おもちゃ映画ミュージアム
おもちゃ映画ミュージアム
Toy Film Museum

2015.09.26column

国際平和映像祭

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9月21日、国際平和映像祭が開催され、特別招待を受けました。海外支援事業を行っているJICA横浜が会場でした。JICA(国際協力機構)では、国家間の難しい政情の時だからこそ、昨年中国から北京電影など学生たち50人ほどを招待し、今年は韓国から30名ほどを招待、国際交流をはかりました。映画祭でも、アジア国際青少年映画祭のキム・プロデューサーたちや学生たちを招き、プログラムの一つとなりました。

私は、韓国で始まったこのアジア国際青少年映画祭(当時、韓国国際青少年映画祭)に第1回から参加しています。私が所属している大阪芸術大学の学生たちに呼びかけ、日中韓で持ち回り開催を提案された折も、他大学にも呼びかけるなど日本での開催を模索したのですが、映画祭に対する考え方の違いや資金面などで日本開催が難しく、断らざるを得ませんでした。昨年もまた私が窓口のように考えて下さり、声掛けくださいました。お断りもできず、国際平和映像祭を主宰している高橋克三さんに相談して参加してもらいました。その流れから、10年続いているアジア国際青少年映画祭の紹介ということで、キムさんとの対談の企画が組まれました。

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今回の国際平和映像祭では、韓国の作品がグランプリを獲得。老人の目を通して描いているのですが、同じ民族や肉親が戦う奥深い苦悩が底流にあります。準グランプリでもある横浜市国際局長賞では、日本の作品が選ばれました。中国西安での反日デモに遭遇して、何とか友好を取り戻そうという地道な努力がテーマです。彼は、日中友好の国旗を掲げた「ハグしませんか」というプラカードを持って、街頭に立ちます。はじめは冷たい視線を受けるのですが、一人の子供がハグしてくるのをきっかけに、次々とハグをしてきます。お婆ちゃんや学生やお爺さん、女学生、主婦、仕事途中の小父さんなど…。単純なものですが、中国の人たちの表情からも次第に熱いものが生まれてきます。

 今回の映画祭での最大の収穫は、特別上映された「戦争のつくりかたアニメーション」でした。安全保障関連法案が可決され、その反対デモが国会議事堂前で行われています。政党色が強い反対デモのように報道されていますが、戦争をなくしたい、平和でありたいという思いは万人共通の願いです。こんな戦争への危うい法案が通れば、如何にして戦争へ向かってゆくのかというすごく判りやすいアニメーションです。淡々としながらも力強く描かれ、感動を与えます。抑止力という危険な兵器を持つより、持たない方が安全です。友好は対話から生まれます。抑止力というのは、対話を拒否した発想です。相手を知り、相手の立場でものを考える。国際平和映像祭の趣旨でもあります。

戦争のつくりかたアニメーションプロジェクト
https://motion-gallery.net/projects/noddinwar

国や民族を超えて集い、スクリーンという小さな窓から見つめ、視野を広げ、そして交流が生まれる。この小さな友好の窓だからこそ映画祭は必要なのです。学生作品の影響もあり、知らない者同士がハグしようというセレモニーで盛り上がり、熱気の中で閉幕しました。

海の向こうに国々が繋がり、今も世界中で平和を脅かされる事案が後を絶ちませんが、人間が引いた国境ではなく、地球に住むものとして世界の平和を考え、そのために映画でできることをこれからも模索していきたいと思っています。

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翌日は、横浜見学をしました。「みなとみらい」にあるJICAの映画祭会場から、赤レンガ倉庫、数十年ぶりの山下公園を散策、港の見える丘に登り、洋館のイギリス館や大佛次郎記念館などを見学し、外人墓地辺りにあるという「ブリキのおもちゃミュージアム」へも行ってきました。そして、外人墓地から元町へ、中華街で食事をしようと閑静な坂道を下ってゆくと、ジェラール水路がある小さな公園(元町中央公園)に出ました。

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案内地図を見て、びっくり。その公園の片隅に「大正活映撮影所跡」という表記があったからです。その記念碑は、公園の片隅にひっそり置かれていました。 

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谷崎純一郎が脚本を担当し、寿々喜多呂九平、内田吐夢や岡田明彦などを輩出した「アマチュア倶楽部」(1920年、トーマス栗原監督)が作られた撮影所跡です。モダンな日本映画の始まりは、やはり横浜にあったのです。1923年の関東大震災で撮影所は倒壊し、映画人は京都に移ります。短い期間の撮影所でした。何の変哲もない石碑でしたが、この出会いを与えてくれた国際平和映像祭に感謝です。

 

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