おもちゃ映画ミュージアム
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Toy Film Museum

2021.01.14column

SF映画『メトロポリス』のポスター

1月10日Facebookで知人が「『メトロポリス』のポスターがオークションに出ている」という記事をシェアされているのを見ました。その時点での値段が余りに高額だったので、思わず私もシェア。そのオークションのサイトはこちら

あまり物の価値が分かっていない私は、すぐさま連れ合いに「これ、見て。凄い値がついているよ」と示しましたら「このポスター、うちにある」と申します。「えぇっ‼」

整理整頓がまるでダメな連れ合いにしては珍しく直ぐにポスターを取り出して、早速見せてくれました。古くからの友人がドイツの映画博物館で土産に買ってきてくださったものだそうです。オークションに出るようなものではもちろんありませんが、つい「参考に額装して飾ります」とFacebookに書いてしまいました。

件の知人の記事では、「伝説のポスター降臨。ハインツ・シュルツ=ノイダムによるこの『メトロポリス』のポスターは、2005年に69万ドルで落札されたことがある。今回のオークションは残りあと40日、現在は36万7000ドル」とありますから、最終的にいくらで落札されるのか見ものです。

書いてしまった以上額装せねば、正月早々嘘つきになってしまいます。前総理大臣は国会で嘘を煩悩の数より多い118回もついたようですが、嘘つきはいけません。というわけで、今日、連れ合いが額装してくれました。

反射して画像は少々見苦しいですが、何処に置こうか迷った末、玄関から入った通路に置きました。158㎝×53.5㎝の手作りしかない大きさのパネル製。今度来館の折にご覧頂ければ嬉しいです。贈り主も、きっと漸く日の目を見ることになって喜んでくださることでしょう。

この作品は1927年にフリッツ・ラング監督が、当時のニューヨークの摩天楼に感動して未来都市を舞台にした作品を撮られたのだとか。都市映画の最古典、ドイツ表現主義を代表するモダニズム映画です。

1999年第2回京都映画祭の時に、大魔神の原寸大のレプリカ(今は太秦商店街にあります)を製作し、原広司さん設計ポストモダニズム建築として完成3年目の京都駅ビル大階段前に立てました。下掲写真はその時に撮影。駅ビル管理会社から「モダンな建物の前の大魔神を見ようと、遠方からも来られた」と報告があったそうです。

設置したのは、同志社大学オーケストラによる前夜祭「映画音楽の夕べ」をした時。ゲストとして来日していたドイツのサイレント映画音楽家ギュンター A・ブーフヴァルトさんが、駅ビルを見ながら連れ合いの耳元で「メトロポリス、メトロポリス」と囁いたのだそうです。駅ビルの様子から映画『メトロポリス』のようだと思われたのかと思いきや、後で確認すると「ここで『メトロポリス』を上映したら良い」という意味だったそうです。

そして、2001年に開催した第3回京都映画祭の時、大階段に特製映写ブースを東映の美術部の人たちに作っていただき、写真の大魔神が立っていた場所に横幅6mのスクリーンを張って、ブーフヴァルトさんの演奏で映画『メトロポリス』を35mmフィルムで上映しました。3千人が座れるという大階段前に立てたスクリーンでしたが、風が強く、スクリーンが帆になって飛ばされては危険だというので、下の部分は止めず、風で揺れるままのスクリーンにしました。時たま揺れる画面が逆にドラマチックになって、より効果的な演出となり、ブーフヴァルトさんの演奏も大好評でした。

これは、2001年京都映画祭公式カタログから。『メトロポリス』は最長版海外初上映という触れ込みでした。カタログに掲載された故・加藤幹郎さんの文章を参考にすれば、1927年1月にベルリンで公開されたときの長さは4189m(毎秒24コマの映写速度でも153分)でした。この映画のアメリカでの配給権をもつパラマウント社はアメリカ市場用に短縮して3100mにして3月にニューヨークで上映します(従来流通していたMoMAのは2532m)。この作品の製作会社はベルリン公開版の興行不振から再編集して3241m版を作るなど、1927年当初3種類あったそうです。

2001年京都映画祭では、ムルナウ財団のマルティン・ケルパーさんが各フィルム・アーカイブに保存されていた資料に精緻な校訂を加え、デジタル修復した上で、3341mの当時入手可能な最善最良のバージョンとして再編集された作品を海外初・日本初として公開されました。ブーフヴァルトさんが京都駅ビルを初めて見て感じたことが、現実となって演奏付き映画『メトロポリス』上映となったのです。

2019年11月29日龍谷大学深草キャンパスで開催されたサイレント映画×弁士×生演奏『メトロポリス』(114分)上映会は、前半をピアノの生演奏で、後半を弁士の語りとピアノの生演奏による2種類の上映方法で無声映画を観るという面白い企画でした。前半の演奏をされたドイツの映画音楽作曲家・ピアニストのペーター・ゴットハルトさんが、翌日名古屋外国語大学の白井史人先生と龍谷大学の高岡智子先生と一緒に当館を訪問してくださる幸運にあやかりました。その時に、このポスターがあると知っていたら、お見せしたかったです。当日のことはこちらに書きました。

このように振り返ってみれば、『メトロポリス』は私たちにとって思い出深い作品なので、ポスターを掲示したことは、ジグソーパズルのピースが収まる場所に嵌まったという感じでしょうか。

因みに、京都映画祭での駅ビル大階段でのイベントは、伊丹駅での事故の影響により、大人数動員の催しが禁止されることになり、第4回の『特急三百哩』を最後に、なくなりました。

【1月17日追記】

サントリー・ミュージアム[天保山]が発行した「2001年シネマ・オデッセイ-映画ポスターの20世紀」展カタログの表紙を飾っていたのが、この『メトロポリス』でした。その解説に「このポスターは、映画に登場する西暦2026年の未来都市を、思想家たちに対する労働者たちの反乱を指導する女性ロボット『マリア』とともに生き生きと描き出している。このポスターが表現する映画の持つ重要性とデザインの力強さを考慮すれば、これはおそらくどの映画ポスターよりも芸術作品と見なされるべきものであろう」とあります。2026年といえば、あと5年後ですね。

 

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