おもちゃ映画ミュージアム
おもちゃ映画ミュージアム
Toy Film Museum

2018.04.14column

御礼、お二人から寄贈を受けました

DSC047452018年4月14日菅典義氏寄贈 (2)

今日、長崎県雲仙市の菅さんから、昨年7月27日に続いて、写真の品々を寄贈いただきました。右の本(四六判)は吉川速男著『小型活動寫眞術』上巻(東京 古今書院発行、1931<昭和6>年6月20日改定十版)。その表表紙の裏側と続いて3枚の4面に亘ってびっしりと、寄贈者のお父様によるメモ書きがあります。最初の2面は、パテ・ベビーで撮影するための試行錯誤された様子がうかがえますし、次の2面に書かれているのは、クラシック音楽についてのメモ書きでしょうか。左上のモーターは、昨年お送りいただいた映写機のものだと思われます。

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これが、昨年寄贈いただいた品々。その時のことは、こちらで書いています。先日連絡があり、来週20日(金)に初めてお越しいただくことになりました。その時には、テレシネが済んだホーム・ムービーをご覧いただくことにしています。寄贈者の小さいころの様子が写っていると思われ、どのような感想を言われるのか、楽しみです。きっと微笑ましい会話が展開するでしょう。

【後日追記】

4月20日にご来館いただいた菅典義様。学会で来京の折にお立ち寄りいただきました。実際にお会いできて嬉しかったです。

DSC04759 (2)

 

 もう一つ、日頃お世話になっている石原香絵さんが、この3月31日付けで発行された上掲本も寄贈を受けました。IMG_20180414_0002 (2)

石原さんは、NPO法人映画保存協会代表、日本アーカイブズ学会登録アーキビストで、名古屋学芸大学メディア造形部非常勤講師としてもご活躍です。

届いたばかりで、パラパラと見ただけですが、具体的記載はないものの連れ合いが関わった事項として、1999年に復元した『何が彼女をそうさせたか』(1930年)、2007年に大阪芸大の研究費でニュープリントを作成した『祇園祭』(1968年)、2012年に復元した『一殺多生剣』(1929年)、付録4フィルムアーカイブ活動略年表に2006年第一回映画の復元と保存に関するワークショップ開催、2015年おもちゃ映画ミュージアム開館が載っています。

見出しを一覧して目が留まったのが「実現しなかった『京都府立映像会館(仮称)構想』」。この中で述べられている『祇園祭』は、「京都府政100年記念事業」として竹中労氏が企画し、「日本映画発祥の地の京都から斜陽産業と呼ばれて久しい日本映画復興の狼煙を挙げるのは意義深い」と考えた蜷川虎三京都府知事により支払われた府の支援に加え、映画ファンからのカンパで作られました。当時を代表するスターが勢揃いした大変豪華な顔ぶれです。

1970年京都府は全国の地方自治体初のフィルム・ライブラリー事業の調査費を計上し、初代フィルム・ライブラリー係の江馬道生氏は翌年度から1500万円の予算で映画フィルムの収集・上映活動を続け、「京都府立映像会館(仮称)」設立を目指して建物の見取り図や組織図も作成していたそうです。内部に現像設備を置き、フィルムの補修、編集、保存などの技術者養成も計画されていたそうです。結局府の財政難からこの計画は実現せず、1988年に開館した京都府京都文化博物館映像・情報室が「京都府立フィルム・ライブラリー」事業を継承しておられます。本によれば、その間に廃棄処分されたナイトレートフィルムもあったそうです。

歴史に「たら・れば」は禁物だとよく言われますが、たとえ小規模でも「京都府立映像会館』がその時に作られていたら、今のこのような苦労をせずに済み、貴重な映像と関連資料ももっと救えただろうと思われ、本当に残念に思います。

折しも、現在当館で開催している「宮川一夫展」で展示している資料のひとつに1986(昭和61)年5月11日付け京都民報に掲載された「続 これだけは許せない」(5)があります。宮川一夫先生の聞き書き記事で、大見出しは「早くネガ保存対策を お粗末な映画の扱い」。

…ネガさえあれば、ポジ・フィルムはいつでも再生できます。カラーのネガフィルムも三色分解して保存しておけば退色もせず、きちっと再生できます。(略)残念ながら国も会社も残すということに熱心じゃない。私は、映画は貴重な文化財だと思うんですよ。劇映画だけじゃなく、記録映画、学術映画も含めて。そのなかには、その時代の社会風俗が写されています。あの頃にこんなものが創られたというのが残されることがとても大切だと思っています。…

そのまま、なかなか保存への動きがない「京都ニュース」オリジナル・ネガフィルムのことに関連付けて考えてしまいます。石原さんの書かれた本を丁寧に読みながら、広く賛同を得て、保存へ進めるための機運作りに活かしたいと思います。

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