将)』を開催しました。東京からお越しの活動写真弁士さん、今回も岐阜からお越しいただいた女性、兵庫や大阪などからもお越しいただき、みんなで難解な著作権について考えました。

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最初にお話くださったのは、東京藝術大学大学院美術研究科、アムステルダム大学大学院メディア研究科を修了され、視聴覚メディアアーカイビングが専門の松山ひとみさん(スクリーン手前向かって左)。2014~16年度、文化庁補助による「デジタル映画保存・活用調査研究事業」(東京国立近代美術館フィルムセンター)研究員として、法制度などの調査をされ、国産アニメーション誕生100年の今年、年末までWEBサイトで公開中「日本アニメーション映画クラシックス」の開設という大きな仕事を担当されました。現在は2021年開館に向け、大阪新美術館建設準備室のアートアーカイブズ整理に携わっておられます。お弁当を食べながらおしゃべりしていて、私と同郷の富山県出身とわかり、更なる親しみを覚えると同時に、彼女の存在を誇らしく思いました。

このWEBサイトは大きな話題になっているのですが、そういえば私が大好きな『茶目子の一日』がありません。公開に際し、作者西倉喜代治の有効な情報が得られず、「著作権調査で、はっきりさせられないものは公開できない」フィルムセンターの方針によります。他にもそうした作品はたくさんあり、半数近くがお蔵入りになったそうです。

著作権調査では・該当者(監督や作画の中心人物)の没年

       ・著作権保護期間中と考えられる作品の脚本家や原作者の著作権保護状況

       ・サウンド作品の場合は、作曲(音楽担当)の著作権者の没年

を調べる必要がありました。「にっぽんアニメーションことはじめ~『動く漫画』のパイオニアたち」展を企画した新美ぬゑさんたちの研究発表で、「国産アニメ草創期の資料が乏しく、良くわからないことが多い」と何度も聞いたことを思い出しました。実務者の立場から松山さんは「特に音楽がややこしくて、トーキーになると使用音楽の特定が多くてお手上げだった」と話しておられました。膨大で煩雑な作業を経てのWEB公開だったのだと頭が下がる思いで聴講しました。国産アニメ草創期から活躍して土台を築いてくださった名もなき作家たち、そして100年という節目にその成果である作品を公開できなかったことを、仕方がないとは言え、非常に残念に思いました。

海外の事例も多く紹介していただきました。多くの保存機関が既にコレクションのオンライン公開に取り組み、アメリカでは、出す以上は喜んで貰う反応が多いという発表もあったそうです。著作権者から訴えられることは限りなく低いにもかかわらず、権利者が後から出てくるかもしれないからと上映をためらう場合が日本には結構あるようです。

次にお話しくださったのは、東京からお越しいただいた弁護士の数藤雅彦さん。東京大学法学部、早稲田大学大学院法務研究科修了後、企業内弁護士経験を経て、現在は五常法律会計事務所、第二東京弁護士会の情報公開・個人情報保護委員会副委員長、筑波大学法科大学院非常勤講師、先頃発足したデジタルアーカイブ学会会員としてもご活躍です。

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この後の交流会で、振り返りレポートのことを話しましたら、「明日には五常法律会計事務所のホームページにUPします」と嬉しいお言葉。有言実行、早速6日に掲載されました。「できる人は仕事も早い」のお手本のような方です。ミュージアムのことも紹介して下さっただけでなく、お話したいろんなことも盛り込んで詳しく書いてくださっていますので、ぜひご覧ください。

1970年以前の劇映画・文化映画の保護期間は、旧著作権法は著作者の死後38年としていましたが、1971年施行の改正法で公表後50年になり、2004年施行の改正法で公表後70年になりました。映画音楽については、先に松山さんが調査項目3番目に挙げたように特殊で、公表後70年経過した映画であっても、その中に収録されている映画音楽の著作者の死後50年を経過するまでは音楽の著作権が有効なのだそうです。長寿社会の今、社会の共有財産として活かされるべき映画コンテンツが死蔵される期間が伸びるだけで、もったいないなぁと思いながら聴講しました。

誰がこの著作権法を立案したのかとネットで検索。公益社団法人著作権情報センター(CRIC)のサイトで、スライドでも紹介された『著作権法逐条講義(六訂新版)』が紹介されているのを見つけました。「著作権業務に必携の書!現行著作権法の起草者の手による『著作権法逐条講義』(略)」の著者は、今国民注視の加計学園獣医学部新設計画について7月に開催された国会閉会中集中審査で参考人として呼ばれた前川喜平前文部科学事務次官の隣に座った加戸守行前愛媛県知事(1999年から3期12年)でした。ニュースな人だったので、ちょっと、というか随分驚きました。しかも、文部省官房長退職後の1995年11月から98年11月まで日本音楽著作権協会(JASRAC)の理事長をされていました。正直、「何だかなぁ」という思いです。

2回の小休憩をはさんで、『末っ子大将』(1960年)を16ミリ映写機で参考上映しました。

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昨年上映する予定だったDVDです。当日まで、ひょっとしたらこのDVD化に孤軍奮闘された原作者の村田忠昭さんが来られるかもしれないと内心祈っていたのですが、残念ながら叶いませんでした。パッケージに文化庁の「裁定」の文字があります。数藤さんのお話で学んだところによると、権利者が不明な著作物(孤児著作物)に対し、著作権法67条1項は

