おもちゃ映画ミュージアム
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Toy Film Museum

2018.03.19column

間近で楽しんだ狂言と落語「第4回桂花團治の咄して観よかぃ」

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3月16日に開催した「第5回桂花團治の咄して観よかぃ」は、ゲストに狂言師で俳優としてもご活躍の金久寛章さんをお迎えして、「動きと間が語るもの」をテーマに賑やかに開催しました。

いつものように、最初は花團治さんのトークから始まりました。不勉強で狂言の特徴的な台詞回し「二字上り三段起こし」の言葉を初めて知りました。ネットで検索すると「二字目上りの三段起こし」という言い方もあるようです。室町時代に始まった能楽はもともと野外で行われていましたので、遠くの人にまで聞こえるように工夫したのが「二字上り三段起こし」と言われる発声でした。動きも明確にしてやります。

「二字上り」の例として、花團治さんが見本に表現して下さったのは、アナウンスの決まり文句「大変長らくお待たせしました」や、関西言葉の「何を言うてんねん」「暑いなぁ」「何でこんな暑いんや」。東京は平坦ですが、関西では各文節の二文字目を上げてメリハリをつけて発声します。するとそれらしく聞こえます。「二字上り」の方が、感情移入しやすい、言葉に表情を付けやすい、台詞が下降しないなどの効用があるそうです。下降すると、お客さんが離れていくとよく言われているとか。

そこで、金久さんに登場いただいて、さっそく狂言を披露。演目は所作が分かり易いものということで、『盆山』を。花團治さんが盆山(盆栽)をたくさん持っている何某の役、それを羨ましがる男の役を金久さん。男が何某に盆山を譲って欲しいと頼みますが、頼みが聞き入れられないので、ある日何某の家に忍び込みます。たくさんの盆山から物色していると、家の主人が盗人に気付き、大騒ぎ。そこで盗人は盆山の陰に隠れますが、盆山は小さいので丸見え。主人は盗人が前から盆山を欲しがっていた男だと知ると、いたぶってやろうと考えます。そのやり取りが面白いのです。

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写真は、その一場面。普通は6メートル四方の能楽堂で演じられるのですが、心苦しくもその3分の1ほどの狭い場所で「何とかした」と金久さん。発声について「西洋は重力に逆らうように、上へ上へ向かう。天の神に伝えるように。対して農耕民族の日本の場合は、下へ下へと向かう。大地にメッセージを伝える動き。五穀豊穣を願う日本の神様は大地にいる」と話されたのが面白かったです。

花團治さんも「歌舞伎役者は、台詞回し、間の取り方などを師匠の物真似から始めて、型にのせていく。初代桂春蝶の言葉に『台詞は巻き寿司や。中はふんわりでも両端をきゅっと巻いとけよ』と教わった」と思い出話を。花團治さんが「落語は『らしく』やり、それぞれに『型』がある。町内の偉い人は、腰を落とし、貧乏長屋の女将さんが着物の襟を抓む仕草は、サイズが合っていないことを表している」と話されると、金久さんも、背中に後ろめたさを表現した盗人、主人、大名、山伏の様子を体で表現しながら、見た目で、位の違いを表現する狂言の「型」をお話くださいました。

日本語は述語まで聞かないとわからないので、登場するのが「三段起こし」。「しっかり起こしなさい。最後におさめることが大切だ」という意味合い。というわけで、狂言の言い回し「二字上り三段起こし」を皆さんでやってみることに。お手本を真似ながら、参加者が声を揃えて発声。

「これは このあたりに すまいいたす ものでござる」

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「狂言は、笑いも泣くのも、型がある」ということで、次は大きな声で、笑いの物真似。お手本は金久さん。

