おもちゃ映画ミュージアム
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Toy Film Museum

2018.03.31column

1950年前後に販売された英国製「ミニシネ』を楽しみました

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京都府庁旧本館(重要文化財)の桜が満開。そんなうららかな春の日の29日午後、気心が知れた仲間で珍しいイギリスの「ミニシネ」プロジェクターを見ました。正会員の岩田託子・中京大学教授が昨年5月初めにエクセター大学ビル・ダグラス・センター所蔵の「ミニシネ」をご覧になって、その後購入されましたが、操作に自信がないと連れ合いに依頼されたのです。

集まった顔触れは岩田先生と、やはり正会員の池田光惠・大阪芸大教授。それに、滋賀県大津市にある「人形劇の図書館」の潟見英明館長夫妻。潟見さんは、2020年インドネシアのバリで開催される人形劇連盟世界大会で、日本の1950年代人形劇幻燈フィルムを上映紹介する相談にお越しになりました。

2016年11月18日にもこのメンバーで、同図書館所蔵品の調査を兼ねた鑑賞会をしました。その時の様子はこちらに書きました。そして、その時のブログをお読みくださった東京にある読書工房から過日連絡があり、掲載した写真を全国学校図書館協議会発行「としょかん通信」に掲載したいと申し出がありました。子どもたちの学びの役に立てるのであればと、と関係者の許諾も得て了承しました。

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小学生版と中高校生版の2種類あって、全国の小中高校にある学校図書館用に各2000部発行されているそうです。提供写真は、小学生版3月号に「文学作品に登場する、少し昔の道具」の特集で掲載されました。投影しているのは『春香伝』の一コマです。

DSC04592 (2) - コピーそして、岩田先生持参の「ミニシネ」をみんなで見ることに。一応組み立てて、ピーターパン第1部のアニメーション・フィルムを装填しましたが、そうは簡単にいかず…

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これが、そのフィルム。付いていた説明書を岩田先生が翻訳してくださったので、それを読むと、各フィルムは12インチの長さがあり、5分以上の上映ができます。ご覧のように4段の絵が並んでいて、把手を回すと、上下と、ゆっくり横に動きます。子どもたちは、好きな場面で止めて、一つの画像を望むだけ見たり、前に戻して見ることもできます。お伽話や冒険物語、滑稽話、ディズニーの映画とあらゆるジャンルの作品があり、英国で児童図書作家として著名なイーニッド・ブライトンが、有名なお伽話の脚本や物語を書いて制作を統括しました。他にも著名な作家達が監修に携わりました。

写真のフィルムは100の画像が連なるアニメーション・フィルムですが、もう1種類絵と解説文が交互に連なっているスチール・フィルムで、幻燈スライド由来の幻燈フィルムもあり、絵を見て解説を読むことができます。モノクロのミニシネフィルムは1本2シリング6ペンス、カラーで3シリング6ペンスで販売されていて、現在の価値に換算すると1ポンド5000円弱ぐらいに見積もって、「ミニシネ」は約25000円、フィルムもモノクロ1本約520円、カラー約760円に。「誰でも月にほぼ2本ずつ買うことが可能です」と説明書にありますので、お値打ちの教育玩具として人気があったのでしょう。

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岩田先生持ち込みミニシネ道具一式。説明書によれば、販売当時は、上映用の豪華な箱に映写機とカラーフィルム1本、白黒フィルム5本がセットで5ポンド5シリングだったそうです。画像検索すると1948~49年のものがヒットしました。「操作はオルゴールなみに簡単だ」と書いてありますが、なかなか豆電球が安定して点かず、試行錯誤。用いるのは単1乾電池5個。

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本体の大きさがお分かりになるかと。左手に持っているのは、豆電球。

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 漸く電気が点いたところ。後方で撮影しているのは、錦影絵池田組を牽引してこられた池田先生。3月いっぱいで大阪芸大を退職されますが、4月にカナダのビクトリアで錦影絵のプレゼンとデモンストレーションを控えて、今はその準備に多忙な日々です。

DSC04610 (2) - コピーさて、いよいよ「ミニシネ」上映。みんなで小さな画面を食い入るように見ました。後方にあるクランクを回すと、フィルムの縦に並んだ画像が順次交代し、少しずつ横にも動いて、アニメーションになります。その動画を、YouTubeにupしましたので、良ければ,こちらをご覧ください。

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タイミングよく、ソウルのアートシネマでもご活躍の映画評論家・金晟旭さんがお二人で来館。さっそく「ミニシネ」を体験してもらいました。金さんに、韓国の活弁士さんのことをお聞きしたら、韓国では弁士のことを「ピョンサ」と呼び、1934年に安鍾和(Ahn Jong-Hwa)監督が作った『Turning Point of  the youngsters(青春の十字路)』が現存する最も古い韓国の無声映画だと教えてもらいました。そういえば、以前フィルムセンターでピョンサの熱演付きでこの作品が上映された動画を見た記憶があります。同映像は韓国映像資料院で保存されています。金さんとの会話で、共通して知っている人の名前も出て、初対面なのに親しみを感じました。いつも思うことですが、世界は広いようで、狭いです。

2015年10月27日に英国マジックランタン協会元会長のジョージ・オークランドさんご夫妻がおいでくださり、一日楽しく過ごしていただきました。その時の様子は、こちらで書いています。そのジョージさんが、この日の為に「ミニシネ」の世界的専門家、元MOMIキュレーター、フィルム史家のスチーヴン・ハーバードさんに依頼して、操作の仕方を実演して動画で送ってくださっていましたが、それを見る間もなく本番を迎えてしまいました。でも、どうにか無事に上映できたので、何より。この「ミニシネ」、日本には入って来ていないのかもしれません。どなたかご存知なら、お教えくださいませんか。

 

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