                ・権利者がだれなのかわからない

                ・権利者は特定できたが連絡先がわからない

                ・死亡した権利者の相続人が誰でどこにいるかわからない

                  ↓

               ・権利者への連絡に関する「相当の努力」

               ・補償金の前払い

                  ↓

                   ・文化庁長官の裁定を受けて著作物を利用可能に

ということだそうです。関係者の死去や、映画会社の倒産などによる情報の散逸が背景にあり、イギリスやアメリカでも最近、孤児著作物(orphan works)の議論が盛んなのだそうです。煩雑な手続きを高齢の村田さんが一人で進め、補償金(後から出てきた権利者が訴える権利料に見合う金額)も支払って、私費でDVD化されたのだとわかり、尚更、自分の不手際で上映できなかったことが申し訳なくて…。

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この作品の脚本を担当された脚本家依田義賢先生のご長男義右先生が、昨年に続いて参加して下さり、お父様の思い出を披露して下さいました。そのお話にも出てきた、1959(昭和34)年文部省芸術祭参加作品東芝土曜劇場『あきのひとならば』という依田義賢先生50歳の時の作品について、この日寄贈を受けた『イメージーその理論と実践』(晃洋書房、2017年)の第8章「依田義賢と実験的映像」に義右さんが書いておられます。

 上映後、幾人もの方から「良い映画だった」と声をかけていただきました。上映を映写技師の石井義人さんにお任せだという安心感もあって、私もどっぷりと映画に浸って観ることができました。どんなことがあっても我が子を信じる母親役の望月優子さんの演技が素晴らしい。その母を思う末っ子役の子役も上手いし、出演者と一緒に(紀州犬五郎)と名前が出てくる白い犬もなかなかのものです。この犬の登場は依田先生の創作。僅か原稿用紙8枚の原作を当時の貧しい漁村の様子を丁寧に描いて、心に響く作品を書かれた依田先生の筆の力にも魅せられました。

1週間前の試写では問題なく映写できたのですが、本番のこの日は、冒頭から約5分程度の間に、映写機の掻き落としが上手くいかず、画面が流れる状態になり4回映写機を止めました。以前連れ合いが上映したRKO版『羅生門』の時の緊張感を思い出しました。最後の最後、京マチ子さんの一番良いところでカッ、カッ、カッ、カッ、と音がして画面が流れ、居合わせたみんなが祈るような気持ちで、スクリーンを黙って見つめていました。

昨日、神戸映画資料館の安井館長が戻ってきたフィルムを点検されたところ、「フィルムにダメージはなかったので安心して下さい」とのメールが届きました。使用した映写機は北辰製X500型で、専門的な用語が続き良くわかりませんが「下部スプロケットの押さえが少し弱くて乗り上げたのではないか」と安井さん。「サウンドドラム前後のローラーのテンションの強さも関係しているように思う。映写機の調整方法も、上映プリントの変化に合わせて変えていく必要がありますね」と石井さん。何はともあれ、パーフォレーションの痛みがないとわかり、ホッとしました。

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石井さんにお願いして、この16ミリフィルムがどのようになっていたのか描いてもらいました。音声帯と画像帯の縮み具合が異なっているので、掻き落としが上手くいかず、下部スプロットの押さえを指で押さえながら圧力をかけて上映したそうです。記録映像を撮ってくださっていた吉岡映像さんは「一度ほどくと、カールするから」とおっしゃっていました。以前連れ合いが試したところ、ナイトレートフィルムは、ほどいて広げるように放置したら劣化が止まったそうですが、アセテートフィルムは、同じようにすると、ものの見事に1本のストローのようにカールしてしまったそうです。マイクロフィルムなどアセテートフィルムの劣化が問題になっていますが、映像の次世代への継承は難問です。

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残った方で恒例の集合写真。蒸し暑い中を堪えて、ようこそご覧いただきました。ありがとうございました。感謝で一杯です。

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交流会の冒頭、松山さんにスイカの入刀式をしていただきました。素敵な笑顔ですね。この後、それぞれ著作権について数藤弁護士さんに質問し、助言をいただきました。私も11月に考えている企画展に関連し、教えを乞いました。どうやら心配無用のようで、こちらも一安心。

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以前から「著作権について話しを聴きたい」と思っていただけに、松山さんのおかげで内容の濃い良い催しができました。余りに嬉しかったので、暫く封印していた通行人呼び止め作戦を実行し、残ったみんなで腕組みして記念写真。右から数藤弁護士、この日市内の元有隣小夏祭りで大森くみこさんの活弁上映を手伝ってくださったイラストレーターの西岡りきさん、松山ひとみさん、二人飛ばして吉岡映像の衣川太一さん、左端が石井義人さん。皆さん、ありがとうございました‼

 最後に正会員の河田隆史さんから届いた感想文を掲載します。

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「映画の著作権を考える」松山ひとみさんと数藤雅彦さんの研究発表会に参加して

 著作権は面倒くさいものと考えていました。自分の所蔵フィルムは自分だけで楽しむものと思っていました。詳しく知りたくて参加しました。

 映画の著作権保護期間は公開後70年ですが、個人名義の古い映画は著作者の死後38年で、そのどちらか長いほうが適用されるとのことでした(でもいろんな事例があり頭がこんがらがってくるほど複雑でした)。著作権者がわからなかったり没年がわからなかったりすると、後で訴訟や損害賠償等のリスクがあるため、せっかく発見したフィルムも公開が難しくなります。お蔵入りになったフィルムは徐々に劣化して見ることができなくなります。フィルム発掘と保存という観点からみれば、今の著作権法はとても理不尽です。諸外国の制度に学びながら、日本の法制度を改善していく必要があるということです。

 元映画コレクター連盟会員 日本チャップリン協会会員 河田隆史

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 河田さん、どうもありがとうございました‼

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