「はーっ、はっ、はっ、はっ、はー」。泣くのは、写真のように手を合わせて「へぇーっ、へぇ、へぇ、へぇ、へぇー」

なかなかに面白い体験でした。

狂言は省略の芸で、無駄がなく、摺り足もその結果の所作なのだそうです。能は一足出るのも舞を意味し、この運足(うんそく)の「型」が大切だと話されました。ネットで検索しましたら、運足に関して興味深い記事を見付けました。「能楽」という言葉は、能・狂言の総称で、能は悲劇、狂言は喜劇として、能楽の公演では交互に上演されますが、このような上演形態になったのは陰陽思想から。悲劇の能を「陰」、喜劇の狂言は「陽」ということで、能も狂言も基本的には左足から一足目を運びますが、足の止めは、能は右足で終わり、狂言は左足で終わるのだそうです。左足から数え「陰」の能は偶数歩で終わり、「陽」の狂言は奇数歩で終わるのだそうです。数字にも陰陽がありますが、足の運びに陰陽の拘りがあることを面白く思います。

金久さんが「能や狂言は、意識を丹田(臍の下の所)に集めることが大切だ」と話されると、花團治さんはすかさず、「前回木下昌輝さんの時に話が出ましたが、侍は身の潔白を証明するために丹田を切る」と切腹の話をされて、チャンバラの話になったのを機に当館所蔵の映像に移りました。

DSC04422 (2) - コピー時代劇の俳優に歌舞伎出身者が多いことから、丁度3月25日迄開催中の「市川右太衛門展」に合わせて『まぼろし峠』などをご覧いただきました。この断片は右太衛門が座ったままの殺陣をみせるのですが、「型」を大切にされていることが良くわかります。同じく林長二郎(長谷川一夫)も「型」を大切にされていて、『狂へる名君』をご覧いただきました。二人とも舞踊をされていたので、とても美しい立ち回りです。一方の阪東妻三郎や大河内伝次郎は、リアリズムを追及した演技ということで、大河内の『新版大岡政談』などをご覧いただきました。もう一方の片岡千恵蔵の『一心大助』は、一般町人らしい自然な動きをしていて、「六剣聖」と呼ばれているこれらのスターたちの違いもお分かりいただけたかと思います。彼らに先駆けて日本映画最初のスターとなった尾上松之助も歌舞伎出身で、「型」をもって演じているのが良くわかりますので、遺作『狂骨三日月』を参考にご覧いただきました。

会場には、この催しに合わせて東京からお越しの右太衛門ファンもおられましたので、『かごや太平記』の予告編と、右太衛門と二代目桂春團治、横山エンタツが共演する『旗本退屈男 毒殺魔殿』の一部もご覧いただきました。会場に丁度そのパンフレットを展示していましたので、写真を掲載します。

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この作品に出てくる子役が、とっても上手いので、後日パンフレット所蔵者の八木明夫さんにお聞きしましたところ、天才少年浪曲師として評判だった桂五郎とわかりました。子役としてかなりの映画・舞台に出演されていたようですが、消息は良くわかっていません。 

狂言は自己紹介する場面から大仰ですが、明治から大正にかけて流行った浄瑠璃・義太夫はもっと大仰だということで、最後に花團治さんに浄瑠璃や義太夫が大好きな人物が登場する落語『豊竹屋』を熱演して貰いました。主人公の豊竹屋節右衛門は、浄瑠璃・義太夫が大好き。見たもの聞いたもの何でも、即席の浄瑠璃や義太夫にしてしまう人。銭湯へ行って湯船に浸かっている間も義太夫に熱中し、のぼせてしまい、湯船から上がった途端に滑って転んでしまいます。それでも懲りずに、家に帰る途中も節回しに夢中になって、自分の家を通りすぎてしまう有り様。そこへ花梨胴八という男が現れ、どんな節にも三味線で合わせられると言います。三味線は三味線でも、口三味線。是非にお手合わせをというので、奇妙な二人による浄瑠璃セッションが始まります。

DSC04425B (3) - コピー4回とも参加の人、先頃の催しで当館のことを知ってファンになったという人も何人かおられ、誠にありがたいことだと感謝しています。花團治さんのファンの方にもお運びいただきました。回を重ねるたびに、いろんな人にミュージアムのことを知っていただき、裾野が少しずつ広がっている手ごたえを感じています。次回は開館満3周年を記念して、5月18日(金)19時から、木川剛志・和歌山大学観光学部准教授をお招きし「映画で発掘?!まちの底ヂカラ」をテーマに開催します。たくさんの皆さまのご参加をお待ちしております。

 

 

 